米沢市出身の民法学者、我妻栄(1897~1973年)の没後50年の節目を機に、市と米沢有為会は29日から、記念事業の一環で特別展を開催する。少年時代の我妻が友に宛てた貴重な手紙が初展示される。実物が28日、報道陣に公開された。
手紙は「本田吉馬(きちま)宛我妻栄書簡」。縦18センチ、横235センチの巻紙に書き、7センチ幅に折り畳まれている。米沢中(現米沢興譲館高)を卒業後、上京を目前に控えた18歳の我妻が、同級生で米沢市議会議長も務めた本田吉馬に宛てたものだという。米沢上杉文化振興財団上杉文化研究室の角屋(すみや)由美子室長が修復や現代語訳を担当した。
「数百里の遠方に異なる境遇の下にあっても心と心とは通じ合い(中略)これを心友と呼ぶのではないでしょうか」「共に奮闘努力し郷里のため母校のため、いつの日かの成功を期すべきではないでしょうか」。近県への徒歩旅行など、青春時代を共に過ごした親友への思いがつづられる。
相模原市に住む息子の貞夫氏が所持しており、没後50年の節目で記念館に寄贈した。記念館の所蔵品に10代で書いた手紙はなく、伊藤和夫実行委員長は「若い時の生き方を知る資料は貴重」と説明した。
特別展は市立米沢図書館を第1会場、米沢市中央3丁目の我妻栄記念館を第2会場に、29日~10月25日、同27日~11月22日の日程で開催。書簡のレプリカを記念館に展示する。
我妻は、現在の民法学の基礎を築き「民法学の父」と呼ばれる。米沢中を経て東京帝国大法科大学で学び、同大の法学部教授と法学部長を歴任し、文化勲章も受章した。
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