ここが見どころ[6]

2023/10/3 11:10

野田真吉特集・モノと生の祝祭

「東北のまつり・第三部」(1957年)=画像協力・国立映画アーカイブ

 野田真吉(1913~93年)は、1937(昭和12)年から東宝の文化映画部の仕事に携わり、戦後はフリーで教材映画やPR映画、実験映像、民俗映画などを演出した人物。詩人としての顔もあり(中原中也らに師事)、映画批評も数多く執筆している。

 こうした野田の多方面に広がる活動を回顧する上で、特集の副題を「モノと生の祝祭」に定めた。近代以降にわれわれが身に付けた人間中心の考え方に違和感を抱き、人々の生活を囲むモノ、あるいは自然環境の中で形作られた民衆文化に、一貫して野田が注目したことを強調している。

 実は野田がこうした視点を得た場所が、他ならぬ東北地方なのだ。愛媛県八幡浜市で生まれた野田は、戦時中に「農村住宅改善」(41年)の撮影で東北に滞在。厳しい自然とその暮らしの中で使われた道具や建物などのモノに惹(ひ)かれていく。戦後も東北電力のPR映画「東北のまつり」3部作(56~57年)などで、農山漁村の祭りを記録した。青森県下北半島の困窮する集落を取材した「忘れられた土地」(58年)も重要な映画である。

 後年の野田が民俗芸能に深い関心を寄せる原点が、東北で撮影した映画にあったことは間違いない。そして、近代化の波が自然に密着した生活文化を破壊し、暮らしを支えたモノの記憶を失わせていく状況に、批判のまなざしを向けていった。野田真吉のドキュメンタリーが形作られた地である東北、山形のスクリーンでその映画をよみがえらせる意義は大きい。特集は国立映画アーカイブと共催、ニュープリントによる上映も含まれる。(野田真吉特集コーディネーター・田中晋平)

Double Shadows/二重の影3-映画を運ぶ人々

「映画砦の仲間たち」の一場面(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

 どの国や地域にも映画を愛してやまない人々、その土地に根差した映画や映像の文化がある。2015年、19年の映画祭に続いて3回目となる本特集では、映画を私たちに届けようとする情熱や、その伝わり方が織りなす人間のドラマに焦点を当てた、アメリカ、イラン、フランスなど、世界各地のドキュメンタリー作品8本を紹介する。

 その中でも注目すべき作品は、山形駅前の巨大な野外スクリーンで上映が予定されている「映画砦(とりで)の仲間たち」(監督=キム・ホプキンス、94分)だ。本作の舞台となるイギリス北部の工業都市ブラッドフォードは、17年に加盟認定された山形市に先駆けて、09年に世界で初めてユネスコ(国連教育科学文化機関)により創造都市(映画分野)の認定を受けている。

 自主制作、自主上映の盛んなこの町で、最も古いアマチュア映画サークルに集う人々。毎週月曜日には皆が紅茶を片手にして映画談議に花を咲かせている。だが、高齢化により会員数は減少し、自分たちの「砦」となっているクラブを維持することも財政的に厳しくなる中で、パンデミックが襲いかかる。

 これは、いまやブラッドフォードだけの話でも、映画だけの話でもないだろう。映画そのものを巡るドキュメンタリー映画は、その国や地域の社会的な課題やゆがみをも映し出すことになる。二つの「映画」が重なることによって、私たちの世界がつながって見えてくる。(Double Shadows/二重の影3―映画を運ぶ人々コーディネーター・土田環)

 ◇上映日程

 【野田真吉特集

 ▽プログラム1 農村住宅改善、東北のまつり第一~三部、忘れられた土地=6日午後0時15分

 その他プログラム2~12を6~10日の期間で上映

※場所は全て市民会館

 【二重の影3

 ▽映画砦の仲間たち=8日午後6時半(野外上映・やまぎん県民ホールイベント広場)

 ▽快楽機械の設計図(ブループリント)、声なき証人=6日午後5時10分

 ▽若き映画=6日午後7時20分

 ▽これからご覧になる映画は、イーストウッド=7日午後7時10分

 ▽キムズ・ビデオ=9日午前10時

 ▽シンシンドゥルンカラッツ=10日午後3時半

※「映画砦―」を除き、場所は市民会館

山形国際ドキュメンタリー映画祭

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