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天童木工社長
加藤昌宏氏
加藤昌宏氏
【インタビュー】
 -業界と自社の現状、力を入れている取り組みは。

 「少子高齢化の影響を受けやすい業界。住宅事情が変わり、家具が不要な造りが多くなってきた。生活様式も変わり、応接セットなどを必要としない家が増えている。ただ救われるのは、若い人たちにデザインや品質の良いインテリアに興味を持つ人が増えている点だ。オリジナルでそろえたいという人も出てきており、われわれには力になる。考え方によっては期待の持てる業界だ」

 「当社は特注品が売り上げの7~8割を占める。その中でも自治体庁舎などの仕事が多い。設計事務所の指導をもらいながら時代に合った材料、材質の製品を提案しており、最近は(独自に開発した)スギなど針葉樹の圧密材を前面に出している。もともと針葉樹は広葉樹に比べて軟らかく、家具に使うのは難しかった。開発のきっかけは『なんとか地元の材料を活用できないか』という思い。そうしたこともあり、庁舎や公共施設の仕事などは地元の木材を使うことが多い」

 -求める人材と育成方法は。

 「明るく楽しく元気が良い人。また、前向きで向上心があり、物事を掘り下げる力がある人。そういう部分があれば、どのような職場でも通用する。当社では特注という仕事の中から、新たな技能技術が生まれてきた。丹下健三さんら設計事務所のそうそうたる先生とのやりとりに鍛えられ、それが今の当社の基本になっている。『ここまでならできます』ではなく、『こんなこともできます』という精神。ここが天童木工らしさ。自分なりに工夫して取り組むという精神が受け継がれている。ものづくりは『ここまでで終わり』ということがない。若手社員は各班の中で先輩から教わるが、現場でしっかりと技能技術、心構えを身につけてほしいと考えている。また、技能五輪にも積極的に挑戦してもらっている。若い時に他社の職人さんと自分の腕を比べるという場は、何よりの体験になる」

 -仕事上、影響を受けた人物は。

 「1人は当社3代目社長で、工場長時代に『成形合板』の技術を確立した加藤徳吉。周囲を説得して開発に必要な機械を導入したが、一つのことをやり遂げるという気持ちがあったと思う。もう1人は寒天メーカー伊那食品工業最高顧問の塚越寛氏で、特に社員教育が素晴らしい。そして自分は社員に支えられて仕事をしている。働きやすい環境作りをするのが社長の役割と考えている」

 ★加藤昌宏氏(かとう・まさひろ) 日本大法学部卒。1966(昭和41)年天童木工に入社し生産部に勤務。常務総務部長、専務営業本部長を経て2001年から社長。16年から19年まで天童商工会議所会頭を務めた。県家具工業組合理事長、県社会保険協会長なども務める。天童市出身。76歳。

 ★天童木工 1940(昭和15)年、天童木工家具建具工業組合として創業。48年株式会社化した。「成形合板」をコア技術とし、著名な建築家、デザイナーと連携して、デザイン性が高く良質な製品を送り出してきた。2015年ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞。16年山新3P賞繁栄賞受賞。代表する製品の一つ「バタフライスツール」はルーブル美術館をはじめ国内外の美術館に永久所蔵。リオ五輪卓球競技で使用された卓球台の脚部を担当したことでも注目を集めた。資本金3億円。従業員は約320人。本社所在地は天童市乱川1の3の10。

【私と新聞】情報を整理、確認
 インターネットなどに多くの情報があふれる現代、「きちんとまとめて確認する上では新聞が一番」と加藤社長。「情報の整理、確認」に重点を置いて、毎朝新聞を読んでいるという。

 山形新聞を読む際は、1面のコラムに目を通し、お悔やみ欄を確認する。特集企画も好んで読んでいる。「山形新聞はすーっと頭に入りやすい記事が多く、情報を確認する上でも役に立っている」という。

 知人が新聞に出るとすぐに連絡するなど、コミュニケーションの手段にも。一方、天童木工の取り組みも紹介される機会がある。加藤社長は「自社の取り組みが新聞に取り上げられると、地元の人にも身近に感じてもらえ、そういった意味でもありがたい」と語る。


【週刊経済ワード】原油の協調減産
 原油価格を下支えするため、産油国が国際協調し原油生産を抑える取り組み。サウジアラビアをはじめとした石油輸出国機構(OPEC)加盟国と、ロシアなど非加盟の産油国が、2017年1月から協力して進めてきた。世界最大級の産油国である米国は不参加。今年3月6日に開いた閣僚級会合では、米国とのシェア争いを意識する国内石油企業を抱えるロシアが、減産拡大を求めるOPEC側と激しく対立。交渉はまとまらず、協力関係が崩壊した。
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