社説

GoToトラベル 感染への影響検証せよ

 政府は25日の新型コロナウイルス感染症対策分科会で、観光支援事業「Go To トラベル」に東京都発着の旅行を予定通り10月1日から追加することを確認した。地方への感染拡大を懸念する声が専門家から上がっていたが、割引を適用した東京発着旅行の予約は始まっており、東京追加は既定路線となっていた。

 流行の「第2波」は7月末から8月初旬がピークだった。感染が再拡大していた東京を除外して7月下旬に始まったGoToトラベルが影響した可能性は高い。人口約1400万人の東京を追加するに当たり、政府は過去の経緯を検証し、国民にリスクと効果を十分説明する必要がある。

 東京追加の方針は9月11日の新型コロナ対策分科会で西村康稔経済再生担当相が表明した。しかし尾身茂会長ら専門家が、東京の感染者について「下方向に行っているが、常に再燃の可能性がある」と指摘。拙速に東京を追加して感染が広がれば「国民の信頼を失う」として9月末の感染状況を見極めるようくぎを刺した。

 それでも西村氏は「基本的に了解いただいた」として、10月からの日程ありきで観光支援に前のめりな姿勢を鮮明にした。専門家が知見に基づき制止しても立ち止まれないようなら専門家会議を設けた意味がなくなる。

 さらに政府は割引適用の東京発着旅行の予約を解禁。もし東京で感染が拡大し10月1日が先送りになれば、国がキャンセル料を補塡(ほてん)するとしてきたが、既成事実を積み重ねて専門家の異論を封じるかのような進め方だった。

 「第2波」はウイルス遺伝子の分析により、緊急事態宣言の解除後、東京から人が移動し大阪、福岡、沖縄など各地に感染が広がっていったと判明している。観光庁は宿泊施設に対し、客の検温、浴場など共用部の人数制限などを義務化し感染防止策を徹底させているが、それでも地方では東京追加への不安が根強い。

 東京都医師会の尾崎治夫会長も「まだ油断できない。東京から感染者が少ない地域にどんどん行くのはリスクが高い」と慎重な判断を求めていた。

 それでも政府は、延べ1300万人超がGoToトラベルを利用した一方、利用者の感染は10人超にとどまるとしている。旗振り役だった菅義偉首相も「やらなかったら大変なことになっていた」と推進していく姿勢に揺るぎはない。だが、割引を受けずに感染者が対象施設に宿泊していたケースも多く、成果や安全性を過剰に強調していないだろうか。

 観光庁の統計によると、昨年の国内宿泊者のうち都民が占める割合は約2割で、東京追加が地方の観光関連業に与えるインパクトは大きい。政府が追加にこだわるのもそのためだが、夏休みが終わって長い休暇は取りにくく、秋の観光シーズンとはいえGoToトラベルの利用が伸び悩む可能性もある。

 東京を追加するなら、それが原因で感染が拡大した場合への備えが何より重要だ。どういう状況になれば中断するか、一部地域を外す柔軟な対応はできるか-などを事前に想定しておくべきだ。そのためにも「第2波」へのGoToトラベルの影響を検証することは不可欠だ。

(2020/09/26付)
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