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秦・伊藤設計社長
伊藤彰氏
伊藤彰氏
【インタビュー】
 -自社、業界の現状は。

 「意匠、構造、機械、電気の専門家がそろい、設計全てを一貫対応できる総合設計事務所だ。重要なのは施主のニーズに合わせながら、山形の風土に合った建物を建てること。建物は年数とともにメンテナンスが必要になるが、当社は設計した建物がある限りフォローする。設計図はかつて手書きだったが、時代は変わり、現在は3次元でのCAD(コンピューター利用設計システム)利用に変わった。建物に一つとして同じ物はない。設計はパーツを組み立てれば完成するのではなく、一つ一つ考え創造しながら、見直し、まとめていくものだ。新型コロナウイルスの感染拡大で海外の工場の操業が止まったほか半導体不足も重なり、部品調達難によって建築業界は給湯器やトイレ商品、照明器具などが不足し、価格も上昇している。高齢化や入職者の減少により、技術者、作業者も不足気味だ」

 -求める人材は。

 「建物に興味があり、ものづくりが好きな人だ。仕事は人から与えられるのではなく、自分から求めることが必要。社内や現場で多くの人と関わるため、あいさつができることも欠かせない。多くの人に声を掛けられ、育ててもらえる前向きな人も求めたい」

 -必要な能力、努力は。

 「お客さまが何を求めているのか読み取る力だ。経験と実績が蓄えられると実力になる。経験、実績を積むために会話力、対話力も必要だ。施主やお客さまと対等に打ち合わせをするためには知識が必要。出身校や学歴には固執せず、多くの建物を見て自分なりの考えを持ってほしい。堅実でお客さまに『頼んで良かった』と満足していただける仕事をしてほしい」
 「設計部は7人が女性で、1級建築士14人のうち5人は女性だが、仕事で男女の区別はない。男女とも子育てや介護、休日、趣味などのバランスを取りながら業務に向き合えるよう、柔軟で働きやすい職場づくりに努めたい」

 -影響を受けた人物は。

 「父で4代目社長の伊藤健だが、父はかつて山形工業高建築科長を務めており、教え子の方々にはご指導いただいた。その中に20代で富士山測候所レーダードーム建設の現場監督を務めた伊藤庄助さん(大江町出身)がいる。高山病になり下山しようとした人に『これは一生に一度の仕事。新幹線から富士山が見えたとき子どもや孫に、あれは俺が造った、と言える後世に誇れるものづくりだ』と声を掛け、現場に残ってもらったとの話を聞いた。当社もそう言える仕事をしたい」

 ★伊藤彰氏(いとう・あきら) 山形南高、日本大工学部建築学科、同電気工学科を卒業後、1976(昭和51)年に秦・伊藤建築設計事務所(現秦・伊藤設計)入社。東京の電気設備会社で経験を積み、79年に秦・伊藤設計に戻り専務を経て、2019年9月に6代目の社長に就任した。県建築士会長も務める。山形市出身。71歳。

 ★秦・伊藤設計 旧制山形高校(現山形大)建設のため文部省(当時)に現場工事監理を命じられ赴任した秦鷲雄氏、伊藤高蔵氏が1924(大正13)年、東北初の設計監理業務専業の秦・伊藤建築設計事務所を開設。当時は山形唯一の鉄筋コンクリート造りを手掛ける設計事務所で、県内初の鉄筋コンクリート造り校舎だった旧山形一小校舎も設計した。現在は病院や幼稚園、保育園、学校、公共・商業施設、温泉施設、斎場、住宅など幅広い建物の設計を担う。職員数30人、建築士は16人(1級14人、2級2人)。資本金1千万円。本社所在地は山形市松山3の3の15。

【私と新聞】会話の種になる情報源
 出社前に毎日、新聞を斜め読みする伊藤彰社長。山形新聞を「さまざまな分野の情報、地域の情報が満載で、会話の種になる重要な情報源だ」と評する。スポーツ面では県内出身選手の活躍が分かり、全国紙との違いを感じるという。
 若い世代を中心にニュースや情報をネットで見る人が増えているが、伊藤社長は「それだと自分好みで、都合の良い物しか目に入らず、しかも正しいとは限らない」と指摘。その点で新聞は「開けばさまざまな情報が目に入り、しかも正確。購読するだけで情報を蓄積でき、社会の流れが分かり、最良の愛読書だ」と語る。
 さらに新聞によって解説や論調が違い、読み比べるのも面白いという。「感覚だけで物事を判断せず、自分の考えと比較しながら読んでみては」と提案した。

【週刊経済ワード】マネーロンダリング
 犯罪で得た収益の出所や所有者を分からないようにして、捜査機関による摘発を逃れようとする行為。資金洗浄とも呼ばれる。他人名義や架空の口座を使った海外送金や、暗号資産(仮想通貨)に交換するのが代表的な手口。国際組織「金融活動作業部会(FATF)」の調査報告書で、日本の対策は3段階中2番目と評価された。2007年施行の犯罪収益移転防止法はマネロン防止のため、銀行などに疑わしい取引があれば行政庁に届け出ることを義務付けている。
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