社説

コロナ下の貧困 困窮者支援の拡充急げ

 新型コロナウイルスの感染拡大に終わりが見えない中、多くの人が仕事を失い、ごく普通の生活を支え切れなくなっている。労働組合は解雇・雇い止めや賃金カットの無料相談会を実施。労働訴訟の支援にも動きだしている。

 厚生労働省によると、今月8日時点でコロナ関連の解雇・雇い止めは見込みも含め8万836人。派遣やパートなど非正規で働く人が半数近くを占める。本県は560人だった。7日に東京と神奈川、埼玉、千葉の1都3県に緊急事態宣言が発令され、13日には関西や東海を含め11都府県に拡大。雇用情勢はさらに悪化しそうだ。

 ただ厚労省の数字は各地の労働局やハローワークからの報告を基に積み上げたもので「氷山の一角」にすぎない。生活に困っている人の相談を受けている自治体の「自立相談支援機関」には全国に緊急事態宣言が出された昨年4月から9月にかけて、前年同期の3倍に当たる計39万件余りの新規相談が寄せられた。

 民間も含め支援の現場は2008年のリーマン・ショック後とは異なり、働き盛りの男性だけではなく、若年層や女性など幅広い層に「貧困」が広がっていることに危機感を強め、「自助、共助は限界にきている」との声も上がる。生活困窮者に絞り、支援の継続と拡充を急ぐ必要がある。

 自立相談支援機関は「生活保護に至る手前の新たなセーフティーネット」の一環として、15年度から福祉事務所のある都道府県や市町村が設置している。就労や家計、子どもの学習への影響など、さまざまな相談を聞き取り、生活困窮から脱するため利用できる公的な制度を紹介したり、支援計画を立てたりする。

 毎月の相談件数は例年、1万5千~2万8千件程度だったが、昨年4月に9万5214件に急増。7月に4万件台まで減ったものの、8月と9月はいずれも5万件を超えた。その後も、月5万件前後で推移しているとみられる。

 一方、低所得世帯の生活再建を目的に貸し付ける「総合支援資金」のうち、コロナ禍の影響で減収になった人にも特例措置で対象を広げた生活支援費の融資決定件数は昨年3~12月に51万5千件、総額3853億円に上った。生活支援費は2人以上の世帯なら月最大20万円を原則3カ月分まで無利子で借りられる。これまで過去最多はリーマン・ショック後の10年度。今回は対象を拡大しているため単純比較はできないものの、融資件数で見ると、12倍以上に膨らんでいる。

 雇用面では昨年4月の緊急事態宣言発令の当初、外出自粛の影響がまず宿泊業やバス、タクシーなどの旅客運送業を直撃。夏以降には製造業や飲食業にも及び、非正規が切り捨てられ、7月に前年同月比で131万人減という、かつてない減り方を見せた。その6割以上は女性だった。休業補償をもらえないとの相談も支援団体などに相次いでいる。

 政府は雇用調整助成金を活用して雇用を維持するよう企業に呼び掛け、生活支援費の融資や住居確保給付金の支給も当面延長するが、それに加え、より長期的に切れ目なく生活困窮者を支える仕組みが求められよう。

(2021/01/18付)
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