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丹泉ホテル社長
丸森周平氏
丸森周平氏
【インタビュー】
 -業界の現状と力を入れている取り組みは。

 「新型コロナウイルスの影響による観光客の減少に伴い、売り上げが落ち込んでいる。赤湯温泉の旅館・ホテルは宿泊の価格帯や狙いとする客層が異なるため一概には言えないが、それぞれが特色を出しながら営業努力をしている。当館は小型犬と宿泊でき、売り上げの20~25%をこうした客層が占めることから、リピーター確保に力を注いでいる。さらに、老人クラブなどの団体が団体旅行を待ち望む風潮になるなど、インバウンド(訪日客)を含めて観光の復活が近い。飲食店など、他業種も含めて地域が元気になればと思っている」

 -求める人材は。

 「お客さまの喜びが、スタッフの喜びになるような関係性を構築したい。年に10回ぐらい足を運んでくれる人もおり、(客と従業員の枠を超え)再会することの喜びを相互に感じるような関係が理想だ。そのためには、誠実でスタッフ同士の和を大切にする人が第一だと感じる。従業員の接客で、優しさや温かさを感じてもらえればうれしい。社内が楽しい雰囲気ならば、それがお客さまにも伝わると思う」

 -その力を身につけるために必要なことは。

 「働きやすさを実感しながら楽しく働くことが、誠実さや和を大切にする姿勢につながる。また、食べ歩きなどで、飲食店をはじめとする地域を知ることも重要。責任を持って店を紹介することで、お客さまの信頼を得られるし、誠実さや責任感の醸成につながる。社長としては、従業員の思いを知りながら働き方改革を実施することが大事と考えている。従業員と一緒に接客することも、お互いの良い点や悪い点に気付くことができ、業務改善につながる」

 -仕事上、最も影響を受けた人物は。

 「天童市の天童温泉協同組合の理事長で、滝の湯社長の山口敦史さんだ。常々かわいがっていただいており、バイタリティーにあふれ、思慮深くありながらも偉ぶらない人柄は、『ついていきたい、こうなりたい』と思える。山口さんが全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の青年部長に就任した際には、全国の多くの仲間と知り合うことができて刺激になった」

 ★丸森周平氏(まるもり・しゅうへい) 山形大卒。技術者派遣サービス業の技術者として、神奈川県内の松下電器で設計などに携わった後、2006年に丹泉ホテル入社。社長室長や専務などを経て、20年から社長となる。21年6月からは赤湯温泉旅館協同組合の代表理事を務めている。南陽市出身。42歳。

 ★丹泉ホテル 1645(正保2)~46年ごろ、初代丸森与五右エ門が丸屋旅館を創業。1898(明治31)年に大宴会場を備えた建物に改築し、赤湯町当局から「丹泉ホテル」の名称を受ける。1956(昭和31)年に法人化した。従業員数は35人。資本金4千万円。本社所在地は赤湯988。

【私と新聞】地域の実情チェック
 ホテル兼自宅で全国紙も含めて購読しているが、読むのはもっぱら山形新聞。出勤前に地域版や関係する観光分野の話題、お悔やみ欄に目を通し、地域の実情を知る。
 山形新聞社などが主催する県縦断駅伝競走大会は大ファンで、同一大会の多い時で、遊佐町から近隣自治体も含めて10カ所ほど足を運んで声援を送る。地元の南陽・東置賜チームについては、メンバーの大会直前のレース記録やそのシーズンの調子まで細かく把握しており、「自分なりに誰をどこの区間で走らせるかシミュレーションしている。他チームの分析もできる」と熱狂的だ。
 山形新聞に対しては「コロナ禍で社会全体が疲弊している中、多くの人が元気になれるような、頑張っている人や地域を紹介する記事を取材してほしい」と期待する。

【週刊経済ワード】マスメディア集中排除原則
 できるだけ多くの事業者に放送の機会を与え、表現の自由を確保することを目的に定められた放送法などの原則。同じ放送エリアで複数のテレビ局の株式を議決権の10%を超えて保有するといった行為を禁じている。ただラジオはエリアを問わず4局まで兼営可能で、持ち株会社や隣接地域なら規制が緩和されるなど例外もある。
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