NIBフロントライン

旭陽電機社長
滝口哲朗氏
滝口哲朗氏
【インタビュー】
 -業界、自社の現状は。

 「弊社では金属の薄板を裁断し、折り曲げた物を溶接して箱形に組み立て、高さ1、2メートルのオーダーメード型キャビネットを製作している。製品は大型施設の設備や上下水道、工場の製造ラインなどをコントロールするために使われ、駅のホームからの落下事故を防ぐドアなどとしても活用されている。東京五輪・パラリンピックの各競技場をはじめ、東京スカイツリー、あべのハルカス(大阪)など全国のランドマーク的な施設でも使われ、私たちにとって大きな誇りとなっている」
 「新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞や、資材価格の高騰、半導体不足も重なり業界として波に乗れない状況が続く。弊社も昨夏までは仕事量が落ち込んだが、設備投資を巡るニーズを予測しながら新規開拓に注力してきたところだ。具体的には、コロナによる在宅ワークの進展でオフィスビル向けの需要が減ることを想定し、新たに無電柱化向けのキャビネット事業を展開している。防災や観光振興の観点からも無電柱化は重要だ。このような取り組みを幅広くPRして自社の認知度を高め、採用にも力を入れながら企業の発展につなげたい」

 -求める人材と育成法は。

 「ものづくりが好きな前向きで粘り強い人を求めている。弊社では中途採用も多く、電気工事や食品製造、運転手などこの仕事を経験したことがない人がほとんどだ。入社してすぐに製品を作ってもらっている。失敗することを前提にまずは取り組んでもらい、しばらく経験を積んでから最初に手掛けた製品と比較し、成長具合を感じ取ってもらうようにしている。経営者としては私自身、社員を常に見て技術的な成長を把握し、そのタイミングに合った教育をし、社員の努力を評価することを重視している」

 -影響を受けた人物は。

 「創業者で現在は会長を務めている父を挙げたい。営業力に優れ、社員の良い点を見抜きながら働いてもらい、会社を発展させてきた。今でも納期対応に苦慮している時などにはアドバイスをもらっている。また歴史上の人物では、現在の山形市街地を戦禍から守った幕末の山形藩首席家老・水野三郎右衛門元宣(もとのぶ)がいる。このほど山形新聞にも関連記事が掲載されていたが、時代は違えど自分も家族や会社を守るために精進し、覚悟を持って明るく生きていきたい」

 ★滝口哲朗氏(たきぐち・てつろう) 専修大経済学部卒業後、大手の運輸会社に勤務。1993年に旭陽電機に入り、専務を経て2015年に社長に就任した。山形市出身。52歳。

 ★旭陽電機 1983(昭和58)年、現会長の滝口崇康氏が制御盤・配電盤の設計製作メーカーとして設立。制御盤のキャビネットメーカーに業態を転換し、東日本トップクラスの生産量を誇る。上山市中山と南陽市小岩沢に工場、東京に営業所を持つ。資本金1千万円、社員27人。本社所在地は山形市錦町9の6。

【私と新聞】先読みの癖をつけている
 滝口哲朗社長は山形新聞をはじめ全国紙、経済紙の3紙を購読し、帰宅後の時間も使いながら熟読している。注目しているのは自社の技術を生かせるようなニュースで、「新聞で得た情報を基にイメージを膨らませ、先読みの癖をつけている」。
 気になった記事はコピーして保管し、いつでも目を通せるようにしている。本紙については地域に密着した話題が掲載されているのが魅力だといい、大相撲の北の若(酒田市出身)の活躍などに心を躍らせているという。また小学校での活動やスポーツ大会出場など、社員の子どもたちの様子を紙面を通して共有できることをうれしく感じている。「忙しい仕事の中で、ほっとした会話になる」と話す。

【週刊経済ワード】牛肉の輸出
 日本の畜産物輸出額のうち、最大の割合を占める輸出重点品目。2021年は豚肉や鶏卵など畜産物全体の輸出額が872億円で、このうち約62%を牛肉が占めた。政府が策定した農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略では、米国のほかに香港や台湾向けも伸ばし、25年の牛肉輸出額を19年に比べ5倍超の1600億円に引き上げる目標を掲げている。
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