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きらやかコンサルティング&パートナーズ社長
高橋直人氏
高橋直人氏
【インタビュー】
 -業界の現状と自社の取り組みは。

 「急速な少子高齢化や産業構造の変化、新型コロナウイルスが中小企業に与える影響は大きい。こういう時だからこそ、私たちは『本業支援』を進化させ、独自のコンサルティングで地域に貢献しなければならない。20年ほど前からコンサルティング業務の重要性が高まると考え、現在の川越浩司きらやか銀行頭取と当時、(山形しあわせ銀行グループとして)コンサルティング会社『しあわせ経営システムズ』を設立した経緯がある。現在、事業承継やM&A(企業の合併・買収)、補助金申請、ISO、各種認証支援に関する一般的な業務に加え、独自に『ステップインコンサルティング』を展開している。売り上げや社員の技術力など、会社ごとに異なる企業価値に合わせ、それを向上させるのが狙いだ。経営者と従業員の対話を通じて企業の潜在能力を引き出し、経営理念と企業価値向上の具現化に向けたお手伝いをしている」
 「このほど、第二会社方式で事業再生を目指す『たいようパン』(高畠町)の新体制スタートを私たちが出資する形でサポートした。銀行子会社が経営再建を主導するのは東北初ということだが、投資業務を手掛けるわれわれだからできること。コロナ下の厳しい状況でも会社は従業員のアイデアを取り入れながら、今しかできないことに取り組んでいかなくてはならない。地域経済の活性化に向け『ステップ-』を通してサポートしていきたい」

 -求める人材は。

 「昨今のコンサルティング業務は、従来の銀行員の思考回路では対応が難しい面もあるように感じている。また今後、AI(人工知能)が進化すれば多くの仕事がAIに取って代わられるだろう。従って『狂狷(きょうけん)の徒(と)』という、志が高く自分の意思を曲げない人材、失敗を恐れない人材が必要だと考えている。私は支店長を経験し、人事畑を10年以上歩んで、さまざまな行員と接してきた。柔軟な発想で物事を捉え、指示待ち人間にならないことが重要だ。さらに仕事を通じて誰にも負けない、AIではできないオンリーワンのスキルを体得してもらいたい」

 -影響を受けた人物は。

 「山形しあわせ銀行で頭取を務めた沢井誠介氏だ。しあわせ経営システムズ設立時など、ストレートにずけずけと発言する私を沢井頭取は真っ正面から受け止めてくれた。折に触れ論語の薫陶も受け、これからも真っすぐに生きよという意味の『子曰(しのたまわく) 直哉史魚(ちょくなるかなしぎょ)。邦有道如矢(くにみちあるときもやのごとく)、邦無道如矢(くにみちなきときもやのごとし)』との言葉を今も胸に刻んでいる」

 ★高橋直人氏(たかはし・なおと) 日大法学部卒。1981(昭和56)年に山形相互銀行(現きらやか銀行)入行。常務執行役員天童支店長、取締役監査等委員などを経て2021年6月から、きらやかコンサルティング&パートナーズ社長。山形市出身。63歳。

 ★きらやかコンサルティング&パートナーズ きらやか銀行の連結子会社「きらやかキャピタル」を前身とし、2016年に設立。投資業務をはじめ事業承継対策支援、企業の合併・買収(M&A)、経営戦略策定支援、人材育成事業などを展開する。社員数24人、資本金3千万円。山形市旅篭町3の2の3。

【私と新聞】客観的判断力養える
 高橋直人社長は小学生の頃から新聞を愛読している。「亡くなった父からは珍しい子どもだと言われるくらい。朝、配達されて届くのが楽しみだった」と振り返り、現在は経済面や政治・行政面を中心に目を通している。
 新聞の良さは、多くの見方や意見に触れることで、客観的に判断する力を養える点にあると感じている。インターネットで入手する情報も大切だが「(一覧性があり)知りたいことだけに偏ることなく情報を得られる新聞は重要な媒体。自分が持っている知識だけでは分からない事柄も理解できる」と受け止めている。
 山形新聞は「身近な世相を伝えてくれる地元紙」と表現。文化欄に掲載されている直木賞作家・高橋義夫さん(山形市)の「盛り場を歩く」はお気に入りの一つで、「世の中から消えつつある昭和の良さが伝わってくる」と話す。

【週刊経済ワード】カムバック制度
 本人の希望でいったん退職した社員が、同じ会社に再就職できる制度。結婚や育児、介護などを理由に、やむなく退職した社員向けに用意する場合が多い。最近は、転職や起業で離れた社員に復職してもらい、社外経験を生かしてもらおうという企業の動きもある。新卒や中途採用に比べ、ゼロから社内教育する必要がない上、雇用のミスマッチが少なく即戦力として期待できる面もある。
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