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羽黒山石段の彫り物探し~鶴岡

(2011/11/09掲載)

つえで落ち葉をよけながら彫り物を探す=鶴岡市
つえで落ち葉をよけながら彫り物を探す=鶴岡市
 夏休み。一緒に京都を旅した高校時代の友が、いそいそと旅行かばんから御朱印帳を取り出した。「何それ?」「知らねの? 今アツいのに」。早速まねをし、めぐる先々の寺社で御朱印をもらった。旅の間中、たまっていく御朱印を眺めてほくほくしたものだ。

御朱印帳と絵図、つえを持ち出発

 そんな折、羽黒山の石段に刻まれた33の彫り物を全部見つければ願い事がかなう上に賞品が当たる、という興味深い情報を手に入れた。山形で最初に御朱印をもらうなら出羽三山神社に決めていた。部屋の隅でうち捨てられたままになっていた御朱印帳を手に、鶴岡市へ。

 33の彫り物のいわれなどが書かれた絵図をもらいに、いでは文化記念館をたずねると、職員に「全然変わらねの~」と声を掛けられる。この職業に就き、初めて任された持ち場が合併前の羽黒町。取材や取材とかこつけた休憩で、ここにもよく居座っていた。懐かしい人たちの顔を見て何だかほっとする。時間が限られていたはずだったのだが、コーヒーをいただき、ついつい和む。

 33個と言わず、18個見つければ願いがかなうという話もあるらしい。5年ぶりに会った同館職員の伊藤賢一さん(39)が「おいは20個くらいは見つけたの」。何か願いがかなったか聞くと「どうだろの~」と遠い目。

 ポケットに御朱印帳と絵図を入れ、つえを片手にいざ石段へ。伊藤さんにどんな彫り物をカウントすればいいのか、感覚を教えてもらった。五重塔のあたりまで来たところで「後はうまいぐやってくれ」と言われてお別れ。独りぼっちの彫り物探しがスタートした。

 つえで落ち葉をかき分けながら進む。よく見ると絵や字が結構彫られているものだ。さすがに33に数えるのは気が引けたが、老舗しょうゆ店の屋号に似たマーク、上林だの鈴木だのの名字…。1人で下ばかり見て歩いていると、石のくぼみや傷も彫り物に見えてきた。気疲れしてきたので、二の坂茶屋で休憩する。毎日石段を上って出勤するおかみさんに、いくつ見つけたか聞かれ「てんぐと山伏と」と答えると、それは数に入らないという。本来33の彫り物として数に入れているのは、とっくりと杯、ひょうたん、そして一つのハスの花だけ…。

 気を取り直して出発する。おかみさんが「一つでも見つければ、何かいいことありますよ」と励ましてくれた。

 そこから先は結構面白いくらいに彫り物を見つけることができた。有名なとっくりと杯三つが並んでいる彫り物は、とぼけた感じに笑ってしまう。江戸時代の修行者も酒好きだったんだろうな。

「何かいいこと」確かに

出羽三山神社の御朱印(左)。2ページにわたって立派
出羽三山神社の御朱印(左)。2ページにわたって立派
 山頂の三神合祭殿でみこさんに御朱印をもらい、もう一つの目的を達成。気付けば日は傾き、次の取材の時間が迫っていた。今来た石段を転がるように駆け降り…といきたいところだが、高所恐怖症のためへっぴり腰で一段一段踏みしめるように下る。

 ほうほうの体で麓に着くと、伊藤さんが「はい、パリのおみやげ」と、おしゃれな紙袋をくれた。中身はチョコレートとパリのインスタントラーメン。出羽三山の精進料理のPRでフランスとハンガリーに出張してきたばかりだったのだ。「いい時に来たの」。懐かしい人に再会してほっこりし、思わぬお土産も手にし。33個は見つけられなかったけど、やっぱりいいことあった。

(報道部・大坪千絵)

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