社説

旧文通費の是正 いつまで放置するのか

 岸田文雄首相や自民、公明両党にとって「政治とカネ」を巡る問題の不信払拭は優先課題ではないようだ。世間には通用しない「永田町の常識」をいつまで放置しておくのか。国会議員一人一人の自覚が問われている。

 衆参両院議員に対し、歳費(給与)とは別に毎月100万円支給されている非課税の「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)の是正が、再び置き去りとなる見通しだ。使途の公開や未使用分の返還を義務付ける立憲民主、日本維新の会など野党3党が提出した法改正案に、与党側が難色を示しているからだ。

 政治とカネの問題で閣僚更迭などの事態を招きながら、改革の一歩すら踏み出そうとしない姿勢は国会のサボタージュと非難されても仕方あるまい。

 旧文通費に関しては、4月の通常国会で名称変更や日割り支給にする改正法が成立した。使途の公開などは、その通常国会中に結論を得る方針で合意したにもかかわらず、先送りされた。しかも、名称が変わったことで、使途が事実上拡大した。国会議員の「第2の財布」色が一段と濃くなり、改正とは言い難い、お手盛りとなった。

 旧文通費の原資は国民が納める税金であることを忘れてはならない。一般の社会人は日常的に領収書を添付して業務に関わる経費を精算している。地方議会も「政務活動費」をいつ、何に支出したかを示す領収書を含めて公開し、未使用分を返納しているところが少なくない。この当たり前の作業を、国会議員だけが免除される理由はどこにも見当たらない。

 一義的には及び腰の与党側の責任が重い。ただ、野党も何が何でも実現を迫るという迫力に欠けていたのではないか。

 新型コロナウイルス禍による経済の低迷、光熱費や食料品などの値上げラッシュが国民の暮らしを脅かしている。限られたお金の使い方に四苦八苦しているのが現状だ。そうした窮状に思いが至らないとすれば、国会議員失格だろう。私たちはこうした国会の無神経さを見過ごしてはならない。

 岸田首相は補正予算、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題、コロナ対策、防衛力強化、2023年度税制改正・予算編成などを重要課題に挙げる。だが年末にこうした対応が集中することは想定されていたのだから、議員自身の待遇に直結する旧文通費の是正を後回しにしてもいい“言い訳”にはならないはずだ。

 今国会では、寺田稔前総務相が故人を政治団体の会計責任者に据えていたことや選挙での買収疑惑などで職を追われた。秋葉賢也復興相も政治団体の事務所賃料を親族に支出していた問題や秘書に選挙運動の報酬を支払った疑惑が、松本剛明総務相には会場収容人数を超えるパーティー券を販売した疑いが表面化。岸田首相についても宛名やただし書きのない大量の領収書が発覚している。

 首相が「絶えず襟を正す」と強調するのであれば、自民党に対し指導力を発揮するときだ。旧統一教会問題を巡り被害者救済法案は短期間での成立が確実になった。この法案のように、与野党協議で合意することも可能だろう。速やかな是正が国権の最高機関の使命である。

(2022/12/08付)
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