社説

九州の豪雨被害 全容把握と支援を急げ

 熊本県南部を襲った豪雨災害は、その後も続く激しい雨で捜索や救助が難航している。各地で土砂崩れにより道路が寸断され、多くの集落が孤立したままだ。新たに九州北部にも大雨特別警報が出された。

 国や自治体は被害の全容把握を急ぎ、被災者支援に努めなければならない。多くの犠牲者が出た中で事前の情報発信や避難行動が適切だったか検証も必要だ。

 孤立状態は、道路の被害が大きい地域ではすぐには解消しない恐れもある。道路の復旧を急ぎつつ、長期化を前提とした避難所運営などの視点も不可欠だ。

 内閣府は、被災自治体の要請を待たずに物資を届ける「プッシュ型支援」として避難所で使う非接触型体温計などを現地に送ることを決めた。国は支援に全力を挙げてほしい。

 この豪雨は九州付近に停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込み、発達した雨雲が連なる線状降水帯が形成されたのが原因だ。福岡・大分両県の被害が大きかった2017年の豪雨、18年の西日本豪雨も同様のメカニズムで起きた。

 今回は気象庁などによる警報や大雨特別警報などの発表が3日夜から4日未明にかけてで、住民の避難が難しい時間帯だった。気象庁は近年、早めの避難行動を促しており、昨年7月の九州南部の豪雨でも緊急の記者会見を開き、危機感を強調した。今回、3日夕の段階で警戒を促す情報を出したが、昨年のように記者会見を開いて直接呼び掛ける余地がなかったのか、検証する姿勢が求められる。

 線状降水帯は、進路の予測をしやすい台風に比べると、現象が局地的なので発生の予測が技術的に難しいとされる。そうした制約を踏まえながらも、住民が避難しやすく、自治体職員が動きやすい時間帯でどんな備えをしてもらうのか、現場目線で議論する機会にしてほしい。

 流域の浸水被害が甚大になっている球磨川は、以前から氾濫を繰り返しており、熊本県人吉市や球磨村などは「タイムライン」という防災計画を策定してきた。タイムラインは、災害時に取るべき行動計画を時系列で事前に作成するもので、球磨川では関係機関とも連携して会合を重ねてきた実績がある。防災に熱心な地域としても知られていた。

 そんな地域が未明の時間帯の事態急変にどう対応したのか、後に教訓として積極的な情報発信に努めてほしい。

 球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」では、雨脚が強まって入居者を2階に移動させる中、濁流が押し寄せた。高齢者の避難は時間がかかる。千寿園は定期的に避難訓練を行い、4日未明も地元住民が移動作業を手伝った。自力避難が困難な人を抱える施設は地域との連携を強化し、訓練で何度も試すことが重要だ。

 氾濫した球磨川に加え、富士川と、県土を貫流する最上川は日本三大急流と称される。本県の災害史をたどれば、1967(昭和42)年の羽越水害は甚大な被害をもたらした。ここ10年では、2013年、14年と梅雨中盤から終盤にかけて大雨による被害が相次いでいる。ハザードマップや避難先の確認、そして早めの避難など、九州の豪雨被害を直視しつつ、自ら命を守る備えを万全にしたい。

(2020/07/07付)
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