『みをつくし料理帖』角川春樹シェフによる女料理人の奮闘記 

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(C) 2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

 1970〜80年代を席巻した“角川映画”の立役者・角川春樹が、10年ぶりにメガフォンを取った。原作は高田郁の時代小説シリーズで、「食は人の天なり」という徒然草の言葉を胸に、料理を通して江戸の人々を幸せにしていく女料理人の奮闘記だ。『天と地と』で合戦シーンを赤と黒に色分けしてみせた監督らしく、視覚に訴える表現が際立つ。例えば、幼なじみとの絆をキツネの手マネで示したり、かんざしを象徴的に活用したり…。そもそも料理自体が視覚も刺激する題材。映像化に向いた原作なのだ。

 とはいえ、それらは演出以前に脚本に書かれていることだろう。この映画を支えているのは、脚本の完成度の高さだ。料理もののツボを押さえ、開発の苦労や料理対決で盛り上げておいて、“食”がつなぐ人と人の絆で感動へと着地させる。随所に差し挟まれるコミカルな要素との緩急も絶妙で、生き別れた幼なじみとのエピソードなどは涙なくしては見られない。二兎を追えないラストにも好感が持てる。

 もちろん、コメディーリリーフの役割を担う藤井隆の貢献や、角川映画のスターたちの同窓会のような勢ぞろいなど、監督の人望で集まった俳優陣の豪華アンサンブルも大きな見どころだ。つまり、原作を選んで、それに合ったスタッフ&キャストに力を発揮させる手腕は唯一無二。その反面、演出に関しては古臭く、ディテールの繊細さも現場で生まれる即興の魅力も感じられない。本作は、監督の映画というよりプロデューサーの映画なのだ。希代のプロデューサー・角川春樹の最後の大仕事を、ぜひ味わって。★★★☆☆(外山真也)

製作・監督:角川春樹

出演:松本穂香、奈緒、中村獅童

10月16日(金)から全国公開

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