社説

WBC日本優勝 実力と人気、存分に示す

 野球の国・地域別対抗戦、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が3大会ぶりの優勝を果たした。米フロリダ州マイアミで21日夜(日本時間22日午前)に行われた決勝の中継を、固唾(かたず)をのんで見守った県民も多かったはずだ。新型コロナウイルスの流行もあって6年ぶりに開催された世界一を争う大会。ハイレベルのしびれる戦いを制した日本代表をたたえたい。

 昨年のワールドカップ(W杯)で健闘したサッカー人気に、野球は押され気味だった。しかし今大会で野球の魅力を再発見したファンも多いのではないか。打線に大リーグのスターをずらりと並べた米国を決勝で破ったたくましさ。驚異的なテレビの高視聴率が、関心の高さを示していた。

 栗山英樹監督が、大リーガーも含めて現在想定できる日本のベストメンバーを組んだことをまず評価したい。とりわけ投打二刀流で大活躍した大谷翔平選手のファンへの訴求力はすさまじかった。この勢いが、チーム全体への後押しとなって返ってきた。

 日本は第1回(2006年)第2回(09年)大会を、バントや機動力も交えたきめ細かい野球で連覇した。得意のスモールベースボールの基盤に、今回は大谷、吉田正尚、村上宗隆選手らの長打力と、大谷、佐々木朗希、山本由伸投手らが代表する力で押す投手力が加わっていた。

 決勝でも力強い新生・日本野球の特徴が表れた。村上、岡本和真選手の豪快な本塁打。若い投手も交えた継投は、いずれもスピード豊かで変化球もよく切れていた。日本がパワーでも強豪に対抗した価値ある優勝だ。

 1次リーグから振り返れば、中野拓夢選手(日大山形高出)のしぶとい打撃と果敢な走塁も県民にはうれしい活躍だった。同校野球部時代に指導した荒木準也監督は、中野選手が「打ち急がず、好機の起点となるという役割を忠実にこなした」と評価する。

 大リーグ機構などが主催するWBCは野球の世界への普及と、米大リーグの市場価値拡大を目指している。一方、予選と合わせた今大会の参加国・地域数は28にとどまった。20チームによる本大会も1次リーグではレベル差が目立った。

 五輪やW杯などでは国籍が代表資格となる。WBCでは国籍に加え、両親のどちらかの国籍など幅広い条件を採用している。普及度を考慮した策で、欧州などに野球を広める一助になろう。日本代表では日系米国人のラーズ・ヌートバー選手が活躍して人気を集めた。

 次回大会は26年の予定だ。五輪から除外された野球唯一の「世界一決定戦」としてどう発展させるか。シーズン前の故障リスクを考慮して、大リーグの有力投手には出場回避も目立った。より多くのトップ選手が参加できるよう開催時期の見直しも必要だ。

 とはいえ、明治の初めに米国から日本に野球が伝来してから約150年。WBC決勝の大舞台では初めて発祥国と対戦した日本は、国民的競技となった和製ベースボールの成熟ぶりを示した。スポーツ交流史の長い歩みと深みを感じさせる快挙でもあった。

(2023/03/23付)
[PR]
最新7日分を掲載します。
  • 3月23日
  • WBC日本優勝 実力と人気、存分に示す

     野球の国・地域別対抗戦、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が3大会ぶりの優勝を果たした。米フロリダ州マイアミで21日夜(日本時間22日午前)に行われた決勝の中継を、固唾(かたず)をのんで見守った県民も多かったはずだ。新型コロナウイルスの流行もあって6年ぶりに開催された世界一を争う大会。ハイレベルのしびれる戦いを制した日本代表をたたえたい。[全文を読む]

  • 3月22日
  • 岸田首相、ウクライナ電撃訪問 連帯の意義世界に示せ

     岸田文雄首相がウクライナを電撃訪問した。今年、先進7カ国(G7)の議長国となった日本だが、2月にバイデン米大統領がウクライナを訪問し、G7の中では唯一、ウクライナを訪問していない首脳となっていた。[全文を読む]

  • 3月21日
  • 袴田さんの再審開始へ 迅速な審理を求めたい

     1966年に起きた静岡県の一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審を認めた東京高裁決定を巡り、東京高検は最高裁への特別抗告を断念した。静岡地裁で再審公判が開かれ、無罪を言い渡される公算が大きい。死刑確定以来、姉ひで子さんと共に再審請求に40年余りを費やしてきた袴田さんに、やっと再審の扉が開かれた。[全文を読む]

  • 3月20日
  • 鶴岡の土砂崩れから3カ月 融雪期、さらなる警戒を

     鶴岡市西目で昨年末に発生した土砂崩れから間もなく3カ月を迎える。地盤の風化や開発行為の影響などさまざまな原因が考察されてきた中で、降雨や雪解け水が地面に浸透したことが要因との見方が強まっている。県内には同じような地形が数多く存在する。気温が少しずつ上昇し、春の足音が聞こえる融雪時期だけに、地盤が緩んでいる、あるいはこれから緩む危険性がある箇所は相当数あるのではないか。さらなる警戒が必要だ。[全文を読む]

  • 3月18日
  • 習氏3期目が本格始動 世界の信頼得る努力を

     民主主義を共有する日韓両国が関係修復に踏み出す一方で、中国では権力集中をさらに強めた習近平国家主席の3期目政権が本格的に始動した。新型コロナウイルスや不動産不況による経済の低迷、米中の覇権争い、国際社会の台湾有事への警戒などさまざまな内憂外患を抱えての船出である。[全文を読む]

  • 3月17日
  • 日韓首脳会談 関係安定へ、互いの理解

     岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユンソンニヨル)大統領が会談し、首脳同士が相互訪問する「シャトル外交」の2011年以来の再開で合意した。安全保障や経済安保の分野でも協力を進める方針で一致した。2国間の関係を改善・進展させるには両国首脳のリーダーシップが必要なのは当然だ。今後はそれ以上に、関係改善を支える国民の理解が求められる。[全文を読む]

  • 3月16日
  • ガーシー議員除名 厳しい懲罰やむを得ぬ

     昨年7月の参院選で初当選して以来、国会欠席を続けていたガーシー参院議員が議員の資格を失った。参院本会議の決定で「除名」の懲罰を受けたためだ。除名は国会議員への懲罰のうち最も重く、現憲法下では1951年以来72年ぶり3人目という極めて異例の事態だ。[全文を読む]

[PR]