人工知能(AI)の安全性を高め、悪用を防ぐための規制を具体化する動きが加速してきた。米政府はAIシステムの開発段階から政府機関の安全確認を義務付ける大統領令を打ち出した。
技術で先行する米国が法的拘束力のある規制の導入に踏み切ったのは、AIのルールづくりでも主導権を握るためだ。AIの新たな秩序は、利用と規制の両面で形成されつつあり、米国や欧州は急ピッチで動いている。
開発に出遅れた日本は、行政や企業での利用拡大に軸足を置いている。だが、規制に及び腰のままでは、競争の舞台に立つことすら難しくなりかねない。
膨大なデジタル情報を学習し、新たな文章や画像を生み出す生成AIの登場は、有害情報の流布、著作権侵害、創作活動を伴う雇用の喪失などの不安を引き起こした。欧州連合(EU)はいち早くルール案を示し法制化を急いでいる。
米政府はまず、AI開発で優位に立つ企業と安全確保のための自主規制に合意し、それを基に大統領令をまとめた。新たなAIシステムを発売する前に、米政府の研究所の基準で安全性を評価する。サイバー攻撃に対する防御や差別表現を除外する仕組みも求めた。
日米欧が集う先進7カ国(G7)は10月末、AI開発の行動規範に合意した。ハイテク企業に対し、社内だけでなく、外部の専門家らによる安全性の検証を迫り、生成AIで作ったコンテンツを見分ける「電子透かし」の導入も求めた。
開発の先頭を走ってきた米ベンチャー企業、オープンAIの創業経営者が一時解任される騒動があった。どこまでも進化するAIが、社会の秩序と安全を脅かしかねないという懸念が、開発の最前線で深刻になっていることを見逃してはならない。
一方、利用段階でのルール策定もまだ道半ばだ。市場に出回るAIシステムで有害情報を作って流布したり、外国の選挙や世論を操ったりする試みは後を絶たない。
新興ハイテク企業への支援や生成AIのサービス提供を通じ、開発と利用の両方を主導しているのは、グーグルやアマゾン・コムなどの「プラットフォーマー」だ。検索エンジン、交流サイト(SNS)などを運営し、生成AIの開発に欠かせないビッグデータを占有している。こうした巨大企業にルール順守を徹底させることこそ、AIが引き起こす不正や権利侵害を防ぐ鍵になる。
日本政府は日本語情報を主体とする「国産AI」を後押しするが、G7合意を反映した規制の方向性を早く明示する必要がある。デジタル社会に国境はない。利用に偏った姿勢を続け規制逃れの拠点になってしまえば、国際的な信頼を失う。
例えば、生成AIの学習に著作物を許諾なしに使うのを認めた著作権法は、権利保護に不安がある。日本新聞協会は記事などの無秩序な使用が進めば報道機関の経営に打撃を与え、国民の「知る権利」を阻害しかねないと主張した。法令の問題点を洗い出し、柔軟に修正する姿勢で臨まない限り、日々変化するデジタル社会の安全は守れないだろう。
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