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三和缶詰社長
香月修氏
香月修氏
【インタビュー】
 -業界や自社の現状は。

 「当社では飲料品から食品まで幅広く製造している。自社商品の割合は数%程度と少なく、ほとんどがOEM(相手先ブランドによる生産)。飲料品に関しては昨年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛があったり、スポーツ大会や部活動がなくなったりして大きなダメージを受けた。食品については巣ごもり需要が高まり、パウチ容器タイプのお汁粉、ぜんざいの売り上げが伸びたが、飲料品分のマイナスをカバーできなかった。五輪はほとんどの競技会場が無観客での実施となったこともあり、屋外での活動機会が限られ今年に入っても状況は変わっていない」

 -そのような中、今年6月に「山形生まれの山形酎ハイ『大人のパインサイダー』」を発売するなどしている。

 「私自身、昨年に初めて山形県に移り住み、県民なら誰もが昔から飲んでいるというパインサイダーと出合った。周囲から『当たり前のドリンク』だと聞き、子どもの頃に飲んだ味は大人になっても舌が覚えているだろうとお酒にしてみた。以前から自分でパインサイダー割りを楽しんでいる方もいるかもしれない。県内での反響はすごく良い。これからは宮城県内のスーパーにも置いていただけることになり、関東でも商談を進めている。今後は、第2弾を企画・開発するというより、この商品をじっくりと育てていきたい」

 -求める人材は。

 「社員には、よく『明るく楽しく元気よく』働こうと話している。一人一人答えは違うと思うが、この意味をよく考えてもらいたい。職場を明るくするにはどうしたらいいか、仕事を楽しくやるにはどうしたらいいか、元気で働くにはどうしたらいいか。自分で考え、自分から行動を起こせる人材を求めている」

 「社員に気持ちよく働いてもらいたいと思い、古くなった工場の塗装作業や危険な箇所の改善に取り組んだ。業者に頼まず管理職を中心に社員と一緒に作業を行ったことでコミュニケーションも向上した。その上で稼働率、歩留まり、ロス率などの面で生産性向上や合理化に取り組み、その効果が今年に入り表れており、コロナの影響をカバーしている」

 -影響を受けた人物は。

 「直近では、経営コンサルタントの一倉定(さだむ)さん。社長に関する内容の本を著していて『いい会社、悪い会社というものはない。いい社長、悪い社長がいるかだ』と語っていた。社長が全ての責任を負うという意味で、社長就任に当たっての心構え、覚悟を勉強することができた」

 ★香月修氏(かつき・おさむ) 福岡大法学部卒。1989年に大和製缶(東京)に入社し、営業戦略室長などを歴任。2020年4月に三和缶詰の営業本部に入り同年6月、社長に就任。福岡県出身。56歳。

 ★三和缶詰 1957(昭和32)年創業。大和製缶のグループ会社。本社のある中山町と天童市に工場を構える。缶飲料やレトルト食品、介護用食品などを幅広く生産し、大手メーカーのOEM事業も展開する。正社員250人、資本金4億円。本社は中山町長崎229の2。

【私と新聞】“気付き”与えてくれる
 香月社長は毎朝、自宅でコーヒーを飲みながら経済紙を読むのが習慣になっている。政治や社会、スポーツなどあらゆる話題が載っていることを新聞の魅力に挙げ「自分が興味のない分野の情報も含めて伝えてくれるのがいいところ」と話す。
 福岡県出身で、幼い頃から地元紙(西日本新聞)が身近な存在だったという。本県に来てから山形新聞を手に取るようになり「地域に特化した情報が載っていて“気付き”をいっぱい与えてくれる」。
 新型コロナの影響で思うように外出できず、初めて知った芋煮会など本県ならではのイベントが体験できる日を心待ちにしている。「山形での生活は2年目。これまでおいそれと観光に行けなかった。そういった面でも新聞を参考にできれば」と表情を和らげた。

【週刊経済ワード】農水産物の産直アプリ
 魚介や野菜、加工食品などを産地から直売するスマートフォン向けの専用ソフトのこと。新型コロナウイルス禍に伴う外出自粛で自宅にいながら新鮮な食材を求める消費者の需要が高まり、国内運営会社の急成長につながった。生産者自身がアプリ上に出店し、卸売市場や小売店を介さないため、価格に対する生産者と消費者双方の納得感が比較的高いことも特徴の一つとされる。
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