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慶応大先端生命科学研究所長
冨田勝氏
冨田勝氏
【インタビュー】
 -産業界の現状を踏まえた研究所の取り組みは。

 「少子高齢化による人口減少が進む中で、わが国における数少ない成長分野の一つが健康科学。医学は病気を治す・防ぐことが目的だが、それに加えて健康科学は病気でない人や元気な人をもっと元気にするのが目的だ。QOL(生活の質)向上につながる重要な要素で、人類全体の大きな関心事。先端研(慶応大先端生命科学研究所)が取り組んでいる腸内環境や、メンタル面での健康の研究はその一つだ」

 -研究に求められる人材は。

 「新しいことに誰よりも早く挑戦する意識が必要。アンテナを高く張り、流行や権威に迎合せず、人と違うことに挑戦する勇気と気概を持った人が求められる。また研究は試行錯誤の繰り返しであり、ゴールそのものを変える柔軟性も大切」

 -必要な能力は、どう育てられるのか。

 「みんなと同じことを言われた通りきちんとする人を優等生と呼び、美徳と思われがちだが、これからは人と違うことをする人がもっと必要だ。日本経済はかつて追い風を受け、立っているだけでも前に進む状態だったが、今は向かい風の中にいる。転ぶかもしれないけれど、走らなければ前に進めない。そのためには好きなこと、得意なことを伸ばす教育が必要で、若い人たちに勉強することの楽しさを伝えなければならない。日本を変える鍵がそこにある」

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 「学生たちから教わるものが多い。例えば(先端研発のベンチャー企業スパイバーの代表執行役)関山和秀氏が学生時代に人工クモ糸作りに挑戦すると言った時、航空宇宙局(NASA)でもできなかった技術として、誰もが不可能だと思った。それでも『できないかもしれないけど、できるかもしれない。チャレンジしない理由がない』と決心を変えず、技術開発につなげた。こうした姿に触れることで、私自身の信念も固まっていった。先端研にはそんな若者が多く、飲み会では人生論を交わすなど『意識高い系』になるのだが、それがまた楽しい」

 ★冨田勝氏(とみた・まさる) 慶応大工学部を卒業後、米カーネギーメロン大大学院博士課程修了。1990年に慶応大環境情報学部の助教授に就任し、教授、学部長を歴任。2001年から現職。バイオベンチャー6社を創業支援。専門は生命科学と情報科学。東京都出身。61歳。

 ★慶応大先端生命科学研究所 慶応大の研究機関として2001年開設。代謝物質の解析技術による研究で数々の成果を挙げ、14年に山新3P賞受賞。常駐勤務の研究・事務スタッフは約100人で学生30~40人が常時学ぶ。スタッフは適宜、公募している。キャンパスセンターは鶴岡市馬場町14の1、バイオラボ棟は同市大宝寺日本国403の1。

【私と新聞】多様な意見に触れる
 普段はインターネットを通して新聞を読むことが多いという冨田勝所長。社説や論説を通してさまざまな意見に触れることができるのが魅力とし、「外交問題では、冷静に双方の主張を紹介し、国民一人一人に国際社会における日本の在り方を考えさせることも新聞の大きな役割」と指摘する。

 世界情勢から地域の話題まで幅広い情報が詰め込まれていることも、新聞の特色に挙げる。特に先端研がある庄内地方のニュースには目を通すようにしているという。「日本人は地方の自然、文化の価値にまだまだ気付いていない。通勤のしやすさなどワークライフバランスの点でも、地方には東京と比べものにならない良さがあるし、欧米先進国の研究機関の多くは自然豊かな地方にある。東京にこだわるのは逆に時代遅れという流れをつくってほしい」と求めた。

【週刊経済ワード】燃料電池車(FCV)
 タンクに詰めた水素を酸素と反応させて発電し走行する車。二酸化炭素(CO2)や有害ガスを排出しない。日本メーカーではトヨタ自動車とホンダが乗用車を展開している。ただ電気自動車(EV)と比べて車両価格が高いことや、水素を補給する「水素ステーション」の整備が進んでいないことなどから普及していない。
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