社説

五輪マラソン札幌開催へ 日程ありきの末の迷走

 国際オリンピック委員会(IOC)が、2020年東京五輪のマラソンと競歩の会場を札幌市に移転させることが確実になった。真夏の開催で懸念される猛暑対策で、大会組織委員会も合意した。

 開催まで10カ月を切ったこのタイミングでの変更はあまりに唐突で混乱を招く。会場整備案を固めた東京都が反発するのももっともだ。ただ、IOCが強調する「選手第一」の原点に立ち返り、選手や観客などの安全面を考慮すれば札幌移転はやむを得ない選択ともいえよう。

 今回の背景には、先月末から今月初めまで中東カタールのドーハで開催された世界陸上選手権がある。マラソンと競歩は厳しい暑さを避けるため深夜から未明にかけて行われた。しかし、男子マラソン以外は気温30度、湿度70%を超え、両種目で途中棄権する選手が続出。強い批判が出た。

 東京五輪では7月31日~8月8日に競歩、8月2日に女子マラソン、8月9日に男子マラソンが予定されている。真夏の東京開催における暑さ対策は、かなり前から指摘されてきた。東京都と組織委はこれまでIOCと協議を重ね、さまざまな対策を検討し、計画を固めてきた。

 路面温度の上昇を抑える遮熱性舗装を整備し、街路樹の枝葉を大きく育て木陰を増やす取り組みも進めている。競技スタートの時間は、招致段階の計画から前倒しし、男女マラソンは午前6時、競歩の男子50キロは5時半、男女20キロは6時に変更している。

 観客への配慮では、日よけテント、大型冷風機、霧状の水をまくミストシャワーを整える。IOCは「日本でなければ、これほど細部にわたる計画はできない」とこれまでは評価していた。

 にもかかわらず、札幌移転の話を持ち出したのは、ドーハで相次いだ途中棄権を重く見たIOCが、同じ高温多湿である東京五輪への危機感を強め、従来の計画では、五輪のイメージを損なう事態を招きかねないと判断したためだろう。

 ただ、会場変更となれば各方面への影響は甚大だ。競技現場では、日本陸連がマラソン代表選手をできる限り本番に近い環境で選考しようと、本番とほぼ同じコースで、先ごろ男女各2選手を選んだばかりだ。選手も陸連もいま、あの選考レースは何だったのかとの思いだろう。

 IOCが神経を使う国際映像制作や販売済みチケットの補償、新たに発生する経費などさまざまな問題も出てくるだろう。その対応と負担は誰がどのように進めるか。残された時間がない中でさらに混乱が予想される。

 今さらではあるが、そもそも、こうした状況を生み出した根本は、放映権料収入を優先させ、世界的なスポーツイベントが少ない7、8月開催ありきで進めたIOCにあるのではないか。招致委も、開催計画をまとめた立候補ファイルで7、8月の東京の気候を「晴れる日が多く、かつ温暖でアスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」とアピールした経緯がある。

 そうした結果の迷走であることを関係者は心に留めるべきだ。その上で、全選手が安心して最高のパフォーマンスを発揮できる環境を最優先で整えてほしい。

(2019/10/18付)
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