NIBフロントライン

加藤物産社長
小川淳氏
小川淳氏
【インタビュー】
 -新型コロナウイルス感染症を踏まえ、自社の現状は。

 「卸問屋である当社が扱っているのは食品関係が9割を占める。昨年は会社が始まって以来、最も厳しい状況だった。ゴールデンウイーク(GW)、お盆、年末年始と1年間で何回か観光のヤマ場が来るが、緊急事態宣言が出されるなどし、取引先のお店や施設が休業を余儀なくされ何もできなかった。今年のGWは昨年より観光客が多い感覚だったが、コロナ前の一昨年と比較すると売り上げは3割に届いていない。加えて今年はサクランボの収量減が予想され、厳しさを感じている」
 「インターネットを通じた販売事業は伸びている。在宅時間の増加が大きいようだ。世の中で需要がある物を見極める必要があり、現在は(感染対策品として)アクリルパーティションも取り扱い、観光・介護施設や飲食店から多くの注文を受けている。生き残っていくため、われわれは“変化”していかなくてはならない。回り道かもしれないが、そこでしか出会えない人がいる。一つ一つ丁寧にやって進んでいく」

 -看板商品の一つに菓子「樹氷ロマン」がある。

 「この厳しい状況でも樹氷ロマンは当社の売り上げの1位。先代社長が考案したオリジナル商品で、1977(昭和52)年に取り扱いを開始したので、同年に生まれた私と“同い年”になる。味はずっと変えていないが、季節に応じ、ホワイトクリームが口の中で溶ける温度を変えて製造している。例えば夏は持ち帰る途中でベタベタしないように溶けにくくし、逆に冬はあまり固くならないように溶けやすくしている。観光客はもちろん、多くの県民に長く愛されるように浸透させていきたい」

 -求める人材と育成法は。

 「向上心があってコミュニケーション力が高い人。情報技術(IT)化や機械化が進む中でも、結局、物の売り買いは人と人の関係が重要になる。問題解決能力を育もうと3年前から外部講師を呼び、社内研修会を開催している。『あの人が変われば会社は良くなる』などと言ってしまいがちだが、他人と過去は変えられない。どうやったら自分自身が変化し、豊かになれるかという視点で、社員にさまざまな情報を提供するようにしている」

 -影響を受けた人物は。

 「長野県の食品メーカーに勤務した際、同社専務に『旅情を創(つく)る』という考え方を教わった。お土産は食べたら終わりだが、食べながらその旅を思い出せる商品を提供していかなくてはならない。そして大切にしているのが“四方良し”の考え方。社員とその家族、お客さま、取引先のメーカー、地域社会の4者が良くなっていけるように努力している」

 ★小川淳氏(おがわ・あつし) 日大山形高、産業能率大卒。長野県の食品メーカー勤務後、母方の親族が経営する加藤物産に26歳で入社。専務などを経て2014年、2代目の社長に就任した。山形市出身。43歳。

 ★加藤物産 1930(昭和5)年、初代加藤喜三郎氏が東京・浅草に加藤喜三郎桐箱製作所を設立。45年、戦災により上山市牧野に疎開して事業展開。桐箱製造をはじめ民芸品や食料品の卸売、贈答品販売も手掛けるようになり、76年に法人化。80年に現在の上山工業団地内に移転した。取引エリアは県内全域で、宮城、福島、新潟、秋田各県の一部地域もカバーする。従業員数14人、資本金1400万円。本社は上山市新金谷826の1。

【私と新聞】「きょうの紙面」に注目
 幼い頃から山形新聞に親しんでいるという小川社長は、1面の上部にある「きょうの紙面」に注目し、気になったニュースから読むのが習慣だ。仕事で多くの人と関わっていることもあって、おくやみ欄にも必ず目を通すようにしている。
 細かいイベントなどが載る地域面は欠かさず読んでいる。自分が住む地域以外で何が起きているかを把握するのに役立てており「観光やお土産の仕事に就いている以上、地域のこと、山形のことを頭に入れておかないといけない」と話す。高校時代は陸上部に所属。小学校の時に山形市の陸上記録会(短距離)で好成績を残したこともあり、スポーツ面に掲載される各種大会結果、記録などにも注目している。

【週刊経済ワード】温室効果ガスゼロ目標
 二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出をできるだけ少なくしつつ、植林などCO2を吸収する手段も講じることで排出量を差し引きでゼロとする取り組み。カーボンニュートラルとも呼ばれる。政府は2050年までの国内での達成を目指している。世界では120以上の国と地域が50年を目標に掲げ排出規制を強化している。環境への配慮に乏しい事業への投資が避けられる傾向が世界的に強まっており、企業は対応を迫られている。
[PR]