社説

入管難民法改正案 根本的解決にならない

 政府が今国会で成立を目指す入管難民法改正案を巡り、内外で批判がやまない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、迫害から逃れてきた難民を誤って送還しかねないと全面的な見直しを求める異例の見解を発表。他の国際機関や市民団体、弁護士会も反対の声を上げ、野党は対案を共同提出している。

 特に不法滞在などで入管施設に収容された外国人について、難民認定申請中は強制送還されないとする規定に例外を設けたことに厳しい視線が注がれている。従来は申請回数に制限はなかったが、理由が同じなら2回までに限られ、3回目以降はいつでも送還できるようになる。

 これを拒否すれば処罰される。政府は国際社会で批判の的になっている外国人の収容長期化を解消するためと強調。送還を免れることを狙い、申請が乱用されているとしている。しかし、帰国すると弾圧の恐れがあったり、日本に家族がいたりと、さまざまな事情から日本にとどまろうとする例は後を絶たない。

 認定NPO法人難民支援協会によると、2019年の日本の難民認定率は0.4%。米国の29.6%、ドイツの25.9%と懸け離れている。難民認定率が先進国の中で桁違いに低いまま、在留資格のない外国人の国外退去を徹底させるだけでは、長期収容問題の根本的な解決にはつながらない。改正案の修正はもとより、入管行政全体の見直しに向け、与野党で議論を深めることが求められよう。

 日本は不法滞在したり、事件を起こしたりして在留資格のない外国人を原則全て収容する「全件収容主義」を取る。出入国在留管理庁が収容を決め、裁判所が可否を審査する仕組みはない。期間は法律に「送還可能のときまで」とあるが、上限は設けられていない。

 19年末の時点で退去命令を受け、入管施設に収容中の942人のうち649人が送還を拒否した。収容6カ月以上が462人、3年以上も63人いた。仮放免中は2217人。19年6月、長崎県の施設で長期収容に抗議してハンガーストライキ中のナイジェリア人男性が餓死し、法改正議論のきっかけになった。

 今年3月には名古屋市で学費を払えず在留資格を失った留学生のスリランカ人女性が収容半年余りで体調不良を訴えて仮放免を申請したが、認められないまま亡くなった。野党は改正案の採決を巡り、女性が死亡した真相の解明を強く求めており、与党との攻防が激化している。

 改正案は逃亡の恐れがなければ、支援者や弁護士を「監理人」として入管施設外での生活を認める「監理措置」を新設する。ただ監理人は生活状況を報告する義務を負う。支援する立場の人に監視役を担わせることになり、制度としてうまく機能するか疑問がある。

 現行の難民認定基準を満たさなくとも本国の事情から保護すべきだと判断した人を「補完的保護対象者」と位置付けて在留を認める制度も創設するが、その効果は不透明だ。厳格過ぎるとされる難民認定制度の見直しは避けて通れないだろう。難民認定を入管当局とは別の組織に担わせるべきだとの指摘もある。収容の可否を裁判所が判断したり、期間に上限を設けたりすることも検討すべきだ。

(2021/05/14付)
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