1997年の神戸連続児童殺傷など重大少年事件の記録を全国の家裁が廃棄していた問題を調査していた最高裁は、各裁判所に廃棄を促すような自らの不適切な対応が原因となったことを認め、「後世に引き継ぐべき記録を多数失わせ、深く反省する」と謝罪する調査報告書を公表した。廃棄ありきの意識は根本的に改める必要がある。
再発防止策としては、適正保存のための第三者委員会設置などを打ち出した。一定の評価に値する内容だが、肝心なのは絵に描いた餅に終わらせないことだ。
最高裁は昨年10月に問題が発覚した当初、調査はしない意向だった。それが事件被害者など世論の反発や有識者委員会の指摘を受け、方針転換した経緯がある。こうした腰の引けた姿勢は論外だ。記録は「国民の財産」と肝に銘じた上で再発防止策を確実に実行し、司法への信頼を回復させねばならない。
少年事件記録の取り扱いについて最高裁は、64年の「事件記録等保存規程」で、少年が26歳になるまで記録を保存し、史料的価値の高いものは永久保存に当たる「特別保存」とするよう各裁判所に義務付けた。
調査報告書によると、最高裁は91年ごろ、記録の保管スペース確保のため、特別保存の膨大化防止に取り組むべきだとする強いメッセージを発し、「原則廃棄」の認識を強めることになった。その後も適正化する指導をしておらず、報告書は「対応は誠に不適切」と断じている。
記録が廃棄され調査対象となった少年事件52件のほとんどは、特別保存の判断権限を持つ所長の積極的関与がないままに、漫然と廃棄されていた。
神戸連続児童殺傷事件もその一つで、当時の所長は担当者から相談を受けたものの、自分が特別保存を検討する立場にある認識がなく判断を示さなかった。その結果、現場判断で廃棄されたという。
記録を残せば、将来なぜ事件が起きたのかを検証し、教訓を活用する道が社会に残される。当たり前の意識の欠如が、各裁判所にまん延していたと言わざるを得ない。
このため、報告書は再発防止策としてまず、「保存規程に記録の意義を明記した理念規定を追加する」とした。意識改革の重要性に異論はないが、問題は実効性だ。
その点では(1)最高裁に法曹関係者、学者、報道関係者らでつくる第三者委員会を常設し、各裁判所の判断をチェックする(2)国立公文書館への移管対象拡大や移管時期の見直しを検討する(3)保存期間満了を待たず、直ちに特別保存の判断手続きを進める-などを打ち出した。保管場所の確保も最高裁が支援するという。
民事裁判記録の扱いも少年事件と同じ保存規程に基づいており、廃棄事例35件が今回の調査対象となった。地下鉄サリン事件のオウム真理教に解散を命じた裁判の記録も含まれている。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求が大きな焦点となる中、貴重な先例の記録が失われたことになる。民事裁判記録についても再発防止策が適用される。二度と繰り返してはならない。
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