2021年11月30日(火)
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「世界が尊敬する日本人100」にも選出 ロボットヒーローの“作り手”に憧れ、30年作り続けた紙製ロボットへの情熱

安居智博さんのカミロボ作品
 子どもの頃から作り続けてきた自作の紙製ロボットが世界に認められ、「世界が尊敬する日本人100」に選出された経験を持つ安居智博。彼のロボットは「カミロボ」と呼ばれ、高校の教科書への掲載や、書籍の出版、日本だけでなく海外での展覧会開催など、多くの人を魅了している。子どもの頃の一人遊びである「カミロボ」を30年以上制作し続けてきた理由や、多くの人が幼少期に置いてきてしまった“ものづくり”への想いを聞いた。

【写真】独創的でユニークな機体を持つ「カミロボ」ほか、プロレスマスクや三角コーンの着ぐるみなど安居さんの作品集

■「ミクロマン」や「ロボダッチ」に影響 ヒーローに“なりたい”ではなく“作り手”に憧れた少年時代

――いつ頃から「カミロボ」を作るようになったのでしょうか。

紙や針金を使って創作人形を作り始めたのは小学2年生の頃からです。作り始めたきっかけのようなものは特になく、ごく自然な流れの中で、気がついたら作るようになっていたように思います。

――安居さんの子ども時代には、『機動戦士ガンダム』をはじめとしたロボットブームがありました。

タカラの「ミクロマン」やイマイの「ロボダッチ」の世界観からは大きな刺激を受けました。
プラモ狂四郎やプラレス3四郎の存在も大きかったですね。特撮ヒーローやロボットアニメは何でも好きでしたが、幼い頃からヒーローそのものに「なりたい」と考えることはなく、“作り手側”に憧れる気持ちが強かったです。

――子どもの頃は、創作したカミロボを使ってどんな遊びをしていたのでしょうか。

最初はガンダム的な、ロボット戦争の世界観で遊んでいました。5年生になる頃、カミロボをプロレスラーに見立ててプロレスをさせてみたら、技を受けた時に紙がギュッと歪んで衝撃を吸収する感じや、関節技がギチギチと音を立てて極まる感じにものすごくリアリティを感じました。これは紙で作ったロボットでしか味わえない感覚だ!と一人で興奮したのを覚えています。

――初めて自分の作品が他の人に認められたなと感じた時はいつでしょうか。

子どもの頃、親戚のおばちゃんたちは腐したり冷やかしたりすることなくいつも褒めてくれました。今思うとそれはありがたかったと思います。親は、僕がマンガやロボットに興味を持ちすぎることを不安に思っていたような印象でしたが、よく分からないものに対してある程度の理解をしてやろうとは思ってくれていたような感じでした。僕に無断でカミロボを捨てたりしなかったのも今思うとファインプレーですね(笑)。

――大人になっても作り続けていた「カミロボ」ですが、世に公開しようとは思っていなかったそうですね。

はい。「カミロボ」は自分のためだけに作る「立体の落書き」のようなものだったので、人に見せるものではないと思っていました。他者からの批評や批判にさらされない自分だけの世界を持つことで、心のバランスを保っていたのだろうな、と思います。ただ、全く人に見せなかったわけでもなく、感覚を理解してくれそうな人には見せる、というスタンスでした。

――そこから世間に発表することになったのはなぜでしょうか。

仕事で出会ったクリエイティブディレクターの青木克憲さんに発表を勧めていただいたのがきっかけになりました。当時はまだまだ多様な価値観を許容されにくい時代だったので「一人遊びを発表する」という事に関しては大きな決心が必要でした。

なので、最初は「こんな恥ずかしいもの発表できない」という気持ちでしたが、徐々に「うすうす感づいてはいたけれどやっぱりそうだったのか…」という諦観のような感情と、「じゃぁ思い切ってそこに飛び込んでみようか!」と思う好奇心が湧き上がってくるような、そんな感じでした。自分が作ったものを“作品”として発表できるならば、本当はもっとスタイリッシュでお洒落な作品が良かったけれど、自分の場合はこの一人遊びの紙のロボットだったんだな…よし、分かった、という感じでした。

――最近は紙だけでなく、SNSで話題になったアヒルの作品など、今までにないような作品を創作されています。

それは新型コロナの影響が大きかったですね。最初に感染が拡大して世の中の空気が重くなった時に、シンプルに「人に楽しんでもらえるものを作りたい」と思うようになり、アヒルの作品が誕生しました。もともと小学生の時から、自分だけのためにカミロボを作る一方で、クラスの友達を主人公にしたギャグマンガを描いてみんなを笑わせるような面もあったので、コロナ禍ではそちら側の自分が自然に発動したような感じでした。

――カミロボなどのロボットだけでなく、プロレスマスクも制作しているそうですが、安居さんの創作物には何か共通点のようなものはあるのでしょうか。

プロレスマスクとカミロボには共通点を感じています。プロレスマスクは袋状に縫い合わせた立体的な顔の上に、平面の「切り絵」状態の革を縫い付ける事で成立しています。
カミロボは円柱や角柱で表現した最低限の立体的要素の表面に「絵」を描く事で成立しています。プロレスマスクとカミロボは、使う素材や作業の工程は違っていても、「平面表現が混在している立体」という意味では同じジャンルの造形物だと思っています。

■アイデアは「過去の自分の中に」 バカバカしい記憶から形作られる新しい作品たち

――大人になってからも、好きなものを作り続けられていることに対して、どう思われていますでしょうか。

改めて考えると、ここまでは、創作活動ができなくなるような場面がなくて幸せだったのだと思います。周りの理解とか、健康とかも含めて。

――安居さんのカミロボが話題となり、多くの反響があった中で、特に印象に残っているコメントや誰かの言葉はありますでしょうか。

展覧会やワークショップを開催すると、自作のカミロボを持って僕に会いに来てくれる子どもが必ず一人はいるのですが、そういう子どもたちの印象は強いですね。工作の楽しさを逆に教えてもらえるような感じで、いつも力をもらっています。カミロボを発表し始めて15年くらい経ちますが、どの年代にもどの地域にもそういう子どもがいました。アメリカやメキシコでの展覧会の時にも出会いましたし、先月の滋賀県での展覧会でも竹串を使った関節可動の技法を考え出した少年に遭遇したばかりです。最初の頃の展覧会によく来てくれた小学生が二十代の青年に成長してから再び会場に来てくれたこともありましたし、そういうのは感慨深いですね。

――最近では三角コーンを使った「パイロンマン」という作品も制作されてますが、今後作ってみたい作品や今後の活動の展望は?

具体的な展望はありませんが、新しい作品のアイデアは過去の自分の中に答えがあると思っています。例えばパイロンマンの場合は「子どもの頃にパイロンを頭にかぶって遊んだ」という記憶をアイデアの土台にしています。そういう些細なバカバカしい記憶でも、ちゃんと「自分の中にあるもの」を土台にしないと作品が嘘っぽくなるので、何を作るとしてもそこは大事にしたいと思っています。

――安居さんが思う「モノづくり」の魅力とは何でしょうか。

「驚き」や「発見」だと思います。今まで使った事がない配色のデザインが決まった!とか、見慣れた質感のものをつなぎ合わせたら見たこともない質感のものが出来上がった!とか、試行錯誤と逡巡の中で新たな発見や驚きに出会えた時は嬉しくなります。これは子どもの頃から変わらないのだと思いますね。
公開:2021-10-20 15:30
更新:2021-10-20 16:12
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