南陽市から白鷹町まで置賜4市町を結ぶ第三セクター鉄道「フラワー長井線」が、全線開通から100周年を迎えた。廃線危機に見舞われながらも運営の主体や手法を変えながら乗り越え、地域の足として1世紀を歩んだことになる。一方で乗客減少や老朽設備への対応など、切実な課題にも直面している。今後を展望し、存続へ英知が求められる。
歴史を振り返ると、旧国鉄長井軽便線(赤湯―梨郷間)が始まりだ。1914年に長井まで延び、住民の熱望を受けて23年に荒砥まで延伸された。赤湯―荒砥間の30.5キロを営業し、かつては木材や工業製品の原材料などを運び、産業振興に力を発揮した。通勤にも使われた。
しかし高度成長に伴う車社会の進展で鉄道利用は減少。国鉄の収支は厳しくなり、赤字路線の廃止案と反対運動が交錯する中で、県内初となる第三セクター・山形鉄道が設立され、88年にフラワー長井線として運行する形に切り替わった。
ただ乗客数は90年度の約144万人をピークに減少傾向が続き、2009年度はほぼ半減。打開策として16年度に運行(上)を同社が、施設(下)を沿線4市町(長井、南陽、白鷹、川西)が保有する「上下分離方式」を導入し、一時は黒字を出したが、コロナ禍もあり20年度は過去最少の約37万人に落ち込んだ。22年度はやや持ち直し40万人台を見込む。設備修繕などの費用はかさみ、自治体による施設整備の負担額は年8400万円から1億800万円へと増している。
一方、利用拡大策として、地酒やワインを味わう列車のほか、車内でのプロレスイベントなど多くのユニークな取り組みが展開されている。移動手段だけでなく、乗ること自体を目的化する工夫だ。
「長井線は公共交通であり地域のシンボル。35年前に失っていたら過疎化はさらに進んでいたのではないか」と地域住民の声が先の本紙記事にあった。35年前とはフラワー長井線が始まった時期だ。仮になくなっていたら学校の存続に関わり、まちを衰退させかねない。100年続いたことの意義は大きい。
今後は貴重な鉄路をいかに存続、発展させていくかだ。沿線には高校が4校あり、多くの生徒の通学の足となっている。一方、運営側から見ると利用の7割が高校生で、少子化と人口減を考えると大きく利用増を図るのは難しい情勢にある。現状打開へ知恵の出しどころだ。
コロナ禍の落ち着きとともにインバウンド(訪日客)観光が回復しつつあり、長井線でも台湾からのツアーが4月は12団体を数えた。今までになく多い。置賜2市3町の地域連携DMO(観光地域づくり法人)やまがたアルカディア観光局を通じた情報発信やガイドによる対応などで受け入れ拡大を図っている。
また同社によると、沿線の広場や駅前スペースを使ったマルシェや、出店したキッチンカーに人が集まる傾向もあるという。沿線スペースを使ったにぎわい創出も検討の余地がありそうだ。
経営改善を図っていく上で長井線という単一路線だけで考えても力は限られよう。西置賜や本県の地域づくりに関わる問題でもある。100周年を迎え、地域の未来を考える機会にもしたい。
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