ここが見どころ[7・完]

2023/10/4 08:53

【ともにある CinemawithUs】今、何を分かち合えるか

「ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ―」の一場面©Komori Haruka+Radio Shimo-Kajiro

 東日本大震災から12年目。“ひとまわり”した実感を抱かざるを得ない数字。日本の人口の1割は震災後に生まれた人々となり、あのことをリアルに知らない人たちと映画を通じて何を分かち合えるのか…。今回7回目となる「ともにある Cinema with Us」に際して立てた問いである。

 上映する3作品は、いずれも何かを語り伝えようとするものだが、語られる出来事の時間は異なる。地震の直後、ひとまわりしても終わったとは言えない12年間、そして、はるか昔の思い出。しかし、すべては今につながる。

 2011年の映画祭から再びの上映となる「なみのおと」(監督=酒井耕、濱口竜介、142分)は、津波被害を受けた宮城県沿岸部をたどり、家族や仕事仲間など2人の対話を紡いでいく。新作を取り上げるのが映画祭の常だが、100年後を願って作られた本作を今一度見直したいと思い、取り上げる。

 そして「津島―福島は語る・第二章―」(監督=土井敏邦、193分)は、東京電力福島第1原子力発電所の事故により、全域避難となった浪江町津島地区の人々の証言集。故郷を追われるということは、いかなることなのかを考えざるを得ない。

 最後に「ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ―」(監督=小森はるか、70分)では、復興住宅のお年寄りたちの人生を思い出の歌とともに振り返る。被災者と呼ばれる人々にも当たり前にそれ以前の人生があり、また新たな出会いがあるのだ。

(ともにある Cinema with Usコーディネーター/せんだいメディテーク学芸員・小川直人)

【日本プログラム】普遍的な生の輝きを見る

「キャメラを持った男たち―関東大震災を撮る―」の一場面(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

 多角的な視点で現代日本を捉えたドキュメンタリー映画を紹介する「日本プログラム」。上映される5本の作品には、絶えず変わりゆく社会の中で、消えゆくもの、守り続けるべきもの、芽生えつつあるものについて、私たち観客に考えさせるような力がある。

 関東大震災から100年。災禍の中であえてフィルムを回すことを選択したカメラマンを追った「キャメラを持った男たち―関東大震災を撮る―」(監督=井上実、81分)。陸上自衛隊の演習場のただ中で、牛の放牧を夢見て生きる一家をユーモアも交えながら描く「日本原―牛と人の大地」(監督=黒部俊介、110分)。浪曲の世界に挑む女性を主人公にして、芸道に生きる人々の伝統と継承のドラマが展開する「絶唱浪曲ストーリー」(監督=川上アチカ、111分)。20年にもわたる、統合失調症の姉とその家族の葛藤を切実なものとして記録した「どうすればよかったか?」(監督=藤野知明、102分)。大都市の中にひっそりと息づくモチーフを集めていくことによって、一枚の絵が完成するまでをつづる「Oasis」(監督=大川景子、56分)。

 息苦しい生活や環境から逃れたいと思うこともあるだろう。それでもなお、いまここで生きることに向き合おうする映画の中に、私たちは、どのような時代にあっても変わることのない、人間の尊厳や生の輝きを見いだすことができるのではないだろうか。

(日本プログラムコーディネーター・土田環)

上映日程

 【ともにある】

 ▽なみのおと=6日午後7時半(フォーラム山形)

 ▽津島―福島は語る・第二章―=8日午後0時5分(市民会館)

 ▽ラジオ下神白=6日午後5時20分(フォーラム山形)7日午後6時半(野外上映・やまぎん県民ホールイベント広場)

 【日本プログラム】※場所は全てフォーラム山形

 ▽キャメラを持った男たち=6日午後8時10分

 ▽日本原―牛と人の大地=9日午後7時40分

 ▽絶唱浪曲ストーリー=10日午前10時

 ▽どうすればよかったか?=8日午後8時

 ▽Oasis=7日午後9時

山形国際ドキュメンタリー映画祭

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