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宇宙へのあこがれ~山形

(2011/04/12掲載)

私的“アポロ計画”遂行

簡易な紙の筒の望遠鏡でも月(月齢12・0)はクレーターまではっきり見えた=山形市内から(望遠鏡の接眼部から接写で撮影)
簡易な紙の筒の望遠鏡でも月(月齢12・0)はクレーターまではっきり見えた=山形市内から(望遠鏡の接眼部から接写で撮影)
 中学生だった二十数年前。ポケットの小銭を鳴らし、「セルロイドは売ってますか」と近所の店を回った。おもちゃ屋で「今は人形の材料にも使われていない。卓球の球がもしかしたら…」。運動具店で真っ白な卓球ボールを2個買った。友人と2人、一度も弾ませていないボールをはさみで切り刻んだ。これをアルミ製のえんぴつキャップに詰めるのだ。セルロイドはキャップの中で激しく燃え、空へ飛び上がる。小さなロケットだ。「そんな古い遊びを…」と、おもちゃ屋に冷やかされた僕と友人は宇宙にあこがれていた。

 地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」、金星を目指した探査機「あかつき」、無人補給機の「こうのとり」。相次ぐ宇宙開発の話題に触れ、再び夜空を見上げていた。

 月を目指すのだ。“アポロ計画”は望遠鏡の購入からスタートする。ネットで調べると子ども向けの組み立て望遠鏡「コルキット スピカ」なるものが。価格は2625円。届いた箱は弁当程度の大きさ。中には食品用ラップの芯のような紙製の筒が数本と安っぽいレンズ。一抹の不安を抱き、20分ほどで完成させた。悪天候が続いた県内の夜空は、1月中はほとんど月を隠し、2月にやっと姿を見せくれた。

 2月15日、月齢12・0。夕刻から東の空に現れた月は空色の背景に白く浮かぶ。深夜、月光は暗黒に開いた穴のようにまぶしく輝いていた。望遠鏡の性能は想像をはるかに超えていた。風で飛ばされそうな紙の筒は、月の姿をしっかり閉じ込めていた。「図鑑のような月の写真が中に仕込んであった」。そう疑いたくなるほど、月は美しく、クレーターの凸凹は手で触れそうだった。

月、ISSとらえる

冬の空気は澄んでいて、夜空に輝く星々がきれいに見える=山形市内
冬の空気は澄んでいて、夜空に輝く星々がきれいに見える=山形市内
 2日後、17日付の本紙夕刊。若田光一さんが国際宇宙ステーション(ISS)の船長に決まったというニュース。第2の計画は「若田さんに続け」に決まった。ISSはタイミングが合えば県内でも目視できる。ただ、見える機会は少なく、天候も影響する。情報では2月22日午後6時20分ごろがベストだった。その日は朝から晴れた。

 夕刻、山形市西蔵王近くにカメラを据えた。偶然に居合わせた中年男性が「何ごと」と尋ねてくる。手短に説明すると、「俺も見よう」と仲間を得た。ISSの観測は初めてで、二人で何度も飛行機を見間違えた。

 南西に輝く金星の近く、同じ大きさでさらに明るい光の点が現れ、ゆっくり上ってきた。「点滅してないので飛行機じゃないですよね」。何も答えない男性に繰り返す。光は夜空を裂くように真っすぐ進み、北の方へかすんで消えた。時間にして数分。あの中に人がいると思うと胸が熱くなった。その感動は、どんな言葉を並べたらうまく伝わるのだろう。

 「感激だね」。男性はためらいもなく言い放ち、去った。宇宙のロマンが分かるだろうか。ロケットを一緒に飛ばした友は今、空を見上げているかもしれない。

(報道部・野村健太郎)

【メモ】国際宇宙ステーション(ISS) 米国、ロシア、欧州、日本などが共同で開発。日本の宇宙開発は主に宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)が手掛けている。宇宙機構のホームページ「ISSを見よう」(http://kibo.tksc.jaxa.jp/)ではISSの目視予想情報を日付や都市別に紹介している。
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