NIBフロントライン

山形螺子工業社長
細谷良一氏
細谷良一氏
【インタビュー】
 -業界の現状と自社の取り組みは。

 「新型コロナウイルス感染拡大は当社事業にも大きく影響を及ぼした。特に昨年5月は受注が激減した。12月中ごろまで生産調整のため毎月3日から4日ほど休業し、教育訓練などを行ってきた。当社は主に建設機械(油圧ショベル)の油圧部品を製造している。国内建機業界の販路は輸出が6割を占めており、コロナ禍が落ち着いた国で昨年秋ごろから回復してきている。最近は海外、特に北米では在宅勤務に伴う住宅建築が旺盛になっており、ミニショベルといった小型建機の需要が増えている。現在はコロナ前の水準に戻っており、下期にかけてさらに欧州、アジア向けの増産が期待される。ただ、原材料価格の上昇や、半導体不足による供給リスクの長期化は懸念材料。当社は幸いにも影響が限定的となったが、コロナ禍を契機に、リスク分散のために事業を再構築するなど企業体質の強化に取り組んでいく」

 -求める人材は。

 「ものづくりに興味があり仲間と協調して知識や技能を積み重ねていける人だ。製品の機能や仕様は設計の段階で決まっているが、作る方法に制約はなく自由であり、そこにものづくりの奥深さと面白さがある。現在のものづくりの考え・工程を理解し、いろいろな経験を積んで技術力を高め、社会のニーズの変化に対応する工夫・改善を、仲間と共にコミュニケーションを行いながら進めていける人材を求める」

 -人材教育法は。

 「プログラムを組み、ものを作ってみて出来栄えを評価し、問題点があればそれを改善するまでの技能習熟を目標としている。社員教育は技能到達度を評価し、次のステップに向けて段階的に社内で座学とOJT(実務を通じた訓練)を行う。新たな技術や管理部門は外部研修を取り入れている。技術の伝承と創意工夫による技術力向上の継続を経営方針としている」

 -影響を受けた人物は。

 「創業時の技術指導者だった指江政吉製造部長だ。当時はコンピューター制御の工作機械がそれほど普及しておらず、単能盤による手研ぎ刃物での加工が主体。品質維持と生産性の両立が課題だった。外部講師と指江部長から、統計的手法を用いた品質管理についての講習を社員や協力企業とともに数年にわたって受け、ものづくりの基本を学んだ。その後のライン生産の基礎となり、現在の自動化につながっている」

 ★細谷良一氏(ほそや・りょういち) 岩手大工学部卒。1978(昭和53)年に入社し、常務、専務を経て2020年に社長就任。村山市出身。72歳。

 ★山形螺子工業 1961(昭和36)年、出稼ぎを解消し地域工業の振興を図ることを目的に設立。螺子(ねじ)の関連部品製造で創業。その後精密部品加工へ。82年よりライン生産を取り入れ、現在は28ラインに拡大。89年からライン生産の自動化を進め現在6ラインが移行済み。建機油圧部品、産業機器空圧部品、自動車部品などを製造。2021年、健康経営優良法人に認定。資本金2千万円。従業員数74人。本社・工場所在地は村山市楯岡中町4の25。

【私と新聞】幅広い話題を知り考える
 新聞は毎朝、1面から順に見出しを見て、気になる記事を読む。「談話室」は毎日どんな内容か興味がある。読者が意見や提言を寄せる「やましんサロン」は、幅広い世代のそれぞれの内容が興味深い。地域ニュース面は県内エリアごとに話題が豊富。おくやみ欄は故人を知り、しのぶ重要な情報源だ。
 最近気になったのは、木材価格高騰の記事。輸入材に押され国内林業の衰退が久しく続いているが、今後採算性が改善されて活性化につながり、地域の山々が再び豊かな姿に戻ることになれば、との思いを持っている。
 山形新聞の魅力は、他紙に比べ活字が大きく、カラー素材を多く取り入れた読みやすさ。地域の幅広い話題と全国・海外の情報を同時に得るのに、なくてはならないものだ。

【週刊経済ワード】台湾積体電路製造(TSMC)
 台湾北西部の新竹に本社を構える半導体製造企業。1987年設立。半導体製造の注文を受けて生産だけを担う「受託製造」の先駆者で、世界的に大きなシェアを持つ。日米欧などの半導体需要が高まり、注文が殺到したのを受け、生産能力を増強中。昨年に米西部アリゾナ州での工場建設計画を発表したほか、今年2月には茨城県に研究開発を目的とした子会社の設立を決めた。2019年末時点の従業員数は5万1000人。(台北共同)
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