社説

中国、ゼロコロナ抗議デモ 厳しい制限、緩和必要だ

 習近平国家主席(共産党総書記)の権威が揺らぎつつある兆候なのだろうか。

 中国で、新型コロナウイルス対策として市民の動きを厳しく制限する「ゼロコロナ」政策への抗議行動が、全国に拡大した。首都北京で千人規模のデモ行進が起きたほか、各地で何らかの抗議が行われ、当局はデモの封じ込めに懸命だ。

 習氏は10月の党大会を経て独裁体制を固め、異例の3期目に入った。新指導部として、ゼロコロナ継続も決めたばかりだ。だが、2012年の習指導部発足以降初めて、本格的な政府批判を浴びた。

 指導部はゼロコロナを続ける方針だが国民の我慢は限界に達し、経済は著しく冷え込んでいる。世界ではコロナ対策と市民生活や経済活動の両立を図る「ウィズコロナ」が主流だ。中国も国民の自由と人権に配慮し、行動制限の早期緩和へ動き出すべきだ。

 中国はスマートフォンなどを通じて国民の行動を厳しく監視し、感染が増えるとロックダウン(都市封鎖)を実施。20年1月に湖北省武漢市から全国に広がったコロナ感染について、同年4月末に封じ込めたと制圧を宣言し、その後もゼロコロナを掲げ続けた。

 党の中枢、政治局常務委員会は11月10日、冬から来年春にかけて「感染の範囲や規模が拡大する恐れがある」としてゼロコロナの貫徹を確認した。「コロナ対策と経済・社会発展の両立」も併記したが、「必要な防疫措置を緩めることはできない」とくぎを刺している。

 一方、中国本土で確認された新規感染者数は1日当たり約4万人で、20年春以降で最多の水準となっている。

 新疆ウイグル自治区ウルムチ市で10人が犠牲となった24日の高層住宅火災が、相次ぐ抗議行動の発端とされる。コロナ対策で高層住宅の周囲が封鎖され、救助が遅れたのではと不満が高まっていた。

 北京市中心部では火災の犠牲者を悼む献花台を設けた広場に市民が集まり、「PCR検査はもういやだ。自由が欲しい」と叫んだ。若者たちは当局への抗議を意味する白紙を掲げ「個人独裁は要らない」「(選挙の)投票用紙を」と習氏を批判、民主化を要求した。上海市中心部でも「習近平、退陣せよ」と習氏を激しく批判する声が上がった。

 ゼロコロナの影響で、中国の22年7~9月期の国内総生産(GDP)実質成長率は前年同期比3.9%増にとどまった。通年目標の「5.5%前後」の達成は難しく、「3%前後」になるとの予測も出る。米国に迫る世界第2位の経済大国の停滞は、世界経済を失速させかねない。

 国際社会からは市民の抗議を支持し、規制緩和を求める声が次々と上がるが、中国の張軍国連大使は「自由優先なら(感染で)死の覚悟が必要だ」とゼロコロナの正当性を強調した。

 厳しい行動制限は中国に進出した日本企業の経済活動や在留日本人の暮らし、日中の人的交流にも影響を及ぼす。岸田文雄首相は日中首脳会談で、習氏に防疫措置の早期緩和を求めた。

 中国がゼロコロナに固執するのは、政策を打ち出した習氏の権威を保つためのようにも映る。国民本位の柔軟な対応を模索するべきだ。

(2022/11/30付)
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