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エル・サン会長
早坂剛氏
早坂剛氏
【インタビュー】
 -業界の現状は。

 「冠婚葬祭を扱う業態だが、人口減少が進んでいることに加え、婚姻届を出すのみで結婚式を挙げる若い人が減っているという厳しさがある。仲人さんもいなくなっているようだ。一方で、身内や友人を式に招いて祝ってもらうことの大切さ、必要性を見直す意識が生まれていることを感じる。企業も人手不足の中で認知度を高めるため、自社の節目に合わせた記念式典などを通し、対外的なアピールを重視する動きもみられる。ありがたいことだ」

 -現状を踏まえ、力を入れていることは。

 「取り扱う仕事の量よりも、サービスの質を高めることを重視している。ウエディングプランナー、調理師など各部門のスタッフが、プロとして専門知識と技能を追求し続け、提供する。結婚式を挙げる両家、記念式典に臨む企業など、それぞれの立場で物事を考え、一緒に作り上げることを心掛けている。積極的に人と関わる意識が欠かせない」

 -求める人材と育成方法は。

 「入社すると自然にそうなるのだが、明るく元気で前向きな人を求めている。サービス業で欠かせないのは利他の精神。相手の喜びが自分の喜びとなる人づくりを目標としており、新人教育では1カ月間、みっちり取り組んでもらう。マナー、あいさつ、声出しの習得に加え、羽黒山の石段登りなどを通して体力も身に付ける。各種技能検定の受験を奨励し、年度末は事業部ごとの発表の場を設けることで、個人や職場全体のレベルアップを図っている。発表会では各賞を設けて表彰しているほか、2年に1回の海外研修も行い、モチベーションを上げることにつなげている」

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 「荘内三菱電機商品販売(鶴岡市)の飯野準治会長。かつて一緒に鶴岡商工会議所の副会頭を務めた。90歳を過ぎてもエネルギッシュで、自分や仕事に対する姿勢は厳しいが、社員を大事にしてきちんと利益を出す姿は生きた手本だ。私も10年計画でワイナリー事業に取り組んでいるが、飯野会長に比べるとまだまだ若造だと感じる。母校・慶応大の創立者である福沢諭吉が唱えた独立自尊の精神も、考え方の基本としている」

 ★早坂剛氏(はやさか・つよし) 慶応大文学部卒業。東京の外資系商社、ホテルでの勤務を経て1969(昭和44)年、鶴岡市にUターン。観光施設に2年間勤めた後、エル・サンを創業。2017年から代表取締役会長。07年11月から昨年10月まで鶴岡商工会議所会頭。鶴岡市出身。80歳。

 ★エル・サン 1971(昭和46)年、鶴岡産業会館内の和風レストラン「えるさん」として開業。78年にバンケット(宴会)部門を現在地に移し、95年に今の「グランドエル・サン」となった。葬祭事業の「アク・サン」、飲食店の「百けん濠(ぼり)」「蔵屋敷LUNA」などを営むほか、2017年に農業生産法人「エルサンワイナリー松ケ岡」を設立し、来秋からの自社醸造を予定。資本金8千万円、従業員47人。本社所在地は鶴岡市東原町17の7。

【私と新聞】複数紙読み、情勢を把握
 「活字の方がしっかりと頭に残る」という早坂剛会長。朝食後の出勤前、職場に着いてからと複数の新聞を毎日読み、社会情勢の把握に役立てている。

 1面から順に全ての面に目を通してから県政や各市町村の首長、企業の動向など気になった記事を深読みする。「世の中の出来事をしっかりと学習し、読み返すことで復習できる」と新聞への思い入れを語る。

 昨年10月末まで鶴岡商工会議所会頭を4期務め、庄内地方全体の活性化に対する思いは強い。人口減少に歯止めをかけるには交通インフラの充実が不可欠と考え、関係する話題の記事を熟読。「交流人口の拡大が重大な課題だ。庄内空港の定期便増便、滑走路の延長などが必要になる」と主張する。

 新聞に対しては「地域の動きに敏感に反応し、中立、冷静な報道を心掛けてほしい」と求めた。

【週刊経済ワード】米中貿易摩擦
 経済規模で世界首位の米国と2位中国の間で起きた貿易不均衡を巡る対立。米国は2018年、中国の知的財産権侵害を理由に制裁「第1~3弾」として中国からの輸入品計2500億ドル(約27兆5000億円)分に追加関税を順次発動した。中国も報復関税で対抗した。米中は19年9月に第4弾の一部を発動したが、協議は継続。中国による米農産品の大量購入などを盛り込んだ「第1段階」合意に達し、両政府は20年1月15日に文書に署名、2月14日に米中が一部関税を引き下げた。
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