NIBフロントライン

佐野水産社長
佐野恒平氏
佐野恒平氏
【インタビュー】
 -新型コロナウイルス禍で業界、自社の現状は。

 「苦境は続いている。生鮮品を取り扱うためコストを削減できる部分が少なく、売り上げが減ると厳しい状況になる。卸売業は地域経済と密接に関係しており、取引先の業況が全体的に良くならないとわれわれも良くならない。コロナ禍以外でも、温暖化の影響で大衆魚だった魚が捕れなくなったり、海外の水産物需要が高まったりしていることにより、入手しづらくなっている水産物がある。さらに最近の物価高で仕入れ値は高騰している。業界はいろいろな意味で向かい風の状況だ」

 -厳しい状況を踏まえ、何に力を入れていくか。

 「消費行動、流通の構造が変わってきている。水産物を地域のお客さまに丁寧にお届けするということを続けるとともに、自社製品の開発、インターネットを使った小売りも考えていきたい。自社が持つ物流機能を生かすことに着目すれば、水産物と一緒に他の製品も届けられる。地域の強みと業種業態の強み、自社の強みを深掘りし、できることを広げていきたい」

 -米こうじを使った米沢の特産品「雪割納豆」の製造販売も受け継いだ。

 「地域の食文化の継承と、製造事業ができることの魅力があった。売り上げの割合は小さいが他の業界との接点が増え、消費者の声を直接聞くことができるなど自社に蓄積されてきていることは多い。地域ならではの商品ということでネット販売の売り上げが徐々に増えており、ここを入り口に水産製品も展開していけたらと考えている」

 -求める人材、能力は。

 「小さなことをこつこつ積み上げる、継続する力が非常に重要。それが、小さな変化に対応したり問題に気付いて課題を解決したりと、結果的に新たな挑戦につながっていく。積み重ねる力があれば、土壇場で踏ん張る力も付いてくる。意識的に『こつこつ』を積み重ね、前向きに物事と向き合っていきたい。これは自分自身にも言い聞かせていることだ」

 -仕事をする上で影響を受けた人は。

 「歴史を学んでいた大学時代の恩師・北野博司先生。今自分が大事にしている『こつこつやること』『土壇場力』の重要性を学生時代から教わってきた。今も、要所要所で心に響いたり、ドキッとしたりする言葉を掛けてくれる存在だ」

 ★佐野恒平氏(さの・こうへい) 東北芸術工科大芸術学科(現歴史遺産学科)を卒業後、仙台水産(仙台市)を経て2008年、佐野水産に入社。取締役営業部長、専務を経て20年から現職。関連会社のゆきんこ社長も務める。米沢市出身。40歳。

 ★佐野水産 1894(明治27)年創業。1952(昭和27)年有限会社佐野利一商店となり水産物卸売業を手掛ける。67年に株式会社化。2014年に雪割納豆の製造販売事業を継承し、関連会社「ゆきんこ」を設立した。従業員数約20人、資本金1千万円。本社所在地は米沢市中田町4790の1。

【私と新聞】幅広い分野の情報入手
 佐野水産では山形新聞、業界紙、経済紙、全国紙、スポーツ紙と多くの新聞を購読している。
 その中で佐野社長が毎日読むのは本紙、業界紙、経済紙の3紙。本紙でお悔やみ欄や地域のニュースをしっかり読み、業界紙で水産業界の動向を把握、経済紙では他の業界の情報を仕入れる。限られた時間で、見出しに目を通し、気になった記事を拾い読みしているという。
 インターネットでも情報を簡単に入手できる時代だが「新聞の方が信頼性が高い」と佐野社長。また、ネットで得る情報は自分が興味を持つ分野にとどまりがちだが、新聞は開けば幅広い分野の話題に目がいく良さがある。「情報を入手する方法として、新聞は大事だと思っている」と語る。

【週刊経済ワード】東日本大震災の復興財源
 2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災者支援やインフラ復旧などに充てる財源。政府は15年度までの当初5年間の復旧・復興事業を19兆円程度と見積もり、法人税と所得税の臨時増税、保有株の売却、子ども手当の見直しによる歳出削減などで財源を賄うとした。その後、5年間の事業を26兆3000億円に増やし、増加分のうち4兆円は日本郵政株の売却収入を充てるとした。11~20年度の支出額は総額31兆円程度となった。
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