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県漁協組合長
本間昭志氏
本間昭志氏
【インタビュー】
 -本県漁業や県漁協の現状と力を入れている取り組みは。

 「1次産業全体で共通していることだが、担い手不足が大きな課題だ。特に漁業は収入が他の職業に比べて安定していないことが要因。私が昭和39(1964)年に卒業した中学では、約180人の半分が就職し、このうち1割以上が漁業の道に進んだ。『3年漁師をすれば家が建つ』と言われた時代。サケ、マス、スケソウダラにカニなどの北洋漁業も盛んで、もうかる仕事だった」
 「排他的経済水域(EEZ)の設定や海洋環境の変化で漁業を取り巻く状況は変わった。本県は海岸線が短く、しけの影響も大きい。200日以上、操業できない年もある。県漁協としても、水揚げだけに頼らない組合運営を目指さなければならない。より安定した収入が得られるよう漁港を集約し、港内で養殖事業をする施設を整備するなど、新たな取り組みが急務となっている」
 「原油の高騰は燃料だけでなく、ロープや網など石油原料の漁具の更新にも影響する。長期的な対策が必要だ。日本海で奮闘する中型イカ釣り船団への支援にも力を入れ、遊佐や酒田の沖合で事業化が検討されている洋上風力発電への対応も重要。漁業者が納得できる漁業振興と協調した取り組みを求めていく」

 -県漁協職員に求める人材や能力は。

 「漁業者相手の仕事なので、健康かつ丈夫で、忍耐力のある人。感謝の気持ちを忘れないことも重要だ。特別な能力は必要ないが、海と魚が好きなことは必須の条件だ。漁業や海を守る仕事でもあり、そんな情熱がある人を求めている。情熱や気持ちがないと続かない仕事かもしれない」

 -影響を受けた人物は。

 「自分で組合長は11代目で、歴代の先輩たちだ。いままで築き上げた組合を守り、次世代につなげていく。組合長経験者の中には父・富之助もいる。この道の手ほどきをしてくれた、底引き網漁船の船頭も影響を受けた一人だ。『網の細かいところを見て、仕組みを覚えろ』と教わった。他の仕事や組織運営でも同じことが言えると思う。全体を見るだけでなく、細部までしっかり目を配ることが重要だ」

 ★本間昭志氏(ほんま・しょうし) 鶴岡市出身。高校卒業後、マス流し網船に乗り、その後、家業の小型底引き網船を継いで独立。県漁協では監事や理事を務め2017年から現職。組合長就任後も漁に出ていたが、現在は長男が家業を継ぐ。74歳。

 ★県漁業協同組合 全国初の県域単一漁協として1965(昭和40)年7月に合併発足した。正組合員は412人で、準組合員も含めると1086人。職員は嘱託や常用臨時職員を含めて72人。市場などでの販売、信用、共済、購買の各事業を展開している。本県沿岸部に支所や出張所も構え、集荷場、製氷工場、貯氷庫や冷蔵庫も運営し、漁業者を支える。本所所在地は酒田市船場町2の2の1。

【私と新聞】スポーツ面、欠かさず読む
 高校時代は羽黒工業高(現羽黒高)で野球に打ち込んだ本間組合長は、スポーツ面を欠かさず読むという。各界の注目される人物を紹介する「この人」や社説、政治行政、経済のページをチェックすることも大切にしている。
 陸上競技で中学時代に棒高跳びで県1位になったこともあり、スポーツは野球だけでなく幅広く関心があるという。自身が組合長就任時に掲載された経験から「この人」も熟読。「どんな人が取り上げられているか気になるし、人柄も分かり、面白い」と話す。
 漁業に関する施策や現状についても政治行政や経済の記事で確認。世の中の論調がどうなるかも、社説を参考にしている。外交や洋上風力発電など、日々変化し、本県漁業にも関連があるニュースも新聞から得ている。「おくやみ欄も欠かさず見る」と話し、世界や地域の最新情報を得ることが、組合のトップには欠かせないと強調した。

【週刊経済ワード】トヨタグループの世界販売
 トヨタ自動車と傘下のダイハツ工業、日野自動車を合わせた国内外での販売台数。2021年は前年比10.1%増の1049万台超と年ベースでは2年連続で世界首位となった。上半期(1~6月)としては21年に過去最多の547万台弱を記録した。最近はドイツのフォルクスワーゲン(VW)と首位を争う構図になっている。
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