社説

高畠町の犬の宮、猫の宮 ペット供養、大きな役割

 犬や猫は1人暮らしの人が飼うなど今や全国的に人気を集めており、計1800万匹余が飼育されているという民間調査結果がある。そんな世相を背景に、高畠町高安(こうやす)の「犬の宮」「猫の宮」には週末を中心に多くの参拝客が訪れる。犬猫双方の宮があるのは全国でも同町だけという。ペットというより、今や家族同様に扱われることもある犬猫を供養できる場所が同町にある意義を再認識したい。

 由来によると、先に創建されたのは犬の宮である。出羽国が置かれた712(和銅5)年ごろ、都から役人が来て年貢の代わりに子どもを差し出すよう命じた。村民は悲しみ困っていたところ、目の不自由な座頭が甲斐国(現山梨県)の三毛犬(みけいぬ)などを借りてくるよう指示し、知恵を授けた。村人はその通りに役人を酒席に招いた上で犬を放つと乱闘になり、その後には大ダヌキと犬が横たわっていた。住民は犬が村を救ったとして祭ったのが始まりとされる。

 猫の宮はそれから70~90年後の延暦年間、庄屋の夫婦が観音菩薩(ぼさつ)のお告げを受けて三毛猫を育てていた。ある時、猫が天井をにらんでうなっていたため、怪しいと思った夫が首をはねた瞬間、首は屋根裏に潜んでいた大蛇にかみついた。実はこの大蛇は犬に殺された大ダヌキの怨念の血をなめた後、仕返しを狙っていた。このことを知った夫婦は猫を手厚く葬り、お堂を建立した。

 当時は律令時代で、中央から課された重税などに不満を持ち、抵抗する村人の姿を犬猫に託したという見方がある。役人は中央から派遣された権力者という解釈であり、そう考えるとこれらの由来は時代を今に伝えているようで興味深い。

 犬の宮別当で林照院の大高典道住職、猫の宮別当・清松院の村上正法住職によると、約40年前のペットブーム時から「埋葬してほしい」という要望が相次いだ。最近は火葬してから持ってくるようお願いしている。ペットであっても家族が喪服を着て葬儀を行うケースもあった。「命日に供養して」とお金を置いていく人もいる。二つの観音堂は愛犬・猫の写真に覆われている。「年々ペットに対する思い入れが強くなっているような気がする」と2人は語る。

 付近には「高安犬(こうやすいぬ)の碑」がある。動物文学を確立した戸川幸夫が和田村(同町)で見つけた最後の純血種「チン」を主人公とした小説「高安犬物語」を書き、直木賞を受賞した。高安犬も村を助けた犬の子孫とする説もある。

 犬の宮、猫の宮では毎年7月、全国ペット供養祭を行う。今年は新型コロナウイルスの影響で愛犬家などを受け入れずに実施したが、それでも町外から参加した人がいたため、焼香してもらった。

 ペットを巡っては課題もある。野良猫が増え、ふん尿被害に悩まされるといった例は、町に限らず県内各地にあるだろう。まずは住民と動物が共生できる町を目指すという手もある。被害軽減のため、野良猫を捕まえて不妊手術をした後、地域に戻す「トラップ・ニューター・リターン(TNR)活動」を普及する方法はその一例だ。そうした努力の積み重ねが各地の愛犬家、愛猫家を高畠により引き付ける要素になるのではないか。

(2020/09/22付)
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