社説

東京五輪とコロナ 簡素化と理念、両立図れ

 国内だけでなく、米国や欧州でも大規模なスポーツ大会が開催されるようになった。来年夏に延期となった東京五輪に関して、国際オリンピック委員会(IOC)は新型コロナウイルスへの対応で何らかの制約は想定しながらも、開催には楽観的になっている。

 IOCのバッハ会長は先頃公開した書簡で「制限下でも大会を安全に組織できることが分かってきた。このことは、五輪を含む今後の大会準備に自信を与えてくれるはずだ」と開催への意欲を表明した。選手や観客らへの感染を防ぐことをまず重視しながら、今後の状況を注視し見極めてほしい。

 日本側の大会組織委員会とIOCは延期に伴う追加費用を抑制するため、52項目に及ぶ対策について合意した。組織委は間を置かず、聖火リレーをほぼ当初計画通りに実施することを確認し、日程を発表した。

 聖火は来年3月25日に福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)をスタートし、121日間で全国47都道府県の859市区町村を巡る。本県を走るのは6月6、7の両日だ。全国を回った後、7月23日の開会式で東京・国立競技場の聖火台にともされる。

 既に決まっていた約1万人のランナーは優先的に走ることができる。このうち高畠町の伊沢まき子さんは「(新型コロナへの)不安は残るが、まずはほっとした」と話す。56年前の東京五輪に陸上で出場した元選手で、来年に向けて「健康管理に気を付け、本番が近づいたら練習も始める。いろいろな人への感謝の気持ちを込めて走りたい」と意欲を見せる。

 経費の圧縮について組織委は「聖域を設けない」として、洗いざらい削れるものを探し出す作業を続けた。それらの中には、IOCが首を縦に振らなかったものもある。さすがに早々と消滅したが、五輪とパラリンピックの開会式を一緒にやってしまおうという大胆な構想はその一つだ。これはIOCも国際パラリンピック委員会も、それぞれ独自の式典を尊重してほしいと断った。

 五輪の開会式入場行進の思い切った短縮案も実現しなかった。選手団数は206もあり、組織委は所要時間があまりにも長いと考えたようだ。とはいえ冷徹なコストカット意識だけでなく、五輪という最高の舞台にやって来る参加国と選手たちに対する思いやりが必要な部分もあるだろう。

 組織委は聖火リレーのルートと期間を短縮することも検討した。これも各地の自治体が当初計画の骨格を維持することを強く要望し、元のさやに収まった。

 橋本聖子五輪相は、IOCと組織委が詰めた52項目に関して「追加予算をいかに抑えるか。まだまだこれでは足りない部分がある」と発言。聖火リレーを例に挙げ「確実に火はつないで、前後の催し物は自粛していただく。少しずつ経費の削減をしていく」と語っている。

 必要以上に華美な大会にすることはない。一方で、来年の東京五輪では東日本大震災からの復興という理念に加え、世界がコロナを乗り越えた象徴としての意味が重視されつつある。それらとの両立も忘れないでほしい。

(2020/09/30付)
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