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井上工業会長
井上尚氏
井上尚氏
【インタビュー】
 -業界の現状と自社の取り組みは。

 「当社は解体工事業を中心としている。解体は住宅から橋などの社会インフラまで幅広いニーズがある。安全を担保し、建物にアスベスト(石綿)やポリ塩化ビフェニール(PCB)があるかを調べ、関係機関に届け出をして初めて作業ができる。廃棄物と安全作業の専門知識、法的規制の把握、施工ノウハウがなければ不可能な仕事だ。工法は騒音、振動、粉じんの低減が必要で『いつの間にか建物がなくなっている』ことが理想の解体。その中でトップを走るために、1級建築と1級土木の施工管理技士、専門技術者としての解体工事施工技士の資格者を増やすことに力を入れてきた。さらに当社の関連会社でリサイクルや発電ができることも強みだろう」
 「一方で都市部では競争が激しく受注額が下がる傾向がある。収益性の高い事業をするため、グループでつくった持ち株会社が『大沼』旧米沢店の土地と建物を取得し、建物を解体して、ドラッグストアとスポーツジムの店舗建設を発注して貸し出す。ここまで行う解体業の会社はあまりないのではないか」

 -求める人材は。

 「本業である解体工事の施工にこだわり、期待に応えるためにも人間が財産だ。安全に解体する人間と施工管理する人間の双方を育成しなければならない。求めているのはチャレンジする人材。多様な工法と機械を使い、現場を任せられる人材を育てていく。現在はノウハウ習得のために社内資格制度を作ることを考えている。営業職にも新たな分野に挑戦する使命感が必要だ。挑戦を応援するという面では、ケニアに渡りバレーボール五輪代表チームを指導している寒河江市出身の片桐翔太君を支援している。彼のような若い挑戦者をサポートする企業が増えてほしい」

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 「戦後に馬車で燃料などの荷物を運ぶ仕事から創業した父の直一だ。父は人を叱ることがうまかった。本人が悪いと思っていることをズバリと指摘する。一方で、間違いをしたことは仕方がない、次は頑張れと伝えた。言い方は厳しいが、叱られた人はみな納得した。仕事は人とするものだ。うちの仕事、社員の仕事を見て、納得してもらえるようになればいい」

 ★井上尚氏(いのうえ・たかし) 足利工業大中退。22歳で井上砂利に入社。ダンプ運転などを経験し、解体工事部門新設を主導。1998年に井上工業代表取締役就任、2016年から代表取締役会長。全国解体工事業団体連合会長、県解体工事業協会代表理事を務める。66歳。

 ★井上工業 1947(昭和22)年に井上尚会長の父・故直一氏が運送業を創業。64(同39)年に井上砂利へと社名変更し90年から現社名。資本金4千万円、従業員57人。本社所在地は寒河江市松川120。関連会社に廃棄物処理とリサイクルの東北クリーン開発(山形市)、解体工事と収集運搬のディスポテック(鶴岡市)、中間処理と発電のクリーンパワー山形(山形市)があり、グループ全体の従業員は約120人。

【私と新聞】県政報道、分かりやすく
 出社後に新聞を読むという井上尚会長。手に取る新聞については「山形新聞を読めばほとんど間に合う」と話す。気になる記事を見つけるとじっくり目を通すようにしている。

 最近気になったのは県政での副知事問題。知事の姿勢、副知事の在り方、県内首長の思いなどに考えを巡らせ、「県政と政治家がどう在るべきかを分かりやすく報道してほしい」と要望する。同様に、他都道府県に比べまだ遅れている交通インフラ整備などの問題も、報道を通じて充実につなげてほしいと役割に期待する。

 新聞を通じた希望は他にもある。本県の酒や食べ物は、県外からの来訪者にごちそうしたり県外の知人に贈ったりすると「最高に喜ばれる」と笑顔で話す。「山形県は他の地域に比べてブランド作りが上手ではない。もっともっと発信してほしい」と語った。

【週刊経済ワード】楽天
 1997年設立のIT企業で、インターネット通販の「楽天市場」を運営する。プロ野球やJリーグへの参入で知名度を高め、国内有数の企業に成長した。銀行や証券といった金融事業のほか携帯電話事業にも参入。「楽天経済圏」という言葉も生まれた。2020年12月期の連結売上高は1兆4555億円。今年4月に社名を楽天グループに変更する。
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