社説

大江で重要文化的景観の全国大会 次代継承の努力さらに

 「最上川の流通・往来及び左沢町場の景観」が国の重要文化的景観に選定されている大江町で、同様の自治体などが意見交換する全国文化的景観地区連絡協議会の大会が開かれた。県内からは同町のほか、「最上川上流域における長井の町場景観」が選定された長井市も参加した。文化的景観を巡っては、人々が生活を営んでいることなどが重要視される。だが該当地では、少子高齢化が共通の課題となっている現実もある。大会開催を契機に、住民が自らの景観の価値について認識を深め、今以上に誇りを持つことで次代への継承につなげてほしい。

 文化的景観は「地域における人々の生活、生業(なりわい)、風土により形成された景観地で、国民の生活、生業の理解のため欠くことのできないもの」と定義されている。このうち、重要文化的景観は全国に64件、本県では長井市と大江町の2件だ。

 大江町の景観は最上川流域と、城下町でもあり舟運の歴史とともに複合的に発展してきた左沢の町場、中世に山城の左沢楯山城が置かれた楯山が対象で2013年に選定。長井市の景観は宮と小出の両区域、最上川が対象で、18年に選ばれた。宮と小出は舟運による物資集散地として発展し、また生活に根差した水路が残っていることが特徴だ。

 左沢は大江町の中心地で、選定以降は高校生によるワークショップ、中学生のガイド研修、小学生らがクイズに答えながら町並みを探検する催しなどを行い、価値の浸透を図ってきた。景観の構成要素として、旧きらやか銀行大江支店を改修し交流拠点「ATERA(あてら)」が昨年5月にオープンしたことも注目される。

 選定から6年たった大江町では、重要文化的景観を次世代にどう受け継いでいくかが大きな課題だ。町場を含む左沢地区の人口は減り、04年の約7100人に対して19年は約5900人。構成要素の建物に住む人々の高齢化は進み、後継ぎが不在のところもある。選定2年目の長井市でも、対象地で商店主の高齢化が進み、後継ぎの確保が難しい事例があるという。同市の場合は、重要文化的景観への認知度もまだ十分ではなく、市民の機運を高めたいとしている。

 大会では、後継者問題が全国的な課題だとの指摘があった。重要文化的景観は普段気付きにくい「生活の中の価値」に光を当てることが特徴といえる。次の担い手につなぐためには、景観に対する誇りをさらに高める必要がある。多様な活動を展開する大江町だが、改めて町内の各世代と町外の応援団の人々など大勢が関わる取り組みを絶やさず、地域の宝としての意識をより強くしてほしい。

 今回は案内表示などの「サイン」やPRの事例発表があり、QRコード付きのサイン、漫画での情報発信、さらには増えすぎた案内表示を減らし整理したケースなどの先行事例が示された。大江町もサインの計画作りを進めている。観光客だけにとどまらず、町民の学びにも有効活用したい。

 重要文化的景観に限らず、景観をまちづくりや観光に活用する事例は多い。景観が暮らしと一体化する大江町と長井市による継承への模索が、モデルケースになるよう力を尽くしてほしい。

(2019/10/14付)
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