社説

山居倉庫の保存活用計画 地域の宝を磨く契機に

 昨年3月に国指定史跡となった、酒田市の山居倉庫を後世に伝え、有効利用していくための基本指針となる保存活用計画の策定作業が大詰めを迎えている。貴重な歴史的資産で酒田のシンボルになっている施設と土地を、市は2023年度をめどに買い取って公有化する方針で、この計画に基づいて整備、活用に乗り出す。計画策定を含む一連のプロセスを踏まえて地域の宝を磨く契機にしたい。

 新井田川沿いにある山居倉庫は、米の積み出し港としてにぎわった酒田の歴史を今に伝える。NHKの連続テレビ小説「おしん」のロケの舞台になり、新型コロナウイルスの感染拡大以前には年間約80万人の観光客が訪れた、市内きっての観光スポットだ。施設は一部を除いてJA全農山形と庄内地域のJAが出資する「庄内倉庫」の所有で、現役の米保管倉庫として使われてきたが、「全農倉庫の集約と再編」に伴って本年度限りでその役目を終える見通しとなっている。

 山居倉庫は1893(明治26)年、酒田米穀取引所の付属倉庫として旧庄内藩主酒井家によって建てられた。1916(大正5)年までに14棟が建ち、うち12棟が現存する。二重屋根で建物本体と屋根の間に空気を流通させて高温や湿気を避け、風と西日を防ぐためにケヤキ並木が配されている。立ち並ぶ倉庫群は明治時代の開設当時の姿をとどめる。現在、うち2棟は市が既に取得して観光施設「酒田夢の倶楽(くら)」として利用、1棟が「庄内米歴史資料館」となっている。

 保存活用計画策定委員会は有識者ら12人で構成し、昨年10月に発足。史跡としての価値を明確化し、現状と課題を洗い出した上で保存管理と活用、整備の方向性を検討してきた。既に計4回の会合を重ね、来年1月下旬には最終の委員会を控える。本年度中に作業を終え、計画書を文化庁に提出する予定だ。

 委員会などでは、活用策として修学旅行を受け入れて米穀流通の歴史を学ぶ施設、市民活動の貸し出しスペースといった案のほか、倉庫機能とブランド価値に着目して日本酒やウイスキーの熟成・貯蔵、高品質な米の保管に活用するアイデアや、宿泊機能や書店を設けられないか-といった提案もあったという。

 委員会だけにとどまらず、広く市民の参加を得て、26日に続いて来月10日にもワークショップを開催する。意見とアイデアを募り、山居倉庫の今後の在り方を探る方針だ。市民との協働を基本に斬新な方向性を見いだしたい。

 新井田川を挟んだ対岸の酒田商業高跡地には民間事業者が商業施設を整備する予定だ。一帯の活力を最大限に高め、にぎわいを創出する連携が求められる一方、機能が重複しない配慮も欠かせない。

 日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落」と、「鳥海山・飛島ジオパーク」の構成自治体である酒田市にとっては、地元の魅力をアピールして観光のベースや起点となる施設としての機能も期待されよう。樹勢の衰えが目立つケヤキ並木の回復に向けた手だてを含めて保存に力点を置く一方で、施設群の特性やロケーションを生かし、市民と手を携えながら、山居倉庫の魅力を最大限に引き出したい。

(2022/11/28付)
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