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後藤組社長
後藤茂之氏
後藤茂之氏
【インタビュー】
 -自社の現状と課題、力を入れていることは。

「事業部門は大きく▽土木▽建築▽リフォーム、不動産を含めた住生活▽マンション建設をメインとする東京-に分かれており、いくつかの収入の柱をきちんと持つことが理想と考える。一番の課題は人材確保。人口減少や土木、建築の学科の減少で人材の取り合いになっていることに加え、新しい人材が入らないと上の人間の成長意欲が刺激されない。新卒採用は10年ほど前から力を入れ、近年は安定して採用できている」

 -人材の確保・育成で工夫している点は。

「会社説明会には必ず私が出席し学生に話す。内定段階で外部研修を受けさせ、入社後も年が近い先輩が、丁寧に教えるよう心掛けている。2週に1度は全社員を前に私が話し、社員が感想を述べる勉強会を開き、会社として共通の言語、価値観を醸成している」

 -求める人材は

「成長意欲がある人。社内外に、自分よりできる人、憧れの存在を見つけ、その人と自分の差を特定し、差を埋めるように伝えている。そのため目標設定能力は必要だ」

 -デジタルトランスフォーメーション(DX)に力を入れ、県内で2社目、東北の建設業で初めて国のDX認定事業者となった。

「グーグルや、ソフトウエア開発のサイボウズが提供するクラウドサービスを活用し、各部門が現場の実態に合わせて自分たちでアプリを作るなどしている。例えば、現場の安全管理点検などの場面では、スマートフォンを使いその場で入力すれば、自動的に必要な書類が作成される仕組みを構築した。全社共通で日常的に使うアプリが50、各部ごとのアプリが15~20程度ある。二重入力などが減り、残業時間を20%削減できた。各部門が、自分たちが考案したDXでどう生産性を上げたか発表し合う場も設けている。人工知能(AI)、拡張現実(AR)を活用する将来を見据え、社内の情報を整頓するという意味合いもある」

 -影響を受けた人物は。

「経営コンサルティングを手掛ける武蔵野の小山昇社長。小山氏の経営塾で、社員教育の必要性など多くを学んだ。あえて一つ挙げると、必要なものと不要なものを区別し、整頓する環境整備。今は不要な仕事を捨て、DXを含めて仕事の道具、仕事のやり方をそろえるように伝えている。それにより、どの社員も同じレベルの仕事ができるようになる」

 ★後藤茂之氏(ごとう・しげゆき) 日大経済学部卒業後、米ラドフォード大に進学。父弘氏の死去に伴い、同大を中退し、1992年に後藤組に入社、同年から現職。米沢市出身。54歳。

 ★後藤組 1926(大正15)年、後藤社長の祖父源次郎氏が土木、建築請負業として創業。44(昭和19)年株式会社化した。今年5月、東北の建設業で初めて経済産業省からDX認定事業者の認定を受けた。資本金9685万円。従業員は約150人。東京支社、山形、長井両支店などがある。本社所在地は米沢市丸の内2の2の27。

【私と新聞】県内の動き把握に不可欠
 後藤茂之社長は毎朝、山形新聞と経済紙を読むのが習慣になっている。特に本紙は県内の動きを把握するために欠かせないという。
 本紙に関しては、まず経済面に目を通し、県内企業の動きをチェック。お悔やみ欄、社会面などもくまなく確認する。取引先企業などの取り組みを社内全体で共有するツールにもなっている。
 後藤社長の新聞の読み方のスタイルは、まず見出しと記事の第一段落目に注目すること。そこを読めば概要をつかむことができるからだ。気になったら最後まで読むことで、限られた時間での情報収集に役立てている。

【週刊経済ワード】土用の丑(うし)の日
 土用とは立夏、立秋、立冬、立春の前18日間のこと。立秋前の土用のうち「えと」の「丑」に当たる日にウナギを食べる習慣が江戸時代に定着した。ウナギは栄養が豊富で、夏バテ防止になると考えられたとされる。2022年は7月23日と8月4日の2回ある。現代でもかば焼きの消費が増え、専門店や小売店が一斉に販売を強化する。
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