ここが見どころ[2] インターナショナル・コンペ部門(中)

2023/9/28 23:00
「交差する声」の一場面(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

 【交差する声】(監督=ラファエル・グリゼイ、ブーバ・トゥーレ、123分) 1977年、出稼ぎ先のフランスで非人道的な仕事と劣悪な居住環境を強いられていたマリ人移民労働者らは、農業で生計を立てることを決意し、母国へ戻って農業共同体「ソマンキディ・クラ」を設立する。荒地を開墾して川から水を引き作物を育てる過程から、現代まで続く差別や非正規労働、グローバル企業による搾取の問題などを、ソマンキディ・クラ設立者で監督の一人であるブーバ・トゥーレが記録した膨大な写真とビデオ、そして豊富な音源を駆使してつづる。アフリカ農業の近現代史を当事者の一人が語る貴重な記録として見逃せない作品だ。

「自画像:47KM 2020」の一場面(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

 【自画像:47KM 2020】(監督=章梦奇、190分) 監督が「47KM」と呼ぶ中国山間部の村を舞台とした「自画像」シリーズの10作目は、コロナ禍が始まった2020年の村の1年を丹念に追う。子どもたちと監督が楽しげに交流する姿はおなじみだが、村の行事や農作業の様子がとりわけ新鮮に映る。苗作りから田植え、稲刈りと天日干し…そうした一連の作業をじっくりと撮影し、コロナ禍でも村の暮らしは変わらずに続いていることを伝えてくれる。カメラに向ける村人の表情がみな笑顔なのは、監督が村の一員として溶け込んでいるからだろう。観(み)ているだけで幸福感に包まれる190分をぜひ体感してほしい。

 【不安定な対象 2】(監督=ダニエル・アイゼンバーグ、204分) ドイツの義肢、フランスの高級革手袋、トルコのジーンズの製造過程をナレーションや字幕もなく映像だけで描いた作品。広い工場で量産される義肢は単純作業と職人技に分けられ、最終的には顧客が実装して確認する。それに対して革手袋は、女性が中心の小さな工房で年代物の機械を使い、一つ一つ手作業で仕上げられる。近代的な設備の工場で作られるダメージジーンズは、裁断から縫製、ダメージングなどに分業され、早送りでもしているかのようなスピードで単純作業が続く。三者三様のものづくりの現場から労働環境や消費との関係に思いが及ぶ。

 【訪問、秘密の庭】(監督=イレーネ・M・ボレゴ、65分) 1950年代にスペインの現代画家として活躍したイサベル・サンタロは、80年台以降、芸術の表舞台から姿を消し、作品も名前も残されていない。今は猫と一緒にひっそりと暮らす彼女をめいである監督が訪ね、なぜ芸術活動をやめたのかと挑発的な口調で追及する。芸術家を目指して家族から疎まれたイサベルにとってその質問は耐えがたく沈黙を続けるが、やがて芸術家としての生きざまを渾身(こんしん)の声で語り出す。それは同じく芸術を志すめいへのはなむけだったのかもしれない。アトリエで今も創作を続けるイサベルの姿に、美の求道者としての尊厳を感じる。

 【ホワット・アバウト・チャイナ?】(監督=トリン・T・ミンハ、135分) 1993~94年に中国の農村部で撮影したビデオ映像を、監督自身が再構築したコラージュ的な作品。客家の伝統的な円形集合住宅や古い建物が立ち並ぶ村で暮らす庶民の日常生活を軸とし、そこに古代の詩や歌、水墨画、日記や詩の朗読を加え、現代の視点による哲学的な問いを複数の声で重ねていく。背後に流れる民族音楽(民謡)は過去の映像と響き合い、現代へ導いているようだ。素朴な時代からわずか30年間ですっかり変容した中国社会を、懐古ではなく問い直していると感じたが、それを肯定的にとるか批判的にみるかの判断は観客に委ねられている。(庄内ドキュメンタリー映画友の会・飯野昭司)

 ◇上映日程

 ▽交差する声=7日午前10時10分(市中央公民館)8日午後3時40分(市民会館)

 ▽自画像:47KM 2020=8日午後4時5分(市中央公民館)9日午前10時15分(市民会館)

 ▽不安定な対象 2=6日午前10時10分(市中央公民館)7日午後4時半(市民会館)

 ▽訪問、秘密の庭=6日午後3時5分(市中央公民館)8日午後1時25分(市民会館)

 ▽ホワット・アバウト・チャイナ?=6日午後5時40分(市中央公民館)7日午後1時5分(市民会館)

山形国際ドキュメンタリー映画祭

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