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小嶋総本店社長
小嶋健市郎氏
小嶋健市郎氏
【インタビュー】
 -業界の現状は。

 「短期的に見れば地方の酒造会社は緩やかながら成長してきた。長い目で見ると、人口が減っており、若い世代のアルコール離れも進んでいる。国内での消費量は減る恐れがある。海外マーケットは広がっているものの、国内市場の縮小は加速していくので、楽観できない。昨年、輸出分は全体の1割を超えた。今後、比率を上げていく必要がある。どの産業にも言えるが同じことを続けていれば、縮小するだけだと思う。変化のスピードは速い。対応するため大きく変わっていかねばならない」

 -求める人材とは。社員一人一人はどのような努力を続けるべきか。

 「自分で考えて、物事をスタートできる人を求めたい。『リーダーシップを発揮できる人』だ。周囲を引っ張る人間が社内にどれだけいるかで、物事を成し遂げる速さが決まる。1人のリーダーと大勢の従順なスタッフより、何人ものリーダーがいる集団の方が強い。また、能力が高い人に給与で応える努力は必要だが、能力と役職は分けて考えている。役職や立場を得るためには、能力だけでなく周囲から信頼を得られる人間性が必要になる」

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 「1人目は前の会社(ユニチャーム)に勤めていた際、チーフマーケティングオフィサー(当時)だった岡部高明さんだ。強烈なリーダーシップを持つ方で、深い知識と事業家としての胆力を持ち合わせていた。自分が理想とする『リーダーシップ像』の一つのモデル的存在だ。経営判断する際は論理的に積み上げた緻密なデータがあっても、最後はトップが覚悟を決めて答えを出さなければならない。直感的な部分が必要なことを学んだ。2人目は致知出版社社長の藤尾秀昭さんだ。数年前に経営者向けの研修会で、指導してもらった。経営者は論理や数字だけを重んじることなく、よりよい人間性も必要なことに気付かされた。知識の習得と内面的な成長は車の両輪のようなもので、バランスを損なうと何かを失うことを痛感した。以前までは仕事を通じて精神的な苦しさを感じることも多かったが、心の置き所が少し分かるようになった。周囲への接し方も、何を大切にすればいいか、分かるようになった。当然、まだまだとは思うが」

 ★小嶋健市郎氏(こじま・けんいちろう) 慶応大総合政策学部を卒業後、2004年にユニ・チャームに入社。米国の貿易会社に勤務し、11年から小嶋総本店に入った。専務を経て15年10月に社長就任。米沢市出身。39歳。

 ★小嶋総本店 上杉家が米沢に入部する4年前の1597(慶長2)年に創業した。米沢の地域性を尊重した酒造りを目指しており、主力銘柄「東光」のほか、特約店限定酒の「洌」がある。社員数29人。資本金2千万円。米沢市大町2丁目に酒造りの歴史などを紹介する「東光の酒蔵」もある。本社所在地は米沢市本町2の2の3。

【私と新聞】地元企業の動きをチェック
 朝と決めず、空いている時間に紙面に目を通すのが小嶋健市郎社長のスタイルだ。地方紙、全国紙共にスマートフォンのアプリを通じて読むことが多い。朝礼などで「朝刊にこんな記事がありました」と社員に紹介されてから読む場合もある。特に地元企業の動きは細かくチェックする。新たな取り組みを伝える記事など「知っておかなければ失礼になるニュースもあるので」。

 山形大工学部など、地元の仲間が全国でも先進的な事業を展開しているニュースに接すると、頼もしさを感じる。自社は食分野の伝統産業を手掛ける企業であり、「食」に関して共通する事業者の記事を見ると「自分にどう置き換えることができるかを考える」という。

【週刊経済ワード】コメ生産量の目安
 各道府県や産地がその年の需要に見合うよう自主的に決めるコメの生産量。国が2018年産から生産調整(減反)を廃止して生産数量目標の割り当てをなくしたのに代わって、自治体やJAによる協議会などが設定している。米価が下落しないよう過剰な生産を抑える役割を果たしているが、一方で、産地や農家の生産の自由度を向上させようとした減反廃止の趣旨にそぐわないとの指摘もある。
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