社説

「ほっこり料理店」の可能性 認知症を理解し寛容に

 本県でも高齢者に占める認知症の人の割合は高まると予想され、認知症の高齢者に優しい社会づくりや共生は、今後重要さを増していく課題だ。こうした中、寒河江市で認知症高齢者が店員となり接客する一日限定レストランイベント「ほっこり料理店」が開かれた。認知症への理解を深め、症状があっても活躍できる可能性を示し、周囲が寛容な心を持つ大切さを訴えた。誰もが住みやすい地域づくりのため、このような試みが広がるか、県民の関心が高まるかが注目される。

 首都圏などで開催される催し「注文をまちがえる料理店」の寒河江版として地元NPO法人や市内外の飲食店、企業などが実行委員会を組織し、県内で初めて開いた。認知症の症状がある13人のお年寄りがスタッフとなって接客し料理を運んだ。ランチタイムに2回開催し、予約客65人が来店。注文と異なる料理が来ることがあっても、笑顔で受け入れた。

 スタッフが客と言葉を交わし交流する場面もあり、アンケートは好意的な感想が目立った。生き生きとした姿に触れ、認知症になっても活躍できることで今後の希望になる-と記すなど、客側も大きな刺激を受けたことがうかがえる。

 認知症を巡っては、10月に岡山市で開かれた20カ国・地域(G20)保健相会合が「共生する環境を促進する」とした共同宣言を採択、世界的課題との認識を共有した。国内では団塊世代の全員が75歳以上になる2025年に、認知症高齢者が約700万人に達すると推計されている。本県では県の推計で15年は約5万9千人、高齢者に占める割合が17%とされているが、35年には7万3千人に増え、割合は21%まで高まる予測だ。

 本人や家族は、他人に知らせたくないと考える人が少なくない。認知症の人が設定された場で思いを語る事例は本県でもあるが、まだ一般的ではないだろう。しかし認知症には誰もがなる可能性があり、広い年代の理解が求められる。

 県は認知症施策の行動計画に「正しい知識の普及促進」など三つの基本目標を掲げ、本人や家族を見守る「認知症サポーター」の養成推進などに取り組む。サポーターの増加、本人や家族らが情報交換などを行い交流する認知症カフェの活動もあり、社会の理解は徐々に広がっているとの声がある。だが今回のように、認知症高齢者が主役となり本人に無理のない範囲で一般市民と接する取り組みは県内では珍しく、共生社会実現への参考事例になるはずだ。

 「注文をまちがえる料理店」を運営する和田行男さん(名古屋市)は、認知症でない側の人が「ずれ」を修正することで共に生きていける-と寒河江市での講演会で語った。「料理店」はこれを実践する場といえる。実行委事務局は今後も開催したいとし、他地域での実施に向け呼び掛けを行うことも考えている。中心を担う介護福祉現場は人手不足が指摘され、家族の理解と周囲の協力が重要だ。

 今回の開催で認知症高齢者にどのような影響があるのかはまだ分からない。この取り組みの継続や広がりが、本人や社会にどのような変化をもたらし得るのか。行政や研究機関との連携も検討し、これらを見極める努力にも期待したい。

(2019/12/07付)
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