ここが見どころ[1] インターナショナル・コンペ部門(上)

2023/9/27 23:00

 山形国際ドキュメンタリー映画祭2023が10月5~12日、山形市で4年ぶりに会場開催される。今年は、メインのインターナショナル・コンペティション、アジア千波万波の両部門に合わせて2千本を超える応募があった。両部門のノミネート作品をはじめ、特集プログラムなどの見どころをコーディネーターらが紹介する。

「東部戦線」の一場面(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

 【東部戦線】(監督=ビタリー・マンスキー、イェウヘン・ティタレンコ、98分) 「ワイルド・ワイルド・ビーチ」「祖国か死か」などで山形でもおなじみのマンスキーの新作は、若き映像作家ティタレンコと組んで、侵攻直後からのウクライナの様子を生々しく伝える作品だ。負傷し搬送される兵士、焼け崩れた建物、そして前線での戦闘が映し出される。それは、田園地帯における兵士たちのつかの間の休息をも捉える。子どもの洗礼や河辺でのくつろぎ、家族との食事の席での対話を通じ、ウクライナの人々の思いが語られる。色彩豊かな日常とカーキ色にくすむ戦場の対比。今まさに見るべきウクライナの現実がそこにある。

 【三人の女たち】(監督=マキシム・メルニク、85分) 同じウクライナでも、本作の舞台は、スロバキアとポーランドに接する山岳地帯カルパチアの村だ。年金を配り歩く郵便局員のマリーヤ、国立公園で生物研究に没頭するネーリャ、1人で牛を育てながら生きるハンナという3人の女性を、若い映画作家たちが追う。彼らは村に溶け込み、ハンナからは子どものように愛されるまでになる。ゼレンスキー大統領選出から軍事侵攻直前に至るウクライナの人々の息遣いが生き生きと伝わってくる。

 【日々“hibi”AUG】(監督=前田真二郎、120分) 「日々“hibi”13 full moons」などで山形常連の前田監督作品。2008年から22年までの15年を、8月の各日15秒×31カットで切り出し、つないだ実験的作品。民主党政権誕生から、東日本大震災、自民党長期政権、コロナ禍、安倍晋三元首相の銃撃とウクライナ侵攻までが、家族の姿や音楽に作家のコメントを重ねた極私的な視点から語られる。作家自身の手術に続き、映像が何やら禅味まで漂わせかけるあたりは印象的だが、懐古趣味一歩手前で止める批評的位置取りは巧みだ。

「あの島」の一場面(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

 【あの島】(監督=ダミアン・マニベル、73分) 「若き詩人」で注目を集めたマニベルは、2019年の山形映画祭で上映された「イサドラの子どもたち」でも大きな感動を与えた。その新作は、ドキュメンタリーとフィクションの境界的作品だ。カナダの海辺で夏休みを過ごす若者たちは、モントリオールに旅立つローザとの最後の夜に興奮し、海ではしゃぎ岩陰で愛をささやく―という設定の映画を作る過程をドキュメンタリー化する設定で再現。さらにそれを稽古する場面も入れて映画を作る行為を撮影するという、二重三重の仕掛けは刺激的でワクワクする。

 【紫の家の物語】(監督=アッバース・ファーディル、184分) 「祖国―イラク零年」で知られるファーディルの新作。イスラエルのレバノン軍事侵攻の記憶を背負う画家の女性。ベイルート港の爆発事故に衝撃を受け、新型コロナによる経済停滞、ガソリンの高騰などに苦しめられながら、隣家に避難してきたシリア人の少年と交流し、猫をあやし、絵を描き続ける。丘の上の山並みの美しい夕景を見つめ、終末の予感さえ漂わせる世界にあって、変わらぬ未来の日常への想(おも)いを語る。時に芸術的な寓意(ぐうい)を織り込み、巧緻な映像によってレバノンの今が描かれる。(山形国際ドキュメンタリー映画祭理事・阿部宏慈)

 ◇上映日程

 ▽東部戦線=8日午前10時10分(市中央公民館)9日午後5時(市民会館)

 ▽三人の女たち=9日午前10時10分(市中央公民館)10日午後2時(市民会館)

 ▽日々“hibi”AUG=8日午前10時15分(市民会館)9日午後6時5分(市中央公民館)

 ▽あの島=8日午後1時20分(市中央公民館)9日午後2時35分(市民会館)

 ▽紫の家の物語=6日午前10時15分(市民会館)10日午前10時10分(市中央公民館)

山形国際ドキュメンタリー映画祭

記事・写真などの無断転載を禁じます
[PR]
おすすめニュース

県内ニュース最新一覧

[PR]