自らに降りかかった「政治とカネ」に絡む疑惑の説明を拒むなら、内閣の要としての資質を欠き、職務を遂行していくのは無理だ。噴出する政治への強い不信を少しでも拭いたいならば、速やかに実態をつまびらかにした上で、出処進退を決断するのは当然だ。
自民党派閥の政治資金パーティー問題を巡り、安倍派(清和政策研究会)に所属する松野博一官房長官が最近5年間にわたり、派閥からパーティー券の売り上げ計1千万円超のキックバック(還流)を、政治資金収支報告書に記載せずに受けていた疑惑が浮上した。
記者会見や国会で事実関係を何度問われても、松野氏は派閥で確認中、東京地検特捜部の捜査中を理由に回答を拒否、辞任する考えのないことを繰り返した。任命権者の岸田文雄首相も松野氏の更迭を否定した。こうした姿勢が政治の信頼失墜に拍車をかけており、政権発足以降、最大の危機と言える。
還流が事実なら、なぜ派閥と議員側双方の政治団体の収支報告書に記載しなかったのか、そのカネを何に使ったのか、明確に説明する必要がある。政治活動以外の私的な支出に費やしていれば、所得隠しに当たる恐れも出てこよう。
派閥パーティーでは、5派閥が収入の過少記載を刑事告発され、最大派閥の安倍派では、ノルマ以上のパーティー券を販売した所属議員への還流問題が表面化した。にもかかわらず、政権の判断は甘く、遅かった。
過少記載が発覚しても説明責任は各派閥に丸投げ。安倍派の裏金づくりが報じられても岸田首相はどこかひとごとで、松野氏も安倍派の事務総長経験者でありながら「政府の立場で答えは差し控える」と木で鼻をくくった発言を連発した。
世論の視線が厳しさを増し、首相はようやく当面のパーティーの自粛を申し合わせ、自身が派閥会長を退き、派閥を離脱する考えを表明した。
年末は2024年度予算編成や税制改正、異次元の少子化対策の財源問題など重い政策課題への取り組みが控える。疑惑を抱え、説明責任を果たそうとしない官房長官の下で乗り切るのは至難だ。パーティー自粛や派閥離脱で国民は納得しまい。最優先すべきは、カネの流れを徹底調査し、詳細な説明を尽くすことだ。
1990年代の政治改革で企業・団体献金を政党や政党支部に限定したことに伴い、派閥や政治家個人の政治団体による資金集めの大きな手段となったのがパーティーだった。通常の寄付は報告書に5万円超の寄付者の記載が義務付けられるが、パーティー券購入は20万円超のため「裏金の温床」とも指摘されてきた。
政治資金規正法は報告書の内容が正確に記載されているという「性善説」に立つ。それが大きく揺らいだ以上、規制の強化も必要だろう。裏金づくりは安倍派の不祥事と矮小(わいしょう)化するのではなく、自民党の構造問題と捉えなければならない。
パーティー禁止に踏み込むのが望ましいが、少なくともパーティー券の購入者の記載基準を「5万円超」に引き下げ、報告書の虚偽記載を厳罰化する。同時に派閥の在り方も見直す。そうでもしなければ地に落ちた信頼は取り戻せない。
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