社説

トランプ氏弾劾再訴追 扇動政治を拒否しよう

 トランプ米大統領が1月6日に起きた議会乱入事件で「反乱扇動」の責任を問われ、弾劾訴追された。一昨年にもウクライナ疑惑で弾劾訴追されており、現職大統領の2度の訴追は過去に例がない。国民の怒りや不安につけ込み、事実無根の虚偽を繰り返して扇動してきた政治家のなれの果てである。

 米連邦捜査局(FBI)は、20日のバイデン次期大統領就任式に向けて、トランプ派支持者が再び暴徒化し全米で騒乱を引き起こす可能性があるとの情報を得て警戒を強めている。ワシントンでは州兵が動員され厳戒態勢が敷かれている。

 トランプ氏が昨秋の大統領選直後から「選挙が盗まれた」と根拠もなしに主張し、支持者に「死ぬ気で戦わなければ、国を失う」と扇動した影響は、議会乱入で終わってはいない。本来祝賀ムードに包まれる大統領就任式だが、今年は暴力におびえて迎える。

 民主主義のリーダーである米国の現職大統領が国家に対する反乱扇動を問われるとは驚くべきことだ。虚偽発言を続けた末に、受け入れられないとなると政治にむき出しの暴力を招き入れる結果となった責任は重大だ。弾劾を訴追した下院では与党共和党からも10人の議員が賛成票を投じた。

 上院はバイデン氏の就任式後に弾劾問題を取り上げる。退任後であっても弾劾裁判で有罪とすることでトランプ氏の次期大統領選出馬を封じる狙いがあるとされる。

 当のトランプ氏は暴力こそ非難しているが、扇動の責任は認めていない。議会乱入が起きる直前の極めて扇動的な演説も「完全に適切だった」と強弁している。これではペロシ下院議長(民主党)がトランプ氏を「差し迫る明白な危険」と断じたのもうなずける。議場乱入の恐ろしさや、影響力維持を狙うトランプ氏を目の当たりにして、米政界が弾劾で「トランプ的なもの」を排除しようと考えてもおかしくない。

 弾劾裁判で有罪とするには3分の2の賛成が必要でハードルは高いが、共和党内でトランプ氏への反発は徐々に広がっている。共和党支持者の間でもトランプ氏の支持率が低下し、同党を支えてきた経済界も距離を置く動きを見せている。

 最悪の結末となったトランプ政権だが、その根は深い。もともと共和党は移民の流入や女性の進出など民主党支持層の拡大に危機感を持ち、キリスト教右派や小さい政府を求めるティーパーティー(茶会)などが保守的な白人の票を獲得してきた。トランプ氏は広がる経済格差や人種間対立を背景に、不満をため込む保守層につけ入り、過激な発言により扇動することで一挙に共和党を乗っ取り、大統領に就任した。

 だが、新型コロナウイルス対策の失敗を批判するメディアを「フェイクニュース」と呼ぶなど、その虚偽発言は常軌を逸していた。極め付きは、大統領選では自分が大勝したのにバイデン氏が不正に盗んだ、という主張だ。

 格差や人種対立に根差す怒りが続く限りトランプ氏のように虚偽で扇動する政治家が登場しそうだ。同氏の失墜が扇動政治の限界を知る機会となってほしい。

(2021/01/16付)
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