社説

2年ぶり開催の新庄まつり 市民の誇り価値再認識

 新庄まつりが2年ぶりに開催されることになった。規模は今後、新型コロナウイルスに関して県が示す注意・警戒レベルに基づいて判断する。そのガイドラインには、全国各地で祭りやイベントの中止、縮小が相次ぐ中、市民の誇りである祭りを何としても開催するという関係者の強い決意がにじむ。

 260年以上の歴史を刻み、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産である新庄まつりは毎年8月24~26日の3日間、繰り広げられてきた。昨年の中止は戦後初で、準備段階と当日の新型コロナ感染予防を万全に行うことは困難との判断だった。「中止によって新庄まつりの価値を改めて感じた」。祭り開催に関わってきた人だけでなく、多くの市民から、こんな言葉が聞かれた。

 その思いに応えようと、実行委員会は今回、他県の取り組みなどを調べ、ガイドラインを作成した。県の注意・警戒レベルの5段階に応じ、山車(やたい)行列や神輿(みこし)渡御行列、露店営業などについて、それぞれ実施の可否、規模を設定。県内で感染者が確認されていない「レベル1」ならば通常開催とし、医療体制の逼迫(ひっぱく)が懸念される「レベル5」(非常事態)の場合は全て中止する。規模に関する最終判断は5月末~6月上旬に行う。感染抑え込みの度合いに応じて通常開催に近づくことになり、市民にとって感染防止対策の動機付けになる仕掛けといえる。

 現実的な対応として実行委員会は現在の「レベル3」(警戒)を想定した準備を進める。最大の見どころとなる初日の宵まつりと2日目の本まつりの山車行列は行わないものの、各町内が19の山車ごとに個別のルートで自主運行する。神輿渡御はコースを短縮し、露店はJR新庄駅そばの広場「アビエス」に集約してテークアウトを原則とする。

 開催する上で最大の課題はやはり感染対策だろう。実行委員会は帰省者を含めて県外からの参加、観覧の自粛を求める。「市民のための祭り」という位置付けを明確にする考えだ。市民に対しても山車パレードや神輿渡御を観覧する際は自宅近くでマスク着用を要請する。山車製作、囃子の稽古などはチェックシートを作成して対策を徹底してもらう。

 さらに、財源確保も課題の一つといえる。新庄まつりは山車を作る町内ごとに地元の家々や企業を回って協力金を集める「花もらい」の慣習がある。感染防止のため今年は中止せざるを得ない。そこで実行委員会は市民、企業から寄付を募るという。コロナ禍で地域経済は打撃を受ける中だが、影響の少ない企業、市民にはぜひ心意気を示してほしい。

 いつもの年であれば大型連休が明けると程なく、市内のあちこちで山車作りに汗を流す市民の姿が見られる。お囃子を稽古する音が遠くから聞こえ、祭り気分は徐々に盛り上がる。本番の3日間にとどまらない一年を通した準備があるからこそ祭りは市民の心のよりどころになり、コミュニティーの維持にもつながっている。中止となって市民の多くが認識した価値は、この点だろう。昨年の虚無感を二度と味わうことのないよう関係者と市民一人一人が気持ちを合わせ、感染対策をしながら準備に当たりたい。

(2021/05/10付)
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