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JAさがえ西村山組合長
柴田清志氏
柴田清志氏
【インタビュー】
 -農業の現状を踏まえ、地域のJAとしての取り組みは。

 「政府が求める農協改革の中で、取り巻く環境は厳しくなっている。そうした中、JA単体としても農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域活性化の3本柱を実現するため自己改革を進めながら全力で取り組んでいる。今、農業をやっている人たちの主力は戦後の団塊の世代だが、この世代が高齢化してやめてしまうと農業者が一気にいなくなってしまう。若い担い手や新規就農者の確保が急務だ。当JAは3年前、子会社の『さがえ西村山ジェイエイファーム』を立ち上げ、サクランボやラ・フランス、野菜、コメなどを自ら生産、販売している。同時に、農業に関心のある若者などを研修生として受け入れ、将来の担い手育成にもつなげている。組合員あってのJA。職員は組合員と同じ目線に立ち、直接現場の声を吸い上げるという基本的な姿勢に立ち返ることが必要だ」

 -どのような人材を求め、育成しているか。

 「かつて『おらが農協』と言われ、職員と組合員の深い付き合いがあったが、今の若い世代は農業者とのつながりがだんだん希薄になってきている。組合員の中には若い人と話したがっている人も多い。職員はもっと地域に入り、組合員と膝を交えて対話し、さまざまな声に耳を傾ける力を養っていかなければならない。すべての職員は、地域に密着した営業マンに徹するべきだと考えている。6年ほど前から、職員が月1回、組合員の全戸訪問を行っているのも、そうした人材を育成する狙いがある」

 -仕事上で影響を受けた人物とその教えは。

 「初めて当JAの役員になった1995年当時の菊地真組合長から多くのことを教えていただいた。前年に合併し、広域農協として誕生したばかり。初代組合長として日本一の組合になることを掲げ奮闘していたその姿から『組合員あってのJA』『現場主義』というJAの在り方を学んだ。菊地組合長から当時、『せっかく役員になったのだから、地域に何か残せるよう頑張れ』と言われたことをはっきり覚えている。菊地組合長はよく1人で支所を回り、職員と対話していた。自分も時間があるときは支所を訪ねて職員と話す機会を意識的につくっているが、そうした心構えは菊地組合長の影響だと思っている」

 ★柴田清志氏(しばた・きよし) 村山農業高卒。卒業後すぐに家業を継いで就農。1995年にJAさがえ西村山理事となり、副組合長を経て2016年5月から代表理事組合長。県農協政治連盟会長、全国農業者農政運動組織連盟副会長なども務める。河北町出身。69歳。

 ★JAさがえ西村山 1994年、西村山1市4町の5JAが合併して誕生した県内初の広域JA。2017年度の受託販売品取扱高は84億8354万円。総資産は1317億5千万円。組合員数は1万7325人、役職員数は計524人(今年3月1日現在)。本所所在地は寒河江市中央工業団地75。

【私と新聞】内外の動き、じっくり理解
 柴田清志組合長は長年にわたる山形新聞の愛読者。朝仕事の前後に新聞を読むのが日課となっている。まずはおくやみ欄に目を通し、その後、1面から順に紙面をめくる。朝礼のあいさつのネタを、その日の紙面から得ることも多い。

 農業関係はもちろん政治の動きも大きな関心事だといい、「県内外の動向をいち早くキャッチし、中身をじっくり理解するには新聞が一番」。

 県内外のJAのさまざまな取り組みなどを知るのにも新聞を活用している。「地方紙は地道な活動や細かい動きも丹念に取材し取り上げてくれるのでとても参考になる」。視点を変えれば、新聞は自分たちの取り組みを外部に発信するための重要な手段にもなり得るとし、「今後も新聞を通して積極的に情報発信に努めたい」と語った。

【週刊経済ワード】水産改革
 漁業を成長産業とするために政府が推進する改革。6月に方針を決定した。企業などの新規参入を促すため、漁業権を地元の漁協や漁業者に優先的に割り当てる漁業法の規定廃止や水産資源を回復させるための資源管理強化を盛り込んだ。ナマコなどの密漁対策も進める。水産庁は水産改革で影響を受ける漁業者の支援などの経費を見込み、2019年度予算の概算要求額を18年度当初比1.7倍の3003億円としている。
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