NIBフロントライン

渋谷建設社長
渋谷豪氏
渋谷豪氏
【インタビュー】
 -業界の現状を踏まえ、求める人材は。

 「当社の仕事のメインは古くから公共工事で、県民の皆さんの暮らしやすさ、生活の安全安心を第一に考えてきた。最近は業務のロボット化が進んでいる。例えば測量にドローンを使い、撮影した画像をコンピューターで解析・3D化して地形と設計図を組み合わせる。重機は送られたデータに沿って自動で土を盛ったり掘削したりする。大手ゼネコンと同様、山形でも最新の技術を用いて仕事をしている。一緒に働く上で重視しているのは、ものづくりへの情熱を持っているか、そして仕事へのやりがいを感じられるかだ。情熱があれば、知識をどんどん吸収するし、創意工夫、アイデアが生まれる。近年は人材不足が顕著になっている。県立産業技術短期大学校に昨年設置された土木エンジニアリング科には、即戦力となる技術者の育成・供給を期待している」

 -求める能力、スキルは。またどのような努力をするべきか。

 「一番は資格だ。土木施工管理、管工事施工管理、舗装施工管理などさまざまあり、当社の技術者は複数の資格を保有している。例えば土木施工管理技士の1級の受験資格を得るには学校を卒業した後、一定年数の実務経験が必要だ。働きながら学び続ける姿勢と向上心が求められる」

 -仕事上、最も影響を受けた人物は。

 「祖父の先代会長(司氏)だ。幼い頃、土日になるとにぎり飯を持って一緒に現場に行き、仕事を一つ一つ説明してくれた。仕事にとても厳しい人だったが、『これでひと息付けろ』と現場にサバ缶と酒を差し入れするような優しさがあった。社訓の一つに『“こそ”を忘れるな』がある。前田製管の創業者・前田巌氏から祖父が贈られた言葉で、『こそ』は『私こそ』と自分に付けるのではなく『県民の皆さまがいればこそ、社員がいればこそ、社業は成り立つ』という報恩感謝の精神を表している。社員が100人いれば、その家族、協力企業を含め会社に関わる人は千人を超す。大学入学前、父(忠昌会長)に『会社を継ぐのか』『千人の生活を保障できるか』と問われた。その言葉を胸に、大学では学問と社会勉強に励んだ。今も社員にいかに利益を還元していくかを大切にしている」

 ★渋谷豪氏(しぶや・ごう) 法政大経済学部卒。準大手ゼネコンのフジタに2年間勤務した後、1994年に渋谷建設に入社。翌年、取締役に就き、常務、専務を経て2011年より現職。4代目社長。山形市出身。49歳。

 ★渋谷建設 1910(明治43)年に創業し、48(昭和23)年、会社を設立。公共土木工事の施工を主とする総合建設業者として西蔵王有料道路、国道13号山形バイパス、蔵王ゴルフ場コース、山形空港など県内の主要工事を手掛け、本県の社会基盤整備に携わってきた。資本金は5千万円。従業員数は111人。県内と仙台市に八つの支店・営業所・作業所、二つのプラントを構える。本社所在地は山形市東青田5の1の5。

【私と新聞】広告で会社の思い伝える
 渋谷豪社長は毎日、社会面、経済面をチェックし、国内外の政治動向も確認する。新聞だけでなく、インターネットも活用し、情報を収集。同じニュースでも媒体が違えば伝え方も変わるためで「複数の情報に触れることで考えが偏らないようにしている」。

 共有すべきだと考えた記事は社員にメールで配信。安全に関わる労災事故の記事などは現場まで伝わるように気を配る。

 入社以来、本紙掲載の広告制作を担当している。「単なる作品集にならないように」と最上川の風景を取り上げた忠昌会長に続き、山形に生息する魚や鳥のシリーズを手掛けてきた。生命感あふれるイラストには、祖父・司氏の言葉「建設者は地球の芸術家たることを感銘すべし」から取った「EARTH IS ART.」のコピーが毎回添えられている。「自然と産業の調和を目指す会社の思いと姿勢が皆さんに伝われば」と語った。

【週刊経済ワード】経済連携協定(EPA)
 工業製品や食品の輸入にかかる関税を互いに撤廃・削減するほか、知的財産保護などの経済活動に必要な共通ルールを定める協定。貿易や投資を活発にする効果がある。2カ国間だけでなく、多国間で同時に結ぶ場合もある。自由貿易協定(FTA)と似た意味だが、EPAは関税以外の幅広い分野にわたる協定を指すことが多い。日本と欧州連合(EU)は17日にEPAに署名した。ほかにメキシコやシンガポールなど計15カ国・地域とのEPAが発効している。
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