社説

NHK経営計画案 視聴者の声、取り入れよ

 NHKが2021~23年度の経営計画案で、BSテレビ2チャンネルとAMラジオ1チャンネルの削減を表明した。肥大化を続ける公共放送が、初めて大幅な規模縮小を打ち出した形だ。

 計画案には(1)BS1、BSプレミアムを統合し、将来的にはBS4Kを含め1チャンネルにする(2)ラジオ第1、第2を1チャンネルに整理する―と明記した。

 一方、昨年10月と今年10月に受信料を実質計4.5%値下げすることなどにより、本年度予算で7204億円の事業収入が21~23年度には6900億円に減ると想定。番組ジャンルの重複を解消して制作費を削ったり、放送権を取得するスポーツを絞ったりして、事業支出を3年間で計約500億円削減する方針だ。

 また経営計画とは別に、地上契約と衛星契約の2種類ある受信料の一本化など、受信料制度を見直す考えを示した。民業圧迫が批判されている関連会社については、持ち株会社を導入したい意向を明らかにした。

 メガバンク出身の前田晃伸会長は1月に就任したばかりだが、踏み込んだ改革案を提示した。さらなる受信料値下げを盛り込まなかったことを除けば、高市早苗総務相が要求する業務、受信料、ガバナンス(組織統治)の「三位一体改革」に応じた内容といえる。

 しかし、ちぐはぐな印象も否めない。経営計画に求められるのは、公共放送から「公共メディア」への進化を目指すNHKが、どんな役割を果たしていくのか、その将来像を描くことのはずだ。

 メディアを取り巻く環境が激変するデジタル時代に、民間では代替できない公共メディアの業務とは何か。それを明確にした上で、その業務にふさわしい受信料制度や受信料の金額、ガバナンスの具体策を検討するのが筋だろう。

 例えば、放送番組の同時配信「NHKプラス」を今春始めたように、ネット業務を拡大するなら、ネットだけでNHKの番組を視聴する人にも、受信料を支払ってもらう必要がある。同時に、こうしたネット視聴者らの声を経営に生かすという、本来のガバナンスの在りようを検討しなければならない。

 ところが経営計画案は、今後の世帯数減少や当面の値下げによる減収に対応するため、コストカットの徹底を起点とし、順序が逆と言わざるを得ない。

 チャンネル削減は、視聴者にとっては重大なサービス低下である。NHKは経営計画案に対する意見を公募しており、視聴者の要望を十分に取り入れて、最終的な計画をまとめてほしい。

 だが、NHKの最高意思決定機関である経営委員会は、信頼を損なう言動を重ねている。かんぽ不正の報道を巡り、総務省OBの日本郵政首脳らの抗議に過剰反応し、当時のNHK会長に厳重注意した。経営委員の番組干渉を禁じた放送法に抵触する疑いが強い。

 その経緯を記した経営委の議事録に関しても、NHKの第三者機関が情報公開すべきだと答申したのに、経営委は先月、一部しか開示しなかった。説明責任を果たそうとしない経営委が、視聴者目線の経営計画を作れるのだろうか。委員一人一人が問われている。

(2020/08/07付)
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