寄り添うタイトル

 山形新聞は「寄り添う『ぶんちゃん』取材班」を始めました。読者や県民からの情報に基づく新しいスタイルの調査報道です。 暮らしの中での疑問や困り事、学校での悩みや街の不思議など、依頼を基に記者が取材を進めます。情報を提供してくださった方に関する秘密は必ず守ります。
 下記のいずれかの方法で情報をお寄せください。「あなた」と「記者」が直接つながって身近な課題の解決を目指します。

あの時、県民は

 東日本大震災の発生から、来月11日で10年が経ちます。みなさんは「あの時」に何を思い、「その後」をどのように過ごしてきたのでしょうか。一人一人の経験が次の世代への大切な教えになります。
 5回シリーズの紙面企画「あの時、県民は」では、証言を集めながら震災発生時の状況を紹介してきました。「寄り添うぶんちゃん取材班」では、震災の記憶を風化させないためにも、さらに多くの経験談を募ります。寄せられた内容は、山形新聞のホームページ「やまがたニュースオンライン」の特設コーナーで紹介し、後日、紙面での掲載も考えています。

最新記事

コカ・コーラシートから山中さんが撮影した長谷川勇也選手(鶴岡市出身、酒田南高出)のヘッドスライディング

 「ペイペイドームのお礼がしたい。探してもらえないでしょうか」。福島県内の女性(22)から、西日本新聞「あなたの特命取材班」に手紙が届いた。福岡ソフトバンクホークスのホーム最終戦となった10月21日、知らない男性がたまたま席を譲ってくれたおかげで、憧れの長谷川勇也選手(鶴岡市出身、酒田南高出)の引退試合を最前席のコカ・コーラシート(フィールド席)で観戦できたからだ。男性の連絡先を聞き忘れてしまったため、後悔しているという。

 11歳の時、お立ち台での勇姿をテレビで見てからずっと長谷川選手の大ファン。ドームで応援するのが長年の夢だった。今は保育士を目指す専門学校生。引退発表を受けて居ても立ってもいられず、福岡行きを決めた。

 試合前、「ハセさん ありがとう」と思いを込めて手作りしてきた大きな応援ボードを手に、一塁側スタンド席に座った。ボードが目に入ったのだろうか、眼鏡をかけた男性から「友達が来られなくなり、もったいないのでコカ・コーラシートに移りませんか」と声を掛けられた。

 男性の厚意をありがたく受け入れてコカ・コーラシートに入った。最初は丁寧に練習の様子や選手のことを教えてもらった。試合が始まると、女性は観戦に、男性は大きな一眼レフカメラでの撮影に、それぞれ夢中になっていた。

 長谷川選手が最終打席で「魂のヘッドスライディング」を披露するなど、大いに盛り上がった試合。終了後、長谷川選手はグラウンドを一周して声援に応え、自分の前でも足を止めてくれた。最高の瞬間を味わうことができた。

 既に午後10時を過ぎていた。慣れない土地で早くホテルに戻らないといけないと焦り、お礼をする連絡先を聞き忘れてしまった。「一生の宝物をありがとうございますと伝えたいんです」。その思いが日々、強くなっているという。

◇   ◇

「多くの人がツイートしてくれ、探してくれることをありがたく感じた」。西日本新聞が13日に記事を配信した後、福岡市の山中隆次さん(47)から「自分です」と申し出があった。

 山中さんには、魂のヘッドスライディングをとらえた自慢の写真があり、「女性には画像を送ってあげたい」と話した。

 取材班は山中さんの許可をもらい、女性に連絡先を伝えた。「あらためてお礼できてうれしい」と女性。「またお金をため、大好きになった福岡にホークスを応援しに行きたいです」と張り切っている。


(2021年12月22日掲載)

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