社説

中国・天安門事件31年 人権状況の改善求める

 1989年6月4日、中国軍が首都北京で民主化運動を武力によって弾圧した天安門事件から31年がたった。中国指導部は今も犠牲者の追悼や抗議活動を抑え込み、事件の再評価を拒否している。加えて近年は新型コロナウイルスの情報隠蔽(いんぺい)や、香港への統制強化のための国家安全法制導入など、強権体質と人権状況の悪化が際立つ。

 1強体制を固めた習近平国家主席は米国に比肩する近代化強国づくりを国家目標に掲げ、民主派や少数民族を弾圧、思想教育を展開するなど政治的引き締めを強化。非民主的な政治体制に批判的な米欧諸国や台湾との対決姿勢を強める。

 しかし、長期的に国内の安定を維持し国際社会と協調していくには、民主化が不可欠だ。内外の批判を「政権転覆を狙う敵対勢力」の陰謀と決め付けず、冷静な態度で謙虚に対話に応じ、人権状況の改善にかじを切るべきだ。

 過去1年間は政権の試練の時だった。経済成長の鈍化、米中貿易摩擦、香港と台湾の大陸離れに加え、コロナウイルスが猛威を振るった。習氏は安定した統治への危機感を強めたに違いない。

 コロナウイルスは都市封鎖や外出禁止など強硬措置で封じ込めたものの、情報隠蔽や官僚主義が初動の遅れを招いたと指摘され、当局は犠牲者の遺族の抗議や提訴の動きを妨害する。コロナ制圧を誇示するだけではなく、非民主的な政治体制に問題はなかったか、点検しなければならない。

 中国が香港統制の強化を決めた背景には、昨年来の反中国・民主化要求デモについて「香港独立派や過激派が扇動し、欧米が内政干渉を行った」という判断があった。

 中国憲法の前文には「わが国の社会主義制度を敵視し、破壊する内外の敵対勢力と闘争しなければならない」と記されている。習氏は2014年、共産党中央に国家安全委員会を設置して以降、反スパイ法、国家安全法、反テロ法など国家安全関連の法律を次々と制定・施行し、内外の「敵対勢力」との闘争を進めてきた。それは言論・人権弾圧を伴う確信的な民主化逆行だった。

 さらに深刻なのは国力を増している中国が、闘争の過程で外向きのベクトルを強めていることだ。香港やコロナなどの問題で中国に批判的な報道を行う日米欧メディアに露骨な圧力をかけるようになった。これは他国の「報道の自由」を侵害する由々しい内政干渉であり、強く自制を求めたい。

 中国は、特にアフリカなどの発展途上国援助に力を入れている。影響力の拡大を図る中で、途上国に監視装置などを供与し、非民主的な政治制度を輸出しないよう警戒しなければならない。

 貿易摩擦、人権弾圧、中国の海洋進出、香港、台湾、コロナなどの問題を巡り、米中対立は激化する一方だ。だが、感情的な言葉の応酬や報復合戦は建設的な結果を生まないことも確かだ。両国は冷静に対話を行う必要がある。日中間の人権対話は12年9月の尖閣諸島国有化後の関係悪化で凍結された。日本は早期に対話を再開し、米欧などと協調しながら、中国に粘り強く民主化を働き掛けたい。

(2020/06/05付)
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