10月からふるさと納税制度のルールが一部変更となる。寄付募集にかかる経費の範囲が拡大される一方で、返礼に関する費用は「寄付額の50%以下」とする基準は変わらない。自治体側が返礼品の価格を変えない場合は、寄付額を高く設定したり、諸経費を削減したりする工夫が求められる。
人口減少などで税収が伸びない自治体にとって、ふるさと納税は貴重な財源として定着してきた。本来の趣旨はゆかりの地などを応援することだったが、魅力的な特産品を返礼としてそろえることで、その土地をPRし、観光などで訪れてもらう交流人口の拡大にもつながっている。自治体にとっては重要な収益事業とも言えるだろう。
ふるさと納税制度は、10月から翌年9月までを一区切りに運営されており、今回のルール変更も新たな期間の始まりに合わせて行われる。寄付額が所得税や翌年の住民税から控除されるため、例年は確定申告前の年末が近づくと寄付者が多くなる。しかし、今年は制度変更に伴う設定寄付額の引き上げを見込み、9月末に向けた駆け込みが増えているようだ。
変更発表は6月27日だった。県内で寄付額がトップクラスの寒河江市によると、8月の1カ月間は約2億6千万円が寄せられ、前年同月比で3割ほど増えた。制度変更を見越した対応とみられる。
これまで経費に該当していたのは、返礼品の調達費や配送料、広報費などだった。10月からは、寄付の受領証明書の発行費や、寄付者による確定申告が不要となる事務手続きに要する経費なども含まれる。本紙が県内自治体を対象に7月に行った聞き取り調査では、困惑の声が多く聞かれた。変更によって経費が10%ほど上昇すると試算する自治体もあり、対策としてPR費用の削減などが挙がっていた。
昨年度、経費を48%台に抑えることができていたという酒田市は、残りの2%分を宣伝費に充ててPRを図ろうとしていただけに、水を差された格好だ。河北町からは「少しでも還元率を上げ、喜ばれる返礼品を渡そうと思っている自治体ほど厳しい」と胸の内を明かす。経費の上昇分を、返礼品の価格で抑えて補うことは、どの自治体も避けたいところだろう。返礼品の質を落とさないため、寄付額を引き上げるケースは増えそうだ。
新庄市からは、返礼品の見直しが事業者に影響するとの懸念も示された。寄付額が上がることで、寄付者が減る事態も招きかねず、「応援してよかった」と思ってもらえるような、寄付の使い道にも工夫が必要になってくるだろう。
鶴岡市は8月、返礼品に地元企業が製造するアマチュア無線機を加えた。寄付金額が167万円と高額にもかかわらず、募集開始1カ月で2件の申し込みがあった。新型コロナウイルス禍を機に、屋内の趣味としてアマチュア無線が再び注目を集めたことが背景にあるようだ。
こうしたニーズを的確に捉えた返礼品の設定は他の自治体にとっても参考になろう。ふるさと納税は、各地域の魅力を知ることができる見本市の側面もある。地域色を感じさせるストーリーを発信し、交流人口の拡大にもつなげたい。
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10月からふるさと納税制度のルールが一部変更となる。寄付募集にかかる経費の範囲が拡大される一方で、返礼に関する費用は「寄付額の50%以下」とする基準は変わらない。自治体側が返礼品の価格を変えない場合は、寄付額を高く設定したり、諸経費を削減したりする工夫が求められる。[全文を読む]
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