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黒沢ファーム社長
黒沢信彦氏
黒沢信彦氏
【インタビュー】
 -農業の現状を踏まえ、力を入れている取り組みは何か。

 「日本の人口は頭打ちで、国内のコメ消費量が年々減少している。さらに生産者は高齢化し後継者不足も問題となっているが、地球全体の人口は増加している。日本の農地は優良であり、世界の食を支える意味では好機と捉えることもできる。そのため、この恵まれた農地の荒廃を防ぎ、持続可能なものにしていかなくてはならない。農地を保全していく上で、人手が少なくなる中、農業用ロボットが目覚ましい進歩を遂げている。今後は大規模農地でロボットが活躍する場面が増えるだろう。防除には最近、ドローンを使い始めた。今後も積極的に農業用ロボットを導入していく」

 -どのような人材を求めているか。

 「田畑は二酸化炭素(CO2)の排出抑制や水質保全、生態系維持など、自然環境の保全につながる多様性を持っている。また、農協を通さない直接販売やネット通販など、販売先や販売方法も多様化している。農業の新たな価値を創造するための経済感覚や、地域農業の将来を担うためのリーダーシップが求められている」

 -その力を身に付けるために必要なことは。

 「どういった人が生き残れるかを考えた際、大きい会社でもなく賢い人でもなく、変化に対応できる人だと思う。専門的教育を受けた上で、農業を家業から事業に発展させるため、どう流通に関わっていくかが大切になる。おいしいものを作る技術を学びながら、研修の機会があれば積極的に外で勉強してもらう。自らの『感性の受信機』を磨かなければ、与えられた情報を生かすことすらできない。生産仲間や消費者といった多くの出会いをプラスに変えるためにも、その出会いを通じて感性を磨いてほしい」

 -仕事上、最も影響を受けた人物は。

 「たくさんいるが、一番は父親=茂巨(しげお)さん(83)=だ。作業現場をきれいにすることや機械を大切に扱うことから始まり、しっかりした仕事が良い農作物を作ることにつながることの大切さを教えられた。仕事を成し遂げるには、体調を整えるなど、準備が大事。仕事に向き合う真剣な姿勢をたたき込まれた」

 ★黒沢信彦氏(くろさわ・のぶひこ) 置賜農業高を卒業後、航空自衛隊に3年間勤務。1986(昭和61)年に家業を継いだ。2005年、黒沢ファームとして法人化し、社長に就任。県農業法人会の理事を務める。南陽市池黒出身。55歳。

 ★黒沢ファーム 2005年設立。米の生産・販売を手掛ける。米大リーグ・マリナーズなどで活躍したイチローさんに有機米を提供していた。ベルギーで活躍するサッカーの小林祐希選手には、現在も有機米を送っている。老舗料亭「なだ万」、スーパー・紀ノ国屋、三越伊勢丹、パークハイアット東京なども主要取引先。資本金300万円、従業員は6人。本社所在地は南陽市池黒。

【私と新聞】地域情報、会話に役立つ
 山形新聞と経済紙、農業紙の3紙を愛読する。朝食後、30分程度が新聞を読む時間だが、家ではもっぱら山形新聞に目を通す。

 1面を見た上で、その日の記事のメニューを確認する。地域の情報や事件・事故、おくやみなどを中心に満遍なく目を通す。地元の情報がよく分かり、その日会う人との会話、知識を蓄えることに役立っているという。また、掲載された記事のイベントに実際に行ってみたり、知り合いが載っていれば会いに行くきっかけにもなっている。お気に入りは1面のコラム「談話室」だ。

 スマートフォンにたくさんの情報が入ってくるが、あまり目を通さないとしつつも「情報の出典が新聞だと安心する」。

【週刊経済ワード】Go To キャンペーン
 新型コロナウイルス感染症の拡大で打撃を受けた業界の需要を喚起する政府事業。観光支援の「トラベル」、飲食の「イート」、文化芸術・スポーツの「イベント」、「商店街」の4分野で構成される。総事業費は1兆6794億円。「トラベル」の旅行代金割引が7月22日に先行して始まったが、他はまだ開始していない。
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