社説

対ロシア、米欧が戦車供与 侵攻諦め撤収すべきだ

 昨年2月24日にロシアの軍事侵攻で始まったウクライナ戦争が、1年を迎えるのを前に新たな段階に入った。米国とドイツが消極姿勢を転換し、世界最強とされる主力戦車のエーブラムスとレオパルト2をウクライナに供与する。

 ロシアは態勢を整えて近く大規模な攻撃に乗り出すとの予想も伝えられる。主力戦車の供与はロシアのこれ以上の侵攻を防ぐとともに、ウクライナがロシア占領地域に攻め込んで領土を取り戻すのに道を開くものだ。

 また米国とドイツの方針転換は、強力な軍事支援を示威することで戦争継続に利がないことをプーチン・ロシア大統領に分からせる狙いもありそうだ。

 英国も既に戦車の供与を決めている。米国とドイツの決定を受けて欧州各国やカナダも供与を発表しており、ウクライナ軍の戦力が大幅に向上する見通しだ。

 プーチン大統領は戦争が長期化すれば、支援疲れから欧米に亀裂が生じると判断しているようだ。だが核使用の示唆やエネルギー危機による混乱にもかかわらず、ウクライナを支援する自由民主主義陣営の結束は依然維持されている。

 ロシアはこの戦争には勝機がないとの合理的な結論に達し、軍を早く全面的に撤収すべきだ。これ以上のウクライナへの残虐な攻撃と破壊、世界経済の混迷、そしてロシアの衰退をもたらしても、望む勝利が得られないのは明らかだ。

 一連の主力戦車の供与決定にロシアは米欧が戦争に「直接巻き込まれる」と脅しをかけている。形勢の逆転を狙って核兵器を使用する可能性も否定できない。

 自由民主主義陣営は戦車供与が象徴する軍事支援強化の一方で、戦争を長引かせてもウクライナを属国化するという目的は実現しないことを粘り強くロシアに伝える必要がある。ロシア軍の撤退と永続的な和平の実現だけが、この地域を安定させるという現実を確認したい。

 米国とドイツは、ウクライナ軍には高性能の戦車を使う能力がなく、またロシア領を攻撃し戦争が激化する恐れを挙げて供与にこれまで消極的だった。核を使ったロシアと北大西洋条約機構(NATO)の全面戦争も懸念された。

 今回の供与決定でも、ナチス・ドイツによる侵略の歴史を踏まえショルツ・ドイツ首相は一時ためらったが、国際的な圧力を受け、米国によるエーブラムス供与を条件に合意した。バイデン米大統領は供与に反対した国防総省に対して、米欧が結束する意義を強調して決断した。

 表明された戦車の供与総数はウクライナが求める300両には足りない。訓練には時間が必要だ。米国のエーブラムスは今後製造されるものが供与される。

 だが、昨年までの対戦車、対空ミサイルやロケット砲の供与に比べて、今年に入って決まった歩兵戦闘車や戦車などの兵器は、ウクライナ軍が今後地上戦で反転攻勢をかける展開を予想させる。

 日本は今年は先進7カ国(G7)議長国である。日本には軍事面での支援は限界があるが、民生面での支援やロシアに対する制裁徹底などでG7の結束を強化する責任がある。同時にロシアに軍事力で対抗するのがいかに不毛であるかを説得する役割も担ってほしい。

(2023/01/28付)
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