社説

日中外相会談 懸案解決に対話重ねよ

 茂木敏充外相と来日した王毅・中国国務委員兼外相が会談し、新型コロナウイルス対策や気候変動問題で協力するほか、日中間のビジネス関係者の往来再開や来年のハイレベル経済対話開催に合意した。一方、尖閣諸島や南シナ海、香港への統制強化、人権などの問題では対立が続いた。

 9月の菅政権発足後、中国要人の来日は初めて。会談で、両国がグローバルな課題や経済面の協力で一致しながらも、安全保障や民主主義の価値観での確執は根深いことが浮き彫りになった。

 米次期政権発足後も米中覇権争いは続くとみられ、日本には米中双方と良好な関係を結ぶ戦略的外交が不可欠だ。多数の懸案事項について、積極的な対話を通じて歩み寄りを目指したい。

 日中関係は2012年の尖閣国有化で著しく悪化したが、17年、習近平国家主席が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に安倍晋三前首相が条件付き支持を表明したことで改善に向かった。

 経済は公正なルールに基づき、市場原理に乗ってうまく機能すれば、各国に利益をもたらす。今回の会談でも両国関係の「かすがい」に経済を用いる方針を確認した。コロナ感染で景気が冷え込む中、互恵の経済重視の方向は正しい。

 日中など15カ国は関税削減や統一的ルールで自由貿易を推進する枠組み「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に合意した。習氏はより高い水準の環太平洋連携協定(TPP)への参加意欲も初めて表明。自由貿易を擁護する日中の足並みはそろっている。

 だが、尖閣問題では対立が続く。中国海警局の公船は尖閣周辺での航行を活発化させ、11月初めに年間で283日と過去最多を記録し、その後も連日現れている。王氏は記者団の取材に対し、尖閣周辺に日本漁船が入らなければ問題は解決すると提案。加藤勝信官房長官は、尖閣は日本固有の領土であり、日本漁船の活動は問題ないとして提案を拒否した。

 バイデン米次期大統領は菅義偉首相との電話会談で、尖閣が米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象だと明言した。中国をけん制する意味では極めて重要だ。

 とはいえ、領土争いで戦火を交えるのは最悪のシナリオ。王氏は共同記者発表で、日中防衛当局間の相互通報体制「海空連絡メカニズム」に関し、緊急時に使うホットラインを年内に開設する方針で合意したと説明した。軍事的な緊張緩和に向けた一歩にしたい。

 外相会談では香港の民主派弾圧、新疆ウイグル自治区の強制収容所、南シナ海への海洋進出も議題となった。これらの懸案についても、引き続き中国に改善を促すべきだ。

 今年春の習氏の国賓来日はコロナ感染拡大のため延期された。その後、中国のコロナ対応の遅れや情報隠蔽(いんぺい)、香港統制、尖閣問題などで日本の対中世論は悪化。外相会談で、習氏来日問題は議論されなかった。来日はコロナが収束した上で、日中関係が修復に向かうことが前提となろう。強権政治と軍拡路線を見直し、日本国内の対中不信感の払拭(ふっしょく)に努めるよう中国に求めていきたい。

(2020/11/28付)
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