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天童ホテル社長
押野茂氏
押野茂氏
【インタビュー】
 -業界、自社の現状は。

 「天童温泉は観光客の延べ人数が平成初期の130万人から減少し、現在は70万人程度。国内が減る一方、インバウンド(海外からの旅行)が増えつつある。インバウンドはここ数年で5倍ほど増えた。山形、庄内両空港のチャーター便が大きい。天童ホテルも同様の状況だ。1部屋に少人数で宿泊する流れになり、夕食は外で取りたいというニーズも出てきている。業界としては人手が少なくなっているのも課題だ」

 -現状を踏まえ、力を入れている取り組みは。

 「インバウンドでは仙台との定期便が復活したタイの旅行者も取り込みたいと考えている。海外客をもっと呼び込んで、国内の減少分を補うか超えていきたい。少人数の宿泊への対応としては、ダイニングで夕食を取ってもらう流れをつくり、1人の従業員が対応できる人数を増やした。部屋での夕食よりも素早く対応できるので、サービスの質も向上したと思う。料理にはプライドを持って提供していくし、客室整備の必要もあるが、1泊朝食付きで夕食は外で取ってもらうというスタイルも考える必要がある。温泉街は食事ができる店が増えており、屋台村もオープンする。人件費などを考えれば自社の利益は出るし、温泉街全体の売り上げも上がる。細かい部分から生産性の向上にも取り組んでいる」

 -求める人材は。

 「宿泊客の要望を先回りしてくみとって対応できる人。例えば、お客さまが左利きだということに気付いて食べやすいように気を配り、2品目から料理などの配置を変えるスタッフもいる。細やかに気付いてくれるスタッフがほしい。少子化に加えて競合する業界が増え、毎年新卒採用を続けているものの人材確保は年々厳しくなっている。入社時にキャリアアップの流れが分かるようにするなど、人事考課の制度も見直していきたい」

 -自身が仕事上で影響を受けた人物は。

 「父(会長の宏さん)。判断力、時代の先を読む力が参考になる。結婚式場のアンジェリーナも婚礼ニーズの増加を見越し、県内初のゲストハウスウェディングをと先を読んで投資した。他に参考にしているのは、天童温泉を含めて、近い世代の旅館経営者の動きだ」

 ★押野茂氏(おしの・しげる) 東京大農学部獣医学科卒。都内の動物病院で勤務した後、東京YMCA国際ホテル専門学校で経営を学ぶ。都内のホテル勤務を経て2012年、天童ホテルに入社。取締役社長室長、専務を経て15年から社長。天童市出身。41歳。

 ★天童ホテル 1911(明治44)年、小関館として創業。58年に株式会社化。80年、天童ホテルに商号を変更した。2003年にアンジェリーナをオープン。客室数114。社員数約170人。資本金4400万円。本社は天童市鎌田本町2の1の3。

【私と新聞】営業に活用、話題に
 押野社長は社会全体の動きに加え、地域版にしっかり目を通す。「県内の動きを詳しく知ることができ、営業に活用したり、話題にしたりしやすい」からだ。新聞で知人の活躍を目にし、モチベーションアップにつなげることもある。

 記憶に残るのは、将棋の同時対局数世界一に挑んだイベントの記事。天童青年会議所が主催し、担当が押野社長だった。結局、新記録には届かなかった。本紙は一連の動きを取り上げたが、特に印象深いのが数日後の記者コラムという。

 コラムは、周囲の冷めた声を次第にのみ込んでいった若者の熱意に触れ、「記録の達成以上の価値を感じた」と結んだ。「記録達成を目指しつつ、『まちづくりに市民を巻き込む』ことが本当の目的だった。そこを見てくれていたことがうれしかった」と振り返る。

【週刊経済ワード】人手不足問題
 少子高齢化による労働人口の減少で、企業が必要な人員を確保できないケースが増加している問題。都市部を中心にアルバイト・パート募集時の平均時給も右肩上がりで、人件費の増加が小売りや外食産業の経営を圧迫している。企業は営業時間の見直しやセルフレジの導入などの省人化に努める一方、国は外国人労働力の受け入れ拡大も進めている。
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