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食べられる野草採取~上山

(2011/04/26掲載)

スギを避け山あい散策

眠りから覚めたフキノトウが地面から顔を出す=上山市内
眠りから覚めたフキノトウが地面から顔を出す=上山市内
 真っ白の世界は終わりを告げ、草木は芽吹き出した。無味無臭だった空気に、土のにおいをかぎ取るようになった。記録的な豪雪、厳しい冷え込みに見舞われた山形にもようやく春が到来。食にストレス解消を求める記者は、春を体で感じたいと同僚K氏に提案。4月中旬、上山市へと野草探しに繰り出した。

 食べる春といえば、やはり山菜。コシアブラのてんぷらは最高にうまい。だが、スギ花粉症歴25年の体は、無意識に山林を避ける。スギを見ただけでも鼻がむずむずする。食べられる植物を追い求めて5年のK氏は「山に入らなくても、食べられる野草はある」と豪語。市東部に車を走らせた。

 山あいの集落に入ると、K氏の目が輝いた。川沿いに車を止めると「いっぱいある」。ひたひたと歩き出した。春の七草がゆなど、旬を食べるのは大好きだが、自生しているもので見分けられるのはフキノトウぐらい。不安を感じていると、K氏はポケットから1冊の愛読書を取り出した。植物の特徴や採取法、調理方法まで書いてある図鑑だった。「これを参考に。頑張ってください」

 普段はあまり見ない土手を凝視して歩いた。茶色の土の切れ間から、ポツリポツリと緑色が。「フキノトウだ」。すでに開いたものの中に、つぼみを見つけた。先行するK氏に駆け寄り、自慢げに見せると「それ、いいっすね。きっとうまいっすよ」。

 K氏が腰に提げたバッグには、植物がぎっしりと入っていた。「これも食べられるんすよ」。フキノトウのほか、見たことがある野草が詰まっていた。「ヤブカンゾウに、ギシギシ。これは分かりますよね。ツクシ」…。図鑑と見比べると、確かに食べられると書いてある。「それ、どこにある」と聞き返した。K氏が指さした足元にヤブカンゾウが群生。「本当に食べられるのかな」。半信半疑ながら採取した。

斜面に張り付くハコベを見つけ、図鑑を手に「これは」とK氏=上山市内
斜面に張り付くハコベを見つけ、図鑑を手に「これは」とK氏=上山市内
 「もう1カ所、いいポイントがあるんすよ」。導かれるまま、里山のふもとまで足を延ばした。ここでもヤブカンゾウが群生していた。「これはノビル。うまいんだよな」とK氏。「あれっ」と図鑑を奪い返し、見比べるK氏。「やっぱり、ハコベだ」。ハイテンションだった。

 採取を始めて3時間。さまざまな野草を手に入れた。腹も減ってきた。市街地に戻り、調理をスタート。天丼で意見が一致した。念入りに水洗いした後、衣を付けて、てんぷら鍋に投入。「ジュワッ」。音を立ててからっと揚がる野草たち。にんまりとしながら見入る2人。「早く食べたい」。気がはやった。

体の中、春で満たす

 歩いた分、動物性タンパク質を体もほしがった。ウインナー、かまぼこを添えて完成。器からあふれるほどのボリューム満点の天丼に仕上がった。天つゆをかけて「いただきます」。カリッとした衣、中からしみ出す野草の汁…。口の中で広がる葉っぱの香り。かき込むようにほお張り、一気に平らげた。

 揚げ物に間違いはない-が食に関する2人の格言。共通した感想は「普通にうまい」だった。「次は、秋編もいいかもな」。満腹感に満たされながら、会話は次第に途切れがちになった。まぶたが閉じ始めた。「ちょっと寝る」。体の中を春で満たしながら1時間、熟睡した。

(報道部・田中大)

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