NIBフロントライン

庄交コーポレーション社長
国井英夫氏
国井英夫氏
【インタビュー】
 -業界の現状と自社の取り組みは。

 「庄交グループは事業領域が広く、バス、ハイヤーを含めた総合サービス業と位置付けている。お客さまに利用していただけるよう、メンテナンスのための設備投資を常に求められる装置産業だ。ホテルであれば、家庭より水準が落ちる環境、サービスであってはならない。金融業界での経験を生かし、施設を特別目的会社に売却して資産を流動化する形で、東京第一ホテル鶴岡などの大規模改修を行った。人口減少が進む今、地域経済の活性化に寄与するためには、インバウンド(海外からの旅行)推進の事業を軸に将来像を描くことが必然的と捉えている」

 -求める人材は。

 「お客さまに満足していただけるサービス提供が一番の仕事であるため、心配りにたけ、誠実な対応ができる人材が求められる。常に一歩先を考え、行動する積極性も重要だ。今後、海外からの個人客らが年間何十万人も庄内に訪れることを想定しなければならない。ショッピングモールも観光事業を担うことを意識し、十分なおもてなしができるように、グループ全体で社交的な社員を増やすことが必要だと考えている」

 -必要な能力をいかに育てるか。

 「マネジメントなどの研修を積極的に取り入れ、スキルアップを図っている。各事業部の営業職を本部に集中させており、職務を1、2年こなして能力が高まれば、現場の社員と入れ替えることを繰り返すことでリーダーを育てている。一定のレベルまでどうやって上げるかは、頭も体力も非常に使う問題だ。能力に合ったポストに充てることは重要だが、個人の気質も見極めなければならない」

 -仕事上で影響を受けた人物と言葉は。

 「荘内銀行頭取だった町田睿(さとる)さん(故人)に20年以上、薫陶を受けた。バランス感覚のある人材育成の要諦は『知識』『情報』『意欲』で、変化が激しい時代には特に意欲を喚起させることが重要と教わった。町田さんは行員の仕事に対する意欲を引き出し、前向きに提案ができる環境をつくっていた。企業文化を変えるには10年かかると言われたが、庄交グループにはだいぶ意欲的な社員が育ってきたと思っている」

 ★国井英夫氏(くにい・ひでお) 明治大農学部を卒業後、1974(昭和49)年に荘内銀行に入行した。常務企画部長、代表取締役専務執行役員を経て2008年6月に頭取。16年6月に退任し、庄交コーポレーション社長に就いた。庄内町出身。68歳。

 ★庄交コーポレーション 庄内交通、庄交ハイヤーなどと構成する庄交グループの統括企業で、2003年創業。ホテル、観光物産館、旅行、ショッピングモールなど11の事業部がある。資本金2億7千万円。従業員数は667人、グループ全体では1008人。本社所在地は鶴岡市錦町2の60。

【私と新聞】事業に役立つ要素が多い
 毎朝4時半に起き、新聞を読んでから出社するという国井英夫社長。まず目を通すのは経済面で、企業トップへのインタビュー、商品開発の話題は特に関心を持って読んでいるという。

 地域面も見逃さない。魅力ある観光地、土産物など事業に役立つ要素がふんだんに載っている。特に地元・庄内の情報把握は不可欠とし、「お客さまが知っていることを知らなかったら恥をかく」。どの地域でどんな行事に参加できるのか、丹念に知識を得ることはインバウンド推進にも関わり、新聞を読むことを社員に常日ごろ推奨している。

 この夏に読んだ記事が印象に残っている。長井市のダム湖「ながい百秋湖」で水陸両用バスの試験運行が行われた話題。「きれいな渓谷がある所なので、旅行商品に組み入れたら売れるんじゃないか」。「仕事が趣味」というだけに、着眼点は本業につながっている。

【週刊経済ワード】日欧EPA
 日本と欧州連合(EU)が今年7月に署名した経済連携協定(EPA)。物品関税の撤廃や引き下げなどによって貿易や投資を活発化させ、雇用創出や経済成長につなげることを目指す。日本側はチーズや牛肉、豚肉といった品目の関税引き下げなどに応じる。年内に双方の諸手続きが終われば来年2月1日に発効する。現在、価格の15%か1リットル当たり125円が課されている欧州産ワインの輸入関税は発効によって即時撤廃される。
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