社説

コロナ禍の商工会 地域経済の在り方提案

 地方経済は、人口減少に新型コロナ禍が追い打ちをかけた形になっている。地域でものを作り販売する小規模事業者は住民の暮らしを支えると同時に、自らも地元の一員だ。事業者が地域で展望を描けるような支援が求められている。

 主として町村区域で小規模事業者をサポートする商工会の役割が重要となる。本県には24組織あり今春の会員事業者は1万2085。全国だと組織は1648で会員は78万を数える。この中で本県の河北町商工会が本年度、全国連合会の「21世紀商工会グランプリ」でグランプリとなった。黒子とされる商工会の「攻め」にも見える積極性は手本の一つになる。

 取り組みでは、郷土食の「冷たい肉そば」のPRと特産品化を企画し、2010年に研究会、13年には企業組合設立を主導。知名度を高め町内そば店の集客増などに役立った。また、イタリア野菜のニーズがあると分かると農家とタッグを組み栽培を開始。13年の企業組合かほくイタリア野菜研究会設立を主導し、販路拡大などを支援している。町内産米や「かほくスリッパ」のブランド化も進め、スリッパはコロナ禍の米国などで「家の中で履く靴」として注目されている。

 19年には都内の三軒茶屋にアンテナショップ「かほくらし」を開いた。町内産品の販売拠点として多くのリピーターを生んでいる。今年4月には町内外4企業による地域商社「かほくらし社」設立を河北町とともに進めた。同社は地域課題の解決と町産業発展という大きな目標を掲げており、ワインや需要を見込むナッツの産地化に乗り出す。

 取り組みは多角的だが、共通するのは地域を巻き込んだ町内資源の「磨き上げ」とビジネスチャンス発掘の意識だ。ニーズを把握し求められるものを生産・提供するマーケットインの考え方を重視し、イタリア野菜という新分野に踏み出したことも農業の磨き上げの一つといえる。

 全国の商工会員はこれまで減少傾向だったが、近年は微増している。コロナ禍の中、行政による経済支援事業などを受けるため、商工会を頼りにしている実態があるようだ。県内商工会でも相談対応の業務で多忙の極み―との声がある。

 個別支援はもちろん重要だが、地域の経済と産業の在り方を模索する努力を欠かすことはできない。

 全国連合会は多様な活動を顕彰している。20年度準グランプリの山梨県北杜市商工会は、移住者を含めた起業希望者をきめ細かく支援する「創業サークル」に力を入れ多数の開業につなげた。19年度準グランプリの静岡県湖西市商工会は、高齢者の生活支援と介護を行う人材の育成講座を開き、仕事とお金を回す「地域家族プロジェクト」を展開している。

 各商工会は苦境の今こそ、先進事例を参考に地域の将来展望を検討し、事業者の意欲増進につなげてほしい。

 県内の商工会などは自らの活動発信に積極的になってもらいたい。職員個々の意欲、知識、人脈が物を言い、ノウハウのマニュアル化は困難かもしれないが、課題を含め多くの情報を提供することで次の発展事例につながる。小規模事業者の体力を考えれば、コロナ禍の今こそ先を見据えた力強い伴走支援が必要だ。

(2021/12/06付)
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