NIBフロントライン

武蔵屋社長
柘植吉一氏
柘植吉一氏
【インタビュー】
 -業界の現状と力を入れている取り組みは。

 「近年、先祖供養の形が変化しているが、住宅事情や核家族化によって墓じまいや仏壇の処分が増加傾向にある。永代供養塔を備える寺院も増え、そちらにお骨を預ける人も多く、その際に仏壇もコンパクト化される。購入数自体に大きな変化はないが、販売する単価が低くなっている。仏壇販売だけではさらなる先細りが懸念される中、高まっているのは葬儀のウエートだが、新型コロナウイルスの感染拡大前から簡素化傾向があり、コロナによってさらに加速した。今後も同様の傾向が予想される。小さくても、家族がゆったりとお見送りできるような形態が大事になる」

 -求める人材は。

 「仕事ができるできないよりも、まずは人柄。業務に対する教育は入社後にいくらでもできるが、人柄が良くなければ仏壇の販売や葬祭業はできないと考える。お客さま第一主義であり、店はお客さまのためにある。お葬式を執り行うご家族の立場に立つことが何よりも重要。お客さまをど真ん中にして物事を考え、喜んでもらうことが大切だ」

 -その力をどう身に付けたらいいか。人材育成の取り組みと採用時に気を使ってることは。

 「採用時も人柄重視で採用はするが、なかなか面接だけで見極めることは難しい。3~6カ月間は、お互いに見定める期間を持っている。その後、話し合いや聞き取りをした上で今後、頑張っていけるかなどを確認している。人柄は『三つ子の魂百まで』というように、変えることは難しいと思う。そのため自ら思いやりを持つということが大事になる。お客さまにどうしたら喜んでいただけるかを考えることが最優先となる」

 -仕事上、最も影響を受けた人物は。

 「出版社『商業界』主幹で2013年に亡くなった経営評論家倉本初夫さんだ。『お客さまを日々大事にして仕事をする』というぶれない考えに感銘を受けた。また若手の経営者を育てるため研修会やセミナー、合宿なども開催していた。倉本さんに限らず、そうした場で出会った全国の仲間と議論したことも、経営や商売などに対する考え方の基盤になっている」

 ★柘植吉一氏(つげ・よしかず) 一橋商高(現東海大山形高)卒、亜細亜大経済学部中退。都内の仏壇小売店で修業後、1979(昭和54)年に武蔵屋入社。93年に専務となり98年から社長。南陽市出身。62歳。

 ★武蔵屋 1890(明治23)年に仏壇・仏具・漆器の塗師業として南陽市赤湯(赤湯村)で創業。2002年に本社を同市椚塚に移転し、葬祭業(むさしセレモニー)を本格的にスタートさせた。現在は本社のほか同市内にセレモニーホール4カ所と墓石ショールーム1カ所、米沢市内に家族葬式場2カ所など。資本金1千万円、従業員44人。本社は南陽市椚塚1675の1。

【私と新聞】経済や市民生活見える
 自宅で山形新聞を長年愛読している柘植社長。朝食前の午前7時ごろに読み始めるが、職業柄まずお悔やみ欄を開き「当社で関わらせていただいたお客さまの情報が正しく掲載されているかを確認する」。
 次に見るのは置賜版。地元で何が起こっているか、お客さまや取引先との会話で役立つことも多い。その後は1面、政治・行政面、経済面、社会面と全体に目を通す。
 新聞を読むのが長年の習慣になっているといい日々、一日の始まりを実感している。チラシにも全て目を配るのが日課で「地域経済の動きや市民生活が見えてくるだけでなく、気の利いたキャッチコピーなど勉強になる部分も多い」。今後については「地元情報が満載なのが山形新聞の売り。置賜版を中心に情報の充実を図ってほしい」と期待を寄せる。

【週刊経済ワード】企業物価指数
 企業間で取引される商品の価格変動を示す指数で、日銀が毎月公表している。国内向けに国内で生産された商品の値動きを示す「国内企業物価指数」のほか「輸出物価指数」「輸入物価指数」で構成され、景気動向や金融政策の判断にとって重要な指標の一つ。消費者が買う商品・サービスの動向を調べた消費者物価指数よりも、商品需給や原材料価格を反映しやすい。
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